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5月10日 瀬戸明日花

 GW12日目。俺たちは、祖母の家から車で戻って来る途中だった。


 ー5月6日ー


 瀬戸のお見舞いの帰り、下田と絶対絶命ゲームをすることになった。


 俺 「最低や。下田さんって、天然ちゃうやん」

 下田「天然ちゃうわ」


 鋭いツッコミが飛んできた。


 俺 「もう、外して、俺のターンにもちこむしかないやん」

 下田「せーので、書いた紙見せるよ」

 俺 「ちょ、ちょっと待って」


 おどおどしている中でよくわからないゲームが始まったあげく、下田さんから危険な質問までがとんできた。


 ー『付き合うなら、どっち』ー

 瀬戸か下田さんかどちらを書くか迷った。下田さんは、瀬戸を書くかなと思い、俺は、下田さんを書いた。


 下田「書けた?」

 俺 「おっけ」

 下田「せーの」


 下田の紙には、『自分』と書かれていた。見事に、俺は当てられてしまった。下田の紙を見た瞬間、崩れ落ちた。


 下田「やっぱり、定本君は優しいね。美人の優衣よりも私を選んでくれるなんて。優衣に言おうと」

 俺 「頼むから、やめてや」

 下田「じゃあ、楓に話しかけること。6月5日の誕生日を祝うこと。よろしくね」


 山川さんのことをとても大事に想っていることだけは理解できた。


 そう言って、下田さんは、エレベーターに乗りこんで、上がって行った。私は、下田さんにあっけにとられてしまっていた。下田がいなくなった後、電車で再び自宅を目指した。

 帰りの電車に乗っている時、瀬戸のことを考えていた。なぜ、優衣や高田さんに会いたがらないのか?下田さんがいたこともあったのだろうけど、単純に自分の様子を知られたくなかったのかもしれない。

 瀬戸は、病気になってから、田中さんや高田さんと会ったという話を聞いたことがない。それも当然なのかもしれない。中学三年生の途中までは、瀬戸も他の女子から尊敬されていたのだから。ソフトボールだけでなく、学業や容姿も優れていた。彼氏もいて、友だちも多かった。しかし、病気になってから、多くの友だちと絡むことはなくなった。

 私は、瀬戸から借りた分厚い本を開いた。そこには、瀬戸の病気である再生不良性貧血のことが書いてあった。

 "再生不良性貧血とは、血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する疾患です。この状態を汎血球減少症と呼ぶびます。重症度が低い場合には、貧血と血小板減少だけがあり、白血球数は正常近くに保たれていることもあります。白血球には好中球、リンパ球、単球などがあり、再生不良性貧血で減少するのは主に好中球です。好中球は私達の体を細菌感染から守る重要な働きをしています"

 続けて、どんな症状が出るのかについて読んだ。"赤血球、好中球、血小板の減少によって、それぞれの血球減少に応じたさまざまな症状が起こります。赤血球は酸素を運搬しているため、その減少によって脳、筋肉、心臓などの全身に酸素欠乏の症状が起こります。脳の酸素欠乏でめまい、頭痛が起こり、筋肉の酸素欠乏で身体がだるくなったり、疲れやすくなったりします。心臓の酸素欠乏により狭心症様の胸痛が起こることもあります。それ以外に、身体の酸素欠乏を解消しようとして呼吸が速くなったり、心拍数が多くなったりします。呼吸が速くなったことを息切れとして感じ、心拍数が速くなった状態を動悸として感じます。赤い赤血球が減るため顔色は青白くなります"

 本の説明では、言葉が難しくて病気のことについては、あまりわからなかった。続けて、スマホで調べてみた。再生不良性貧血についての記事がでた。死ぬ確率や手術について記載されている。瀬戸は、どんな気持ちなのだろうか。正直、私にはわからない。瀬戸や下田の顔を思い浮かべながら、窓からの景色を見ていた。

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