5月9日 下田那奈
GW11日目。祖母の家に来て、3日目の朝が来た。今日は、昨日、掃除した墓に飾る花とお供物を買いにスーパーにやってきていた。
ー5月6日ー
下田は、俺に気づくと、エレベーターに乗るのをやめ、俺の方に歩いてきた。
下田「帰るの?」
俺 「うん。検査終わった?」
下田「あとで、もう一回検査あるよ」
何かのノートと筆箱を持っていたみたいだ。
俺 「そっか」
下田「でも、まさか定本君と明日花が友だちやから、ビックリしたよ」
俺 「俺も君らが知り合いでビックリしてますけど」
下田は、笑っていた。
下田「GWの宿題多かった?」
俺 「多いな。部活あったから、まだ一個も終わってない。これからやると思うと気が重いな。下田さんは、終わった?」
下田「うん、暇やからね」
俺 「何が一番めんどくさい?」
4月末から学校に来ていなかったが、GWの宿題は、知っているらしい。
下田「英語かな?」
俺 「あれ、めんどくさいんかぁ」
下田「他の科目は、早く終わったけど、英語は終わらんかったなぁ」
俺 「そうなんや」
立ち話を始めてから、3分ほどが経った。すると、下田さんが椅子に座った。俺もつられて、横の椅子に腰をかけた。
下田「今、クラスどんな感じ?」
俺 「特に変わりはないよ」
下田「そっかぁ。もしさぁ、クラスで楓が1人やったら、声かけてくれへん?」
俺 「楓って、山川さんのこと?」
下田「うん」
山川楓。下田の友だちだった。
俺 「いやいや、山川さんと喋ったことほとんどないから無理よ」
下田「頼むよ。楓は、ああ見えて寂しがりややねん」
俺 「いや、無理やって。変なこと言うたら怒られそうやし。てか、山川さんにも言ってないん?」
下田「言ってないよ。心配するし」
下田が休んでいる理由は、あまり公にされてないのだろうか?では、なぜGWの宿題を知っているのか?謎は、深まるばかりだ。
俺 「俺が話したら、下田さんのこと言ってしまいそうやし。むこうも疑いもつやん」
下田「まぁ、まぁ話しかけてよ。言わんかったら、定本君のこといろいろ明日花に言うよ?」
俺 「怖い、怖い。何言うねん」
下田さんは、笑いながら同じクラスにいる山川楓の話をしていた。
下田「じゃあ、ゲームして決めよう。定本君、まだ時間ある?」
俺 「あるよ。ゲームって何?」
下田「絶対絶命ゲーム」
俺 「何それ?」
相変わらず、下田は、不思議なことを言ってくる。
下田「今から、どっちかが、お題を出して、相手の考えた質問に答えて、その答えが一緒になるのを目指すゲーム」
俺 「相手の答えをあてればいいの?」
下田「うん」
俺 「一緒やったら、どっちの勝ちになるの?」
下田「質問出した方」
俺 「わかった」
どうやら、相手が書きそうな答えを考え、それを書けば勝つことができるのか。
下田「じゃあ一回勝負。当てたら、終了。外したら交代。わかった?」
俺 「うん」
下田「じゃあ、当てる方か当てられる方どっち?」
俺 「先攻で当てたら、その時点で終了?」
下田「うん」
俺は、よくわからずにおどおどしていた。瀬戸が俺のカバンにいれた分厚い本が肩に重くのしかかる。
俺 「よくわらかんから、先質問して」
下田「はーい。俺が当てる方ね。不正を防ぐために、回答をこの紙に書いて」
下田さんは、持っていたノートの紙と黒色のペンを俺に渡した。そして、俺のおどおどした表情を無視して話をすすめた。
下田「じゃあ、お題いくよ。もし、付き合うなら俺と優衣どっちがいい?」
俺 「は?何それ。これ、当たっても当たらんくても地獄やん」
下田「だから言ったやん、絶対絶命ゲームやって」
ここで、初めて、ゲームの名前を理解した。この後、下田の質問に驚くことなんて考えもしなかった。