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マット目線 その5

いつも、いいね!をくださる皆様、ありがとうございます。

読んで下さる方にも感謝を!

ギルドにレイがいた。

トライゼルからどうしても断れない依頼を押し付けられてしばらく街を出ていたはずだ。

完遂したのか。


そのレイが嬢ちゃんの腕を掴んでるのを見て、メリンダとフロスが慌てて駆けて行く。


昔のレイなら、色恋のわからない幼児でない限り女の子に声はかけなかっただろう。例え子供でも女は女。レイへの執着は分別がないだけ子供の方が酷かった。


レイが仮面をつけて冒険者になった時、彼は(みずか)

「仮面の下には女が泣くほど醜い顔が隠れている」

と噂を流した。

そのことをオレとトライゼルが本気で怒ると、(母は泣いた)

「本当のことだ。おかげで周囲が静かになったぞ。あの鬱陶(うっとお)しい視線も、ねっとりと媚びるような声で話しかけてくる勘違い女もいない世界ってのはこんなにも心地よいものなんだな」

とうっそり笑っていたのだ。


あの頃に比べたらレイも随分変わったとは思うが、正直、嬢ちゃんくらいの歳の女に声をかけるとは思わなかった。


いや、そんな話をしている場合じゃない。


Sランクのレイが今日街に帰って来てくれたのは本当に幸運だった。


「レイ!帰ってたのか!無事で何よりだな!

ちょうどいい!話があるんだ」


カズハがレイを怖がらないように、わざと明るく声をかける。

レイは口を開こうとしたが、オレの目が真剣なのに気づくと、

何かあったと察してくれたらしい。ガードナーと共にギルド長の部屋へと入って行く。


カズハはフロスとメリンダが宿屋『妖精の止まり木』まで送って行くことになった。少し高いがあそこの女将は元冒険者で、頼りになる。1番安全だろう。


「お前たちも森がおかしいという報告か?」


ギルド長が部屋に入るなり聞いてきた。


「森がおかしい?」


反応したのはレイ。


「ああ。外縁部付近に深部の魔物が出た。オレたちが遭遇したのはジャイアントキングベアだ」


「「はぁ!?」」


なんでギルド長まで驚くんだよ…


「その原因はわかってるのか?」


「確信がない。確認しようもないから報告はできない」


ギルド長がため息をついた。

「つまりは話せないということか。領主様案件なんだな…。これから報告に行くのか?」

「そのつもりだ」

「話せる範囲でいいから、報告できることがあったら頼む」


それには頷くだけにとどめ、外でフロスとメリンダと合流すると、5人で領主館へ赴く。


父とトライゼルはオレたちが揃って現れたのを見て、森関連だと気づいたのだろう。雷光メンバーの家族に遅くなる旨を早馬で伝えに行かせてくれた。


防音の魔術具がある部屋に通される。


「聞こうか」



「……森で少女を拾った…………おそらく迷いモノだ。」


ガードナーとメリンダが立ち上がった。


「「えええええええええーーっ」」

うん、気付いてなかっただろうな、お前たちは。


ルード家の3人もさすがに絶句している。

フロスが頭痛がするというように眉間をぐりぐりしながら


「見たことのない服装。この辺では見かけない外見をしていて、小柄で黒髪黒目。人間ではあり得ない魔法を使う。370年前に現れた迷いモノと同じ特徴だよ。まぁ、前回の迷いモノは魔法は使えない代わりに見たことのない異世界の食べ物を次々出せる能力だったみたいだけど。」


ああ。彼のおかげでこの世界の食べ物は飛躍的に美味くなったんだとか。ありがたい話だ。


「あ!だからカズハにお気に入りの黒ローブ貸してたの?ただ単に目立ちたくないって言ってたからだと思ってた!」


「いつから気付いてたんだよ。言えよ!」


騒ぐ2人に白けた顔をしてから父を見る。


「今回の森の異変は彼女が関連してると思う。あの子が森に現れたその日に魔物が騒いだんだ。無関係ではないだろう。だとしたら、彼女が森を出たことで魔物も落ち着くはず。これは確証がないからこれから調査の必要があるけどな。……それと。おそらく彼女は自分が迷いモノだと知ってる。自分の存在が知られると危険だということも気付いてるように感じた。【目立ちたくない、知られたくない】が彼女の要求だ。」


父が膝の上に両肘を立てて額の上で両手を組んだ。


「他の国からやってきた可能性もあり、か。トライゼル…」

「はい。」


「迷いモノが発見された場合の対処を知っているか?」

「はい。国への報告義務ですね。」


「だが例外がある…」

レイが問うような目でオレを見る。


「ああ。迷いモノの意思が最優先だ。」


「そうなの?」

この中では唯一の平民出身であるメリンダは貴族なら習うであろうことに首を傾げた。


「あー。昔は迷いモノに人権はなくて国に管理されるのが通常だったんだよ。とはいえかなり大事にされてたみたいだけどな。ところが、どこかの国が隷属の首輪までつけて反抗できないようにしてからあちこちに戦争を仕掛けたらしくてな。

その迷いモノは争いなんかしたことのない平和な暮らしをしてたんだろうな。何十人、何百人と人殺しをさせられて狂っちまった。


王城で戦勝を祝うパーティの最中に隷属の首輪を()じ切って、首輪がそいつを殺すまでのほんの瞬き1回分の間に自分ごと爆発させたんだ。………王城から貴族街は壊滅。王城にいた王族も貴族も騎士団の上層部も軒並み死んで、国がなくなった。」


「その事があって、別の国では迷いモノと王族を婚姻で結びつけようとしたんだよ。うまくいく例もあったけど、婚約者がすでにいたり、普通に相性が悪かったりすると最悪。

婚約者が素直に身を引く人ばかりじゃないからね。後は婚姻相手の王族がバカだったりすると、普通に側室だの愛妾だの作りまくって迷いモノに逃げ出されたり。

さっきの話の、食べ物をもたらしてくれた青年は隣国で王女と結婚したけど、産まれた子が王女の護衛をしてた近衛兵と同じ髪と目の色をしててね。そしたら次の日には青年は王城からいなくなってたってさ。


だからって幽閉したりして迷いモノを本気で怒らせると、受けてた恩恵の反動が来るって言われてるんだ。」


「反動?」


「物作りに特化してたなら、魔術具が一切使えなくなったり。

青年は食べ物の恩恵だったからか、隣国では不作が続いたり。」


オレとフロスとガードナーでメリンダに迷いモノについて話していく。

こいつもすでに他人事ではなくなっているからな。覚悟を決めてもらわないと。

それがわかっているから父たちも口を挟まない。


「つまり、カズハの願いが自分の存在を知られたくないってことなら……。」

メリンダの声に被せるようにして告げる。

「オレたちはカズハの意思を尊重して、カズハの正体がバレないように目立たないように保護する必要があるんだ。


まぁ、あいつはオレの命の恩人だから。迷いモノでなくても守ってやりたいんだがな。

…この場合、陛下への報告義務は?」


「あるだろうが、しばらくは様子見だな。陛下と王妃様はよく出来た方々だから心配はしないが、第二王子と王妃様のご実家がかなりの野心家だ。あのバカ王子と老害の耳に入ったらこの国が滅びかねん。」


ルード家の4人が揃って頷くのを見て、ガードナーたちがなんともいえない顔をする。


その後は、これからどうするかの話し合いに移っていった。



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