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5月5日 フリーバッティング

 GW7日目。今日から、再び練習が始まった。部室には、橋本、八幡、佐伯、橘が、喋っていた。この前、遠山の引越しという大きなニュースはあったが、他の部員は、いつもと変わらず部室から大きな声が聞こえていた。


 私 「うぃーす」

 橘 「おぃー」

 橋本「健太郎、今日、練習終わったら、マクドらん?」

 

 「マクドらん」とは、マクドニルドというハンバーガー屋に行くことをさす。なんとも高校生らしい省略の仕方だ。


 私 「ええで。ふごる?」


 「ふごる」とは、トランプの大富豪をすることをさす。野球部には、こうした独特の言葉が多い。


 橋本「いいねぇー。橘も行くらしいで」

 私 「橘も行くん?」

 橘 「当たり前やん。俺、必要やろ?」

 私 「必要ー」


 橘のノリのよさには、俺も驚かされる。橘は、帰宅方向が私たちとは、逆方向で、マクドニルド行くと、自宅まで戻らないと行けないのである。さすが、聖徳高校のエースである。


 橘 「午前練、最高やな」

 八幡「明日から、休みやしな」

 橘 「修ちゃん、明日からデート?」

 八幡「ちゃうわ。橘こそデートやろ」


 明日から休みからか、普段は練習に気合が入っている3年生の表情も明るかった。現在、聖徳高校の野球部員は、3年生15人、2年生17人、1年生20人おり、約50人の大所帯となっていた。他の部活動と比べても圧倒的に多い。放課後の部活動では、野球部でグランドが埋めつくされている。

 今日は、野球部以外の部活動は、していなかったためグランドが広く使える日となっていた。そういったこともあり、普段はあまりできないフリーバッティングとシートバッティングが練習メニューに入っていた。先日行われた多田高校、江陵高校との練習試合で得点をあまり取れなかったこともあり、バッティングの強化が必要となった。

 5月末には、道和高校、白州工業高校、城西大学附属高校との強豪校との練習試合が控えている。特に、城西高校は、昨年、甲子園出場を果たしており、プロ注目の選手もいる。城西高校に対して、どれくらいやれるかということが今の俺たちのモチベーションにもなっている。

 9時になると、練習が始まった。いつものようにアップをし、キャッチボールを終えると、五ヶ所でのフリーバッティングが始まった。五ヶ所の内、三ヶ所がバッティングマシーン、残りの二ヶ所には、八幡と小川がバッティングピッチャーをつとめた。一組目の打撃陣は、右から、侑、佐伯、川中、田畑、安田が入った。バッティングは、一ヶ所で五分間ボールを打つ。五分経つと横のゲージに移動してバッティングをする。この作業を二周するとバッティングが終了する。

 真ん中にいる川中の「元気出していこー」の掛け声とともに、バッティングが始まった。バッティングのいい侑、佐伯、川中は、次から次へとボールを外野まで飛ばしていた。中でも、4番である川中のバッティングの飛距離は飛び抜けていた。レフト付近を守る杉山や山田の頭上を越えていく。

 守る野手からは、大きな声が響く。センターには、橋本や橘がいて、率先して声を出している。


 橘 「バッター、打ってこいや」

 橋本「へぃへぃ。センター、センター」

 橘 「田畑、飛んでないぞ」

 橋本「こいや、こいや」

 橘 「山田、声出せや」

 山田「佐伯さんー、レフト打ってきてください」

 橘 「山田もっと、もっと」

 佐伯「佐伯さんー、レフト飛んでないですよー」

 橘 「佐伯言われてんぞ。打ってこいや」

 飯田「元気だしてー」

 橋本「バッター、とんでないよー」


 フリーバッティングの守備は、お祭り騒ぎだった。フリーバッティングは、5組にわかれて行われた。私は、飯田と小田とポジション争いをしている最中ということもあり、バッティング練習はとても重要であった。

 3組目に打撃を行ったが、思うようなバッティングができない。ボールに振り遅れてしまうことが多く、ライトへの方向が多かった。それでも、最後の方は、いい形で打球が飛んでいった。

 こうして、1時間ほどでフリーバッティングが終わった。そして、11時からシートバッティングが開始した。シートバッティングとは、一ヶ所でのバッティング練習だ。今日は、1年生の蒔田が投手をつとめた。

 いつものように1ボール2ストライクから打撃をはじめた。しかし、多くの3年生がヒットを打つことができていないなかった。蒔田のボールは、シュート気味のボールでボールが右方向に曲がるため上手くしとめることが難しい。

 そんな中でも、橋本は、レフトの頭上を越えるランニングホームランを打ってみせた。私は、ショートゴロになったが、打ち方としては納得していた。2年生の杉山がライトフライを打ったところで、シートバッティングは終わった。

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