3次元には屈しない
絶賛オタ活中の俺こと佐治涼也この春から地元じゃ有名な進学校に進学する。今日もいつも通りラノベ・漫画を読み漁りアニメを見漁っている。3次元の恋愛なんてめんどくさいだけだ!2次元こそが至高!こんな俺がモテるはずが無い。
「お兄~遅刻するよ~」
「ん〜動きたくない~」
「お兄何言っての、今日から学校でしょ?早く起きて朝ご飯食べちゃって」
「へーい」
はぁ〜、なんで朝がくるんだろう。
にしても流石に3時間睡眠は堪える、目が開かない。なんかしゅばしゅばする。これならオールした方がましだったかも。とりあえず朝ご飯食べて目覚まそ。
「あ!やっと降りてきた。もう遅いよ!朝ご飯冷めちゃったじゃん」
「すんません…」
「とりあえず早く食べちゃって。お皿洗っちゃうから」
「おぉ、ありがとう」
まったくよくできた妹だ。家事もできて勉強もできてさらに美少女。俺には勿体ない。まあ調子のるから言わないけど。
「——ふぅ~ごちそーさまーでしたー」
さて行くか。今日から俺も高校生だ。
なんとか間に合った。思ったよりギリギリだったな。
「よっ!涼也。元気か~?眠そうだな。また深夜アニメか?」
「夏川は朝から元気だな」
コイツは夏川誠司。小学校から同じの幼馴染で俺の数少ない友達。イケメンで人懐っこい。さらにスポーツまで完璧のパーフェクトヒューマン。
「ねぇあの子達かっこよくない?」
「やばいめっちゃタイプ」
「新入生かな?」
なんか女子の方がこっちを見てざわざわしているのが聞こえる。流石夏川だ。
「一緒のクラスになれてよかったな!」
「あぁそうだな。危うく1年間をぼっちで過ごすとこだった」
「お前さぁ〜。もうちょい自信持てよ。お前が本気出せば俺なんかより全然凄いだろ?」
「冗談言うなよ。嫌味か?あいにく俺はそんな凄いやつじゃねぇよ」
「はぁ〜、そうかよ。まぁお前がそれでいいなら俺はいいけどよ」
「あぁ、いいんだよ。3次元は捨ててるから」
そうだ、俺は3次元には興味はない。俺が生きるのは2次元だ!
「はぁ〜勿体ねぇ」
「フッ。なんとでも言うがいいさ」
そんな会話をしているとチャイムがなってHRが始まった。
「え〜、今日のHRでは学級委員を決める。立候補する人は手を挙げるように」
「はい。私やります」
「お~!水瀬やってくれるのか」
確かあいつは……あっ昨日の入学式の時の代表挨拶の人だ!名前は水瀬 美菜……だったっけ?わざわざめんどくさい学級委員になるとは、流石1年生代表。てか美少女だな〜。眼福ありがとうございますって感じ。
「じゃあ学級委員も決まったし先生はこの辺で。授業遅れないようにな~」
そしてチャイムがなり授業が始まった。
「涼也~飯行こうぜ〜」
「今行く~」
今はようやく午前の授業が終わり昼休みだ。俺は夏川と昼食を取りに行こうとしていた。
ガタンッ
「へ?」
思わず変な声が出てしまう。目の前には赤みがかった長い黒髪が特徴の美少女……水瀬さんが居た。何故かずっとこちらを見ている。何かしただろうか?それより周りの視線が痛い。クラスのほんとんどの人に注目されている。いやまぁ水瀬さん綺麗だからだろうけど。というかいつまでこの状態?ほらもう夏川も唖然としちゃってるよ。
「あ、あの〜水瀬さん?」
俺は勇気を振り絞って水瀬さんの名前を呼ぶ。
「……」
いやスルーかーい。俺みたいな三下の言葉はスルーって?いや概ね間違ってないよ!でもね?俺だって傷つくんだよ?というかこの状態から解放して欲しいんだけど?
