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初めての街

いつも、いいね!をくださる皆様、ありがとうございます。

小説を書く励みになっております。

雷光のみんなに付いて門まで行くと、

「ちょっと待ってろ」

とガードナーさんが衛士の人と話をしに行ってしまった。


落ち着かなくてソワっとする。


まだ逃げたいと思う自分もいる。私はこんなにも煮え切らない性格だったのだなと呆れてしまう。



そんな私を慰めるように、大丈夫、と隣や後ろから肩や背中をポンポンと叩かれる。


リュックの肩紐をギュッと握りしめて気を落ち着けていると、さほど待つこともなくガードナーさんが戻ってきた。


「さぁ、行くぞ〜」


軽い口調でニカっと笑いかけられる。



1歩、門から中に向かって踏み込むと、家も道もほぼ石造りで出来ている街並みが広がっていた。でも、地味な印象はない。色とりどりの看板や軒先から垂れ下がる綺麗な布。石造りの無骨さを工夫で華やかさに変えている。

いい街だなと思った。


「ここは死の森に一番近い街だからね。スタンピードが起こっても多少は持ち堪えられるように石で出来た建物が多いんだよ。ちなみにスタンピードっていうのは、なんらかの原因で魔物が群れをなして森から溢れ出てきて暴走することだよ」

とフロスさんが教えてくれる。


今から冒険者ギルドへ行くらしい。

とりあえず私の冒険者登録だけしようということになったからだ。

その後は、宿を紹介してもらって今日は解散し、明日ゆっくり話し合うことになった。


「ここだよ」


と言われて見上げると、3階建でかなり頑丈そうな扉のついた建物の前だった。

看板には剣と盾と杖が描かれていて一目で何の建物かわかるようになっている。


冒険者になる人間はその大半が他の職につけないような孤児や貧乏な農家の三男坊だったりするので、識字率は低いのだとか。


そういえば私はこの世界の文字を知らない。

今更ながらそのことに気づいたけど、それを伝える前にマットさんを先頭に、みんなが中へ入っていってしまった。

置いていかれないように慌ててついて入ると、夕暮れ時のせいか多くの人で賑わっていて、ギルド内が狭く感じる。

しかも全員もれなくデカい。

縦にも横にもデカい……。

たまに私くらいの身長の子もいるけど、明らかに13〜15歳くらいに見えるし、体につけている装備も大人に比べたら頼りない。冒険者登録をしてから間もない子たちなんだろう。


人波を全く気にせず奥に向かって歩いていく4人を追いかけるように歩いていると、目の前に誰かが立ち塞がった。


「ここは子供が来るような場所じゃない」


くぐもったような低い声。でも大きな声で怒鳴りあうように話す冒険者たちの中で彼の落ち着いた声音は私の耳によく響いた。

驚いて見上げると、鼻の下まで覆い隠すような仮面をつけた男性が私を見下ろすように立っている。

190cmはありそうな身長と、引き締まった体。艶やかで長い銀色の髪は後ろで無造作に結ばれている。仮面の奥から覗く目は透き通るような青。


「あ……の………。」

言葉が出ない。


「ここは子供が遊びで来る場所じゃない。家へ帰れ。」


冷たく見据えられているのがわかる。


「おい、レイだ。」

「帰ってきてたのか……。」


彼を見て周りの人が囁いている。


何も言えないままレイと呼ばれている人を見上げていると、(しび)れをきらした彼に腕を掴まれた。


「!!何?…離してください!」


驚いて腕を引こうとするけど彼の力は強くてビクともしない。


「やだ!離して!!メリンダさん!」



「ちょっ!何してるのよ!!」

焦ったような声が聞こえて、私の体がメリンダさんの背中に隠れる。


「この子は私たちの連れよ。レイ」


「カズハ!振り返ったらいないから驚いたよ!」

フロスさんも私を見てホッとしたように近寄ってきた。


「連れ?この子供が?」


レイという人が、不機嫌そうに私を見てからメリンダさんたちを見た。


「おかえり、レイ。いつ帰ってきたんだい?」


「……さっきだ。雷光はいつから子連れで冒険者をするようになった?」


「あー。まぁちょっとね。そのことで話があるんだけど、明日時間はあるかい?」


フロスさんが苦笑いで問いかける。

問われた彼が口を歪ませて何か話そうとしたところで、また声がかかった。


「レイ!帰ってたのか!無事で何よりだな!

ちょうどいい!話があるんだ」


嬉しそうな顔をしたマットさんがレイさんの肩をガシッと抱き込むと、レイさんは口元を引き締めて相手を見返した。が、ニコニコ笑うマットさんに言葉を諦めたようにため息をついて頷く。


「わかった」


流れるようにガードナーさんの方へ向かう2人の後ろ姿を見ながらメリンダさんが私の手を握りしめる。


「ごめんね。気付くのが遅れて。怖かったでしょ?彼、無愛想だし言葉が足りないし。

でも、カズハを心配したのよ。ここはガラが悪いヤツが多いから。特に夕方は酔っ払いも少なくないし魔物を狩って来てるから気が立ってるしね。」


背中にそっと添えられたのはフロスさんの手だ。


「行こうか」


2人に守られるようにして受付まで行き、冒険者登録を終わらせる。

魔法登録だから血を1滴垂らすとのこと。

自分で指を切る勇気はないので、目を閉じて指を差し出した。

マットさんに頭をガシガシと撫でられ、

「嬢ちゃんもまだまだ可愛いな!」

と笑われながらやってもらった。

これで、他人には使えない私だけのギルドカードが出来るのだ。

でも、無くしたらペナルティーと罰金があるので気をつけるよう注意を受ける。


不思議なことに文字は理解出来た。

こちらの世界に来たら魔法が使えるようになったのと同じ原理で世界に順応してるのかな?

わからないけど、助かったので深く考えない。


ガードナーさんが素材を買取口に出したら職員たちがざわついてたけど、それも知らない。


うまく誤魔化してくれるって言ってたし。


雷光のみんなは今からレイさんと飲むみたいだけど、私は疲れたので送ってもらった宿の部屋で休むことにする。

女の子が1人で泊まっても安全なレベルのしっかりした宿は1泊100ゲルンと少し高いらしいけど、今日の素材の売り上げで私の取り分から払っても数ヶ月は大丈夫なんだとか。


どんだけー……


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