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1人の夜。1人の朝。

いつも、いいね!をくださる皆様、ありがとうございます。

小説を書く励みになっております。


これからもよろしくお願いします。

フロスさんとメリンダさんの案内で着いた宿は夫婦が経営してて、2人とも元冒険者だから何かあっても頼りになるよって言われた。夕食だけ付いてて朝食は別料金。当たり前なんだけど私の前に並べられた夕食は1人分だけで。 

「すぐに戻らなきゃいけないから1人にしてごめんね」

って言われて、頷いたけど心細さが顔に出てたのかメリンダさんに抱きしめられた。

ここ1年はカラ様たちと食べてたからひとりぼっちの食事は久しぶりだ。しかも周りは大声で騒ぎながらお酒を飲んでる人たちもいて怖い。


フロスさんが女将さんとヒソヒソやったら、部屋でご飯を食べていいってことになってホッとした。お盆に乗せられたご飯を持って私を部屋まで送ったメリンダさんたちは「また明日の朝に来るね」と帰って行った。



‥1年ぶりのまともなご飯だ。森にいた頃の味つけはひたすら岩塩だったもんなぁ。天狼たちは一緒に生活する間に野草や薬草、果実、キノコ、肉、魚と、森で取れる物の見分け方を教えてくれた。野草の中にはハーブっぽい味のものもあったから魚に添えたり肉に揉み込んでみたり果実を潰して甘味料代わりにしたりしたけど、日本の食文化がいかにありがたいものだったのか骨の髄から実感した1年だった。


収穫する食材については数回注意したら猛毒じゃない限りは放置されて、お腹を下したり嘔吐したりしたけど、それを見ていたロー様が鑑定のスキルはないのか?と聞いてきた。目に魔力をこめて物を見るだけだと言われて、

「魔法もまともに使えないのに、そんなこと出来るかぁ!」

と逆ギレして、そういえばそれからだ。カラ様たちの超絶恐ろしいスパルタ魔法教育が始まったのは。


……いや、理解はできるんだ私も。

みんなに甘えてばかりじゃ成長出来ないし、いずれ私はカラ様たちの元を離れて1人で生きていかなきゃならない。カラ様はそれがわかっていたから、厳しく教え込んだのだろう。

でも。…………絶対に面白がってた。なんかあるたび、犬のくせに腹を抱えて笑ってたし。



……カラ様が大好きなナチュカの実。せめて3回はものすごく酸っぱいのに当たりますようにと呪っておこう。



カラ様たちのことを思い出しながら食べ終わると、食器を食堂に届けてベッドに寝転んだらすぐに寝てしまったらしい。


ドアをノックする音で目が覚めたら朝で自分がどこにいるのかすぐにはわからなかった。

いつも横にあった温かいもふもふがいないことを思い出して寂しくなりながら、返事をしてサッと髪を撫でてからドアを開ける。


「おー、嬢ちゃんおはよう。一緒に飯を食おうぜ。」


「おはようカズハ。これ、あなたの服よ。そのままじゃ目立つからこれに着替えてくれる?」


マットさんに挨拶を返してメリンダさんから服を受け取る。

「ありがとう。あの…この服は……」

「大丈夫よ。うちの娘のお下がりだから気にしないでね。」

お下がりと言われたのでありがたく受け取ることにした。


マットさんが先に行く、と階段を降りていき、私が着替えている間は背中を向けてくれていたメリンダさんと少し話した。


メリンダさんの旦那さんはこの街では有名な商店で働いていて、13歳の娘と11歳の息子、2人の子供がいるそうだ。


13歳の子のお下がり……。


一瞬目から光が消えかけたが、この世界の人の体格を考えて納得する。


メリンダさんは私には何も聞こうとしなかったけど

ただ、年齢を尋ねてもいいか?と、そっとこちらを見た。


あの森に飛ばされた時、私は17歳だった。

そこからこの世界での1年を過ごしたのだ。

正確に何日か数える術はなかったけど、地球と同じように4つの季節を一巡りしたから18歳だと思っている。


そう伝えると、メリンダさんは目と口がパカっと開いたまま動かなくなった。


うん、だよねぇ。娘のお下がり渡したら娘よか5歳も年上でしたってないわぁ。

思わず苦笑して、

「私の国では、この身長も顔の作りも普通ですからね。」

と冗談めかして言う。


「あ、……そうなのね?そっか、18歳………。

あの。私、てっきりまだ成人してない子供だと思ってたから、ちょっと、頭撫でたり抱きしめたりしちゃって……。ごめんなさい」


「いえ、嬉しかったです。本当に。……お姉ちゃんがよく同じようにしてくれたので」

そっと目を伏せて(ほの)かに笑う私に感じるものがあったのか、彼女はことさら明るい声を上げた。


「じゃあこれからも抱きしめる」


思わず2人で笑い出し、そのまま階下へ降りた。


食堂のテーブルにはマットさんと知らない男の人。

思わず足が止まった。


「大丈夫よ、カズハ。私たちがあなたを守るわ。絶対に誰にも傷つけさせないから信じてほしいの。………彼はそのために必要な人。あなたの敵じゃないわ。」


メリンダさんが私の手を握ってきた。

そっと彼女の方を見ると、真剣な表情でこちらを見ている。


もう一度、青年の方を向いた。

青年は椅子から立ち上がってゆっくりと歩いてくると、


「初めまして。カズハ。僕はこの街の領主代理をしているトライゼル・ルードという。そこにいる愚兄が命を救ってもらったんだってね。ありがとう。心から感謝する。」


と、頭に手を伸ばしかけ


「トライゼル様。カズハは18歳です。」


メリンダの指摘にピタっと手が止まった。





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