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迷いモノとこれから

いつも、いいね!をくださる皆様、ありがとうございます。

小説を書く励みになっております。


ストックが尽きました。

不定期になりますが最後まで頑張ります。

「その、ニシノさんという方は?」


「370年前に隣国イントルオ王国の東端の村に現れて、王国に保護された人だよ。数年後にイントルオの第二王女と結婚したけどうまくいかなくて、ある日忽然と姿を消してそれっきり。

ただ、リュータ様が行方不明になってからもあちこちの国や街で面白い料理が流行ったりしてたから、旅をしながら世界を周ってたんじゃないかって言われてる」



「料理?」


「リュータ様は異世界の食べ物を好きに取り寄せることができたんだよ。それが彼の能力で、彼の残した調理法は今でも色々残ってるよ」


「あっちの料理がこの世界にあるんですか!?」

食べたい!切実に!!


「リュータ様は食べ物なら種でも取り出せたようでね。それをこちらで育てて収穫した物から作れる料理や彼自身がある程度作り方を知ってた料理は残ってるんだけど、彼が亡くなった後には廃れてしまった物も少なくないかなぁ。名前だけ伝わってる料理とかね。」



「もう少し北の方にある小さな国では、ある頃からコメという穀物とその料理法が流行ったそうで。その出所を疑ったイントルオ国の特使がその国に向かった時にはリュータ様はいなくなってたってこともあったらしいし。」


「当時のイントルオ国は愚王が治めてたんだ。国にとっては重要人物であるはずの宰相ですら気に入らなければ辞任させられて何人も入れ替わってたから、まともで有能な官僚や将軍がいなくて残ったのは王に取り入るのが上手いだけの無能ばっかりだったんだって。だから、リュータ様が育てたいって頼んだ食材も見た目が貧相で美味しそうには見えないからって笑って相手にされなかったんだけど、ありがたい事に我がアリェジクラス国に伝わってるんだよねぇ。ダイズって言うんだけど。」


大豆!



「ダイズが国内から国外へ広まって、モヤシとかショーユ、ミソ、エダマメが定着した頃になって愚王がうちに難癖をつけてきたんだ。《誘拐したリュータ様を返せ。ダイズはリュータ様が我が国に(もたら)した恵みだ、泥棒国め!》って」



「はぁー……。わかりやすい悪役ですねぇ。」


「でもまぁ、上から下まで無能しかいない国だからねぇ。戦争ふっかけたはいいけど、補給部隊が物資を着服しちゃうから食べ物も武器もまともに届かないし、軍師は素人だし将軍は次々と死ぬし逃亡するしで戦線が維持できなくてあっという間に降伏してきて終わり。」


ニシノさん。なんてまぁ、気の毒な国に出てきちゃったものだ。そりゃ逃げて正解。王女様との結婚もニシノさんの気持ちは無視だったのかもなぁ。


「こちらの意思を確かめずに異世界に放り込むんなら現れる場所くらいまともなところにしてほしいですよね。」


思わずぽそりとつぶやくと、みんなの目がこっちを見た。

「……カズハは………」


「死の森でしたよ。……私が生きていられたのは本当にものすごく運が良かっただけです。何度か死んだと思いましたし。」


「嘘だろ!?」

「死の森!」


「カズハ…まさかとは思うがオレたちが出会った時って」

「はい。森から街を目指して出てきた時です。」


マットさんの問いかけに答えると、トライゼルさんが呻く。

「ありえない……よくもまぁ無事で。」


そんな2人に首を傾げるようにガードナーさんとフロスさんも続けた。

「いや、でもあれだけ魔法が使えるなら……」


「確かリュータ様は使えなかったはずだよ。カズハは最初から魔法が使えたの?」


首を横に振る。

みんなは複雑そうに、でもホッとしたように無事で良かったと(ねぎら)ってくれた。


私が隠してることがあるのはわかってるんだろうなぁ。

まだたった1日一緒にいただけなのに私がどういう存在か気づいた人たちだから。

出会う前はどこかでしばらく生活していたと考えているはず。


彼らの言う見慣れない服装は1年着続けたせいでボロボロだし。髪も裁縫キットで切ってたからガタガタだし。そもそもこの世界に現れて森から出てきたばかりの私が何故自分の立ち位置を知ってたのか。

聞きたいことはたくさんあるだろうのに。


それを聞かないでいてくれる人たちだから、心を許してしまいそうになるんだ。


「あの。じゃあメリンダさんはニシノさんの子孫ってことですか?」


「違うわ。その戦争の時に賠償としてイントルオ王国からアリェジクラス国に割譲された土地があってね。イントルオでは平民に家名がなかったんだけど、アリェジクラス国民になるなら考えろって言われた人たちの多くが食べ物に困らないリュータ様にあやかってニシノを家名にしちゃったのよね。だから、元イントルオ王国民はニシノが多いのよ。」


へえ。じゃあ本物のニシノさんの子孫がいてもわからないかなぁ。


「いつか会えるといいね。」


うん、フロスさん、私の心読むのやめようか。


「顔に出すのをやめたらね。」


……案外腹黒なのかな?


「まぁ、リュータ様の話はここまでで。

これからの話をしよう。」


トライゼルさんが目配せすると、フロスさんが立ち上がって女将さんを呼んできた。

素早くテーブルが片付けられ、湯気の上がっているティーカップが置かれていく。


女将さんが再び奥へと戻っていくと、

トライゼルさんがこちらを見る。


「カズハ、何か私たちに手伝えることはある?」


ある!

「この世界の常識を学びたいです。将来的に1人でも暮らしていけるように。」


「常識?わかった。物価や周辺国の情報を含め生きていくのに必要な知識を学ぶための教師を派遣しよう。」


「それから、仕事に就きたいです。まだ何が出来るかわからないけどお世話になるだけじゃ落ち着かないので。」


「それも考えておこう。けど、すぐには無理だよ。せめてこの世界に馴染(なじ)めるだけの知識が身についてからでないと危険だからね。」


「ありがとうございます。よろしくお願いします!!」


とりあえずは勉強を頑張る。

そこから始めよう。




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