「あの〜用がないなら俺もう昼行くから……」
俺が立ち上がって夏川の所に行こうとした瞬間俺の手首の所が熱く柔らかい感触がした。後ろを振り返るやはりと水瀬さんが俺の手を掴んでいた。てか力強いな。振り解けないんだけど
「あ、あの〜」
「——きて」
「え?」
「放課後屋上に来て!」
放課後屋上ね。ずっとそれが言いたかったんだね?そんなこと適当に言えばいいのにね。どうせ大したことじゃないんでしょ。ん?なんでそんなに顔が赤いのかな?なんでそんな目が潤んでいるのかな?いやいやあんなこと言ってそんな顔したら誤解されちゃうでしょ?俺じゃなかったらイチコロだよ?大丈夫?
「来てくれる?」
や、やめろ!そんな目で見るな。くっ……美少女の上目遣いがこんなに強力なんて……本当に俺じゃなかったら可愛過ぎて心臓爆発でイチコロ《一殺》だったぞ。こんなの断れる訳ないだろ。俺にどうしろって言うんだよ!もう行くよ!行けばいいんだろ!
「わ、分かったよ……」
やめて……そんなに嬉しそうに跳ねないで。「キャー、ヤッター」じゃないの。さっきまでのクール系美少女どこいきやがった。可愛い系に早着替えしてんじゃねえよ。ギャップで死ぬだろ。もう一遍の悔いも無いわ。じゃあな……
そうして俺の昼休みは終わった。ちなみにその間夏川はいいおもちゃを見つけたた子供のような顔をして笑っていた。
そして迎えた放課後、俺は屋上に居た……そう美少女とともに。夕日の半分は地平線に消え、空は紅く染まっている。水瀬さんの顔が心なしか赤く見える。え?夕日のせいだよね?そうだよね?まあ今は置いておこう。俺が今考えることはこの状況をどう乗り切るか。この状況十中八九告白だろう。振っても受けても俺にもう平穏な日常は戻らない。何せ相手は学年全員が憧れる超絶美少女の秀才だ。良かったらいじめられるくらいだろう。だか最悪刺される。比喩とかじゃなくてマジで。まだ入学して2日なのに既にファンクラブなんてものがあるんだ。これくらいは想定に入れるべきだろう。ではどう切り抜けるか。俺はかつて無いほどの早さで頭を回転させる。俺の日常の為に!
「ごめんなさいね、佐治くん。呼び出しちゃって」
「いやいいですよ。それで話ってなんですか?」
「多分佐治くんの今考えていることで合ってると思うわ」
やはり告白か。だがそれならまだ打つ手はある。何も結婚を申し込まれている訳じゃないんだ。少し付き合って俺がクズだって所を見せればいい。そうすれば俺は振らなくて済むし短い間なら殺される前には別れられるだろう。さぁ来い!
「私と……私と結婚してください!」
うんうん結婚ね、オッケーオッ……は?今なんて?結婚って聞こえ気がするんだけど。え?いや、聞き間違いだよね?
「ごめん水瀬さん、今結婚って聞こえたんだけど俺の気のせいだよね?」
「いえ、気のせいじゃないですよ。私は結婚を申し入れました。」
マジだったかぁ。うーん……うん、計画もクソもねえはこれは。どうしてくれんだくそ!本格的に殺されかねんぞこれは
「あの、そろそろ返事を聞かせて貰えませんか?」
「あ、あぁ」
もうタイムリミットか。しょうがないなこれは。あなたの勝ちだよ、水瀬さん。ただ結婚はしないよ?最後の悪あがきだ。
「お付き合いでいいなら喜んで」
こうして俺は水瀬さんと付き合うことになった。さよなら俺の平和な日常。できればまた会いたいな。
「あ、佐治くん。私は絶対諦めませんよ?絶対落として見せます!」
バレてたか。でもまぁいいか。なぜなら俺が3次元に屈することないから。もう同じ轍は踏まない。二度と。