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信頼したい人。

話がなかなか進まずすみません。

温かく見守っていただけたら嬉しいです。

全員から名前を教えてもらったので、私も「一葉」だと名乗った。


そのまま彼らと森を歩きだすと、最深部で過ごしていた頃には見たことのない魔物たちが幾度となく襲ってくる。 


これが中層部の魔物?たまに見覚えがあるのは深部の魔物だろうか?



彼らにどこまで魔法を見せていいのか。

…ロー様は見極めろと言った。

すでにマットさんには少し見せてしまっているけど、低級魔法だけだ。

杖とか無詠唱とかよくわからないやらかしはしてしまってるみたいだけど、いざとなったら逃げてしまおう。そう考えて、ただただ彼らについて歩く。



子供に見えるであろう私を後ろに(かば)いながら魔物を倒していくこの人たちは、きっといい人たちなのだと思う。


‥でも、両親だって外ではいい人だった。

私はいつも他人から「自慢の家族ね」と言われて育ってきたのだ。

外面のいい大人はたくさんいることを私は経験で知っている。


利用されるな。

容易(たやす)く信じるな。

世界は、善の皮を(かぶ)ってその醜さを上手(うま)く隠した悪意に満ちているんだから。



その魔物が現れた時だって、私は手を出す気はなかった。

前衛のマットさんが魔物の爪で引っ掻かれても。

ガードナーさんが攻撃を受けきれず吹き飛ばされても。

フロスさんの魔力が切れかけて、立っていられなくなった彼が地面に膝をついても。


…私は魔法を使うのを躊躇(ちゅうちょ)していた。


「………矢がなくなったわ………。カズハ。私たちが時間を稼ぐから、その隙に逃げなさい。あっちに向かって全力で走るのよ!」


メリンダさんが、ナイフを握りしめて魔物に向かっていく。そんな頼りない武器で(かな)う相手じゃない。

わかってるはずなのに。


メリンダさんのナイフが魔物に届く前に、魔物の巨大な腕がメリンダさんを(とら)える。


ああ!もう!!


「ストーンバレット」


口にすると同時に魔物の頭と同じ大きさの岩がその頭部に直撃した。

岩がぶつかった衝撃で腕を空振りした魔物は頭を失ったまましばらくの間立っていたが、ついに膝をついて倒れ、動かなくなった。


みんなの唖然とした視線が私に向いている。

それには構わずに、傷が深い前衛から順に一人一人の前に立って治癒魔法をかけていく。


「「「「はぁぁーーっ???」」」」


また声が(かぶ)った。

ホントに息ぴったりだな。


「あなた、治癒魔法使えるの?すごいじゃない!!」

「おいおい、マジかよ!すげえなぁ嬢ちゃん!」

「無詠唱であの威力のストーンバレットですか!」

「オーガを一撃で倒すとかありえねぇ!」


みんなが騒ぐのをワザと無視して、オーガと呼ばれた魔物を指差す。


「あれ、ほっといていいんですか?」


彼らは揃ってピタっと黙り、私が指差した方を向いた。


「あ!オーガ!!解体しないと!」

「急げ!他の魔物が集まってくる前に終わらせるぞ!」


みんなで急ぐようにわらわらっとオーガに向かっていくのを見送ると、私は知らず小さくため息を吐いて(きびす)を返す。

数歩歩いたところで後ろから声がかかった。


「カズハ、どこへ行くの?」


声をかけてきたメリンダさんは私が何も答えないでいると、解体の手を止めてこちらへ近づいてきた。

そして、じっと私を見つめてからフッと笑って

「……うん。誰も信頼できないね」

と、優しく頭を撫でたのだ。


「…………私たちを信じて、なんて言えない。信頼は強要するものじゃないから。でも、教えてくれる?カズハと信頼関係を築きたいと思ったらどうすればいい?」



私が何も返せずにいると、こちらの話が聞こえていたらしいマットさんもオズオズと近づいてきた。


「嬢ちゃん、俺はさ、2度も嬢ちゃんに助けられてんだ。だから嬢ちゃんには恩がある。

それが信頼につながるわけじゃないことはわかってるが、嬢ちゃんの不利になることは絶対にしないと誓うよ。だから教えてくれないか。

何が不安だ?俺たちにどうして欲しい?」


「……治癒魔法のことは誰にも知られたくない。魔法のことも、目立ちたくない。」


「わかった。誰にも言わない。…お前らもそれでいいな?」


マットさんが後ろを振り向いて残りの2人の顔を見ると2人とも真剣な顔で了承してくれた。


「それはいいとして、倒した魔物の素材はどうする?カズハに希望はあるか?と言うかカズハは冒険者登録はしているのか?」

ガードナーさんの言葉に首を傾げる。


「冒険者登録?」


「そこからか。冒険者ってのはわかるか?」


そう言えばカラ様も以前、冒険者って言葉を口にしてた。

フルフルと首を振ると、解体を終わらせたいからと作業をしながら説明してくれることになった。


冒険者とは、何でも屋のようなものである。

冒険者のための組合があってギルドと呼ばれており、そこに登録すると狩った魔物や採取した薬草、鉱石などを買い取ってくれる。

登録した冒険者にはランクがあり、下から

Fランク 街の中の雑用や周辺での薬草採取

Eランク 街周辺の薬草採取や森の周辺での魔物狩り

Dランク 森の周辺から外縁部の辺りでの魔物狩り

Cランク 森の外縁部から中層部での狩り、もしくは護衛依頼を受けられるのはCから。

Bランク 森の中層部での狩りや、有事の際の強制参加もBからとなるが、それは対魔物であって国同士の(いさか)いには冒険者は不介入である。

Aランク 森の深部での狩り

Sランク 森の最深部での狩り。指名依頼も多いが国や貴族相手でも断れるのはSランクでないと難しい。

となっている。

必ずしもこの通りではないけど、まぁ実力的にはこんな感じだと考えておけば大丈夫なんだそうで。

ランクを上げるには、経験を積みポイントを稼ぐか、功績を上げるしかなく。

それもランクが上がるにつれて難しくなっていくらしい。

過去に、実力はあるけど人間性が最低だったパーティがあちこちで問題を起こしたせいで、冒険者ギルドそのものが信用を落とした事件があってからはCランクからの昇格は厳しくなっているとのこと。


登録料さえ払えば誰でも冒険者になれるが、なったからにはギルドの規定は守らなくてはいけないし違反をしたら罰や違約金、ひどい時はギルド追放とかもあって、そうなるともう2度と登録は出来ない。


地道に誠実に、が一番の近道なんだよ。

とフロスさんの言葉。


説明が終わる頃に、高額買取になるらしい皮とか魔石を取り終わったらしいのでまた歩き出す。

………ちなみに牙も高額買取だったらしい。

次があれば頭ではなく胸の少し下を吹き飛ばして欲しいと言われた。


売った素材の取り分は、全員で話し合って私と雷光で半分ずつになった。

そんなにもらえない、と断ったがダメだった。



狩った魔物のことは上手く誤魔化(ごまか)してくれると言うので、じゃあこの申し訳なさは頑張って魔物を狩ることで返そう。と、出てくる魔物をガンガン倒していったら、途中からみんな無言になった。


森の出口が見える頃に倒した魔物を見ながらフロスさんが、

「魔物の素材を取るだけの簡単なお仕事です……」

と、どこぞのキャッチコピーのようなセリフを呟いていた。

アルカイックスマイルが妙に怖かった。


その魔物を最後にようやく街へたどり着いた。




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