5月17日 練習試合(取手高校)
今日は、朝から、取手高校との練習試合をしていた。この試合が終われば、道和高校との試合になる。現在は、7回表途中で、4対5で取手高校がリードしていた。取手高校は、県内でもそこまで強くないだけに、大丈夫か心配になっていた。
6月には、聖准戦がある。春の大会が終わってから、俺たちの次の目標は、そこになっていた。前年度は、淮南高校で行われたが、8対5で負けてしまった。今年こそという思いは、みんなあるのではないかと思っていた。
俺の足の怪我も少しずつだけど、完治してきた。しかし、スタメンには起用されない。今日は、優聖が2番セカンドで先発出場していた。先発出場の期待に応えるように、優聖は、右に左にヒットを打ちまくる。アイツは、来たボールに対してそのまま打つような感覚で振る。だから、打てるのだろう。戦力としては、必要だが後輩に負けるのは気に入らない。ましてや、優衣の弟となると余計にだ。
俺は、レフトスタンドから、試合を眺めていた。つい、この前まで一緒にいた遠山もいない。右手に持っていたバットで軽くスイングしてみる。このまま、試合に出ないと夏の大会にスタメンで出れるかもわからない。そんなことを考えていると、三塁方向から、聖徳の選手が走ってくる。背が高く、肩が左右に揺れる。だんだん俺の方に近づいてくる。あれは、永谷だ。
永谷「ちゃんと、バット振っとるか?」
俺 「うるせぇ。声出しとけ」
永谷「ハハハ。出番だってよ」
俺 「えっ?」
まさか、このタイミングでチャンスが来るとは。
永谷「8回、代打でいくらしいよ」
俺 「まじか。テンション上がるわ」
永谷「あれから、久しぶりの出場じゃない?」
確かに、今日試合に出ると、約1ヶ月ぶりとなる。
俺 「あぁ。そろそろ打たねぇと"聖准戦"出れないだろ?」
永谷「そうだな。練習試合も後3日間の6試合ぐらいだしな」
俺 「あぁ、打ちてぇ」
永谷と談笑していると、ベンチから誰かが飛び出してくるのが見えた。
永谷「行こうぜ」
俺 「えっ、お前も出るの?」
永谷「当たり前だろ。ホームラン打つから」
俺 「じゃあ、ここに誰がいるんだよ?」
永谷「あのバカがくるんだろ」
永谷は、こちらに走ってくる選手を指差した。あれは、橘だった。今日は、橘も4回3失点と思うような結果が出ていないだけに納得していないだろう。それぞれの思いを抱えながら、俺たちは走り出した。