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日常で世界を変える(定本編)  作者: mei


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7月19日 思い出

 侑大の言う通りだった。雨音は、まるで太鼓の連打のように、グラウンドを叩きつけている。そんなこともあり、俺たちはグラウンドを使うことはできなかった。雨の冷たい感触が、野球部員たちの体に滴り落ちる。もうすぐで夏の大会というのに、、、、。おそらく、みんなそんな気持ちだろうな。雨の日恒例の坂道ダッシュ。いつもは早く終わらないかなと思っていたが、今日の坂道ダッシュは調整の一つでもある。ただ、走るだけではダメだった。予定では、坂道ダッシュ10本。ここまで、4本。もうすぐ折り返しという感じだ。、もう少し、雨がやめばグラウンドで練習もできるのにな。いろいろな思いを抱えながら、俺は走る準備を整える。

 「よーい、スタート!!」。後ろにいた橘は大きな声を出した。橘の声は、雨音をかき消すほど気合いに満ち溢れていた。先頭を走るのは、永谷。泥を跳ね上げながら、永谷の後を追いかける。必死に坂を駆け上がるがなかなか進まない。永谷の背中を追うように、他の部員たちも、顔に泥と汗を滲ませる。永谷に1位取られてたまるかぁ。泥水を蹴り上げながら、前へと進む。「うぐっ…!」俺は、急な斜面で足を取られ、態勢を崩しかける。それでも、歯を食いしばり、泥にまみれたユニフォームではなく、前を向く。

 隣を走る侑大の力強い走りが、俺に力を与えてくれる。いつもなら、坂道ダッシュは力を抜く侑大だったが、夏大会が迫っている今、そんな姿勢は1ミリも感じなかった。「負けてたまるか、、、、、!」。俺は、さらに加速させる。雨は、弱まることを知らず、容赦なく降り注ぐ。さっきより強くなっているんじゃないだろうか?一番上まで登った俺のウェアは泥にまみれ。結果、永谷、侑大のあとの3着。5人中3位は、なんとも言えない順位だ。走り終えた後も、雨はなかなか止まない。走り切って暖かくなっていた体を再び冷やしてしまう。

 走り終えた俺たちは、下から走ってくる次の組である、橋本や橘たちに励ましと鼓舞をこめて大きな声を捧げる。雨音に混ざり合いながらも、俺たち野球部は他の部活にはない圧倒的な存在感を生み出していた。走り終えた俺たちは、6本目に向けて、再び坂道を歩いて降りていく。この時しか、体力を回復するチャンスはないのだ。「もっといけるよ!!」。前にいた侑大は、いつにもなく声が出ている。俺たちは、ここまで全員で来たんだ。この雨の中でしか見せない姿もまた野球部員たちの思い出になるかもしれなかった。

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