地球ではない場所
ブックマークが増えているのを見ると小躍りして喜びます。
ありがとうございます!
犬の背に乗せられて、咄嗟に体を起こすと想像以上に地面が遠くて驚いた。
「ひー」
高さにビビって身体をもふもふした毛の中に埋める。
「高い!怖い!ホント無理!!」
犬の毛を握りしめながら叫ぶ。
私の言葉がわかるとは思えなかったが、犬はそろそろと前に進むと自分が水を飲んだお弁当箱の前でそっと蹲った。
降りろということだと察して急いで背中から飛び降りる。
あ、ケガ。
飛び降りる時に傷口を足で踏みつけたかもしれないと気づいて、背中に目をやると
犬は伏せをしたまま私を見、グウと声を出した。
あちこちに血の跡がべったりとつき、切り傷や抉れた傷でふらふらだったはずの犬の体に傷はない。
「あれ?ケガは?」
困惑したように犬を見る。
犬は、もういいだろうというように立ち上がるとお弁当箱を私の方へぐいぐいと押しやった。
「え?何?」
グウゥ
何かを訴えるように箱を私に押し付けるその姿は焦っているようにも見え。
「お水が欲しいの?」
と箱を拾い上げると、ガウ!と吠えて私を湖の方へ押しやる。
自分が飲みたいなら、直接湖で飲めばいい。
なのに箱が必要ってことは
「仲間がいるの?」
グウゥ
「その子もケガをしてるの?」
グウ
ケガをしている仲間に水を届けたくて焦ってたんだ…。
でも。
「この器じゃ運んでるうちにこぼれてしまうわ。すぐに容器を持ってくるから待ってて。」
私は慌てて空のペットボトルを取って来ると、水で中を満たしお弁当箱と一緒に持った。
犬は心得たようにもう一度身をかがめて私がモタモタと背に乗るまで待つと、ガウと一鳴きして立ち上がり森の方へ走り出した。
舗装された道を車で走るのとは訳が違う。
不安定な犬の背中に座り、木を避け、岩を登り、小川を飛び越える。
「やっぱり怖い怖い怖い〜っ」
景色がすごい勢いで流れて行く。
流れるほど早いってどうなの!?
箱を片手で胸に抱え込み。もう片方の手は力一杯、毛を握りしめる。
体を起こしてはいられずに犬の背中にしがみついて両足でがっちりその体躯を挟み込んだ。
後で聞かされたのだが、私の体は風魔法でちゃんと保護されていたらしい……
途中、犬と同レベルの大きさのアナコンダが襲ってきた時には
(あ、私死んだ)
と思ったが、犬の頭上からいきなり巨大な火の玉が現れて一瞬で蛇の丸焼きが出来上がった。
ちなみに犬は止まりもしなかった。
「はぁぁ〜!? 何? 今の!
どこから火の玉出たの!?」
グゥグゥ
犬が呻く。
うるさいと言われた気がした。
そこからは多種多様な生き物に襲われた。
明らかにエサであろう私を目がけて。
その度に悲鳴をあげる私にため息をつきながら犬は次々と相手を倒していく。
牙で。爪で。
そして、どこからか現れる火で、雷で、岩で。
その頃になると、私も理解していた。
ここは地球ではあり得ない。
犬が使っているアレは魔法だ。
襲いかかって来るのは魔物とかモンスターとか言われているモノだ。
犬が近づく前に逃げ出していくウサギの頭には角が生えている。
ゾウの2倍近くの体を持った猪。
頭が2つあるトカゲ。
手が4本あるサル。
どれも私よりかなり大きかった。
ここは私が生きていける場所じゃない。
たとえ一晩とはいえ、無事に過ごせたのは奇跡だったのかもしれない。
犬が、光で私の体を包んだ。
グオオオオーーーッ
凄まじい声。
怒りに満ちた咆哮。
ビリビリと体に響き渡る彼の殺意が1点に向かう。
見る余裕はない。
ただ、顔を伏せてしがみついた。
犬は、
そんな私を邪魔、とばかりに振り払うと殺意はそのままに相手に飛びかかっていく。
「ぎゃーっ」
放り出された私は地面との衝突を覚悟して目を閉じたが、ポスンと柔らかい何かに受け止められた。
涙目を開いた向こうにぴくりとも動かない大きな大きな犬。
そして私を受け止めたのであろう小さな(とはいえ頭の位置が私くらいの)犬。
じっとこちらを見る子犬?には目立つ傷はないように見える。
ふんふんと匂いを嗅いでくる犬の鋭く大きな牙が顔の真横にある。
「み、水をお持ちしました。」
普通、敬語になるよね。
補足。お弁当箱はタッパーとかではなく、駅で売ってるような使い捨てを想像して書いてます。




