4月30日 練習試合(多田高校戦)
GW二日目の朝は、スマホの着信画面を見て起きた。まだ、朝の5時半。布団の中から、手を出し光るスマホを手にとった。スマホの光る画面は、瀬戸からのLINEだった。なんとなく文章を読んで、既読をつけずにスマホをベットに置いた。
眠たい目をこすりながら、一階の台所に降りた。いつものように納豆と白ご飯を食べ始めた。ふと、さっき連絡が入っていたLINEが気になった。内容は、明後日から入院するというものだった。最後まで文章を読んでいないのでよくわかっていなかったが、どこかモヤモヤした気持ちになった。おそらく、昨日会った時から、入院することは決まっていたのだろう。瀬戸が入院することに加えて、そのことを直接言ってくれなかったことにも寂しさを感じていいた。おそらく、田中さんや高田さんにも連絡がいっているので、後で2人に連絡をしようと考えていた。すると、一気に現実に戻された。
多田高校との練習試合。一試合目は、三回に一挙五得点をあげたこともあり、八対二で勝利した。昼休憩を挟み、二試合目が始まった。二試合目は、主にベンチメンバー主体で行われた。一試合目に出た私が出る可能性はほとんどなかった。たった三イニングで今日は、終わりということになるのだろう。
よくわからず終わった一試合目を、バックネット裏のファールボールに備えた球拾いをしながら考えていた。
「なんで、一塁前に転がさなかったんやろ、あーもう。腹立つ」
バックネット裏で立っていると、サッカー部の辰巳とたいちゃんが来た。
辰巳 「おつかれ、勝っとん?」
私 「今、始まったところ。」
たいちゃん 「そうなんや、早よ試合でろよ」
私 「俺、ベンチやからなー」
たいちゃん 「ハハハ。頑張れよ、先帰るわ」
私 「おう、バイバイ」
野球部に言われるならまだしも、他の部活のやつにベンチいじりはきつい。サッカー部は、午前練でお終いだった。辰巳やたいちゃんは、2年3組の同じクラスメイトである。クラスメイトと話してると、GWの宿題の多かったことを思い出した。英語4p、数学2p、社会ノート作成。GW明けには、小テストもある。まさに、地獄である。
そうこうしているうちに、2試合目も終盤になった。試合は、聖徳の投手陣が失点を重ね、9対1で負けている。もう、ベンチも静まりかえっていた。ベンチには、主将の川中がいるが、1試合目に出た3年は、裏方に回っていた。
結局、12対2で負けた。試合後、ミーティングをして終わりかと思っていると、まさかのランニングが待っていた。ランニングは、グラウンド5周。蓄積した足腰に、さらに追い討ちをかける。走ってるうちに、蘇る一試合目。「なぜ、あそこで一塁前に転がせなかったのか」、「なぜ、そのアイデアが浮かばない」。
練習は、している。昨日も右、左のそれぞれの投手をイメージしながらバットを振った。だが、今日俺がバットを振ることは、なかなった。朝から、弁当作って、ユニホームを洗ってくれた母親に申し訳なく感じた。今日の俺はなんだったんだ。
前を走る侑を見ていると、さらに悲しくなった。今日の侑は、5打数2安打、2打点という働き。あれだけ打てれば楽しいんだろうな。よく、目に見えてるものが全てではないというが、目に見えるもの以外、何に目を向けて相手を理解すればいいのだろう。侑は、野球だけでなく頭もいい。おまえけに、彼女もいる。全てを手に入れてるといっても過言ではない。そんな侑を見ていると、無性に自分の才能のなさに嫌気がさした。
ようやく、3周目を走り終えた後、私の足に痛みが走った。途中で、ランニングの列から離れた。すぐに、監督の方に向かった。
監督「どうした?」
私 「足が痛くて、走れません」
監督「もう、帰っていいから病院に行ってこい」
私 「はい」
チームメイトとは、一足早く別れ、親に迎えに来てもらった。そして、病院に向かった。医者の診断は、特に問題ないということだった。本当に問題ないのか、疑問しかわかなかった。医者からは、三日後に再度、病院に来るように伝えられた。