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病みつきスパイス

作者: 京本葉一

 もしもT氏が某国の大統領に再選したら、隠されていた宇宙人の情報が表に出てくるという噂を知り、衝動に駆られてキャンプにでかけた。

 しかし、記憶がとんでいる。

 わくわくしながら星空を眺めていたはずなのに、気がついたらテントのなかで横になっており、すでに太陽は昇っていた。

 これはもしやUFOを目撃して宇宙人に連れ去られて不可思議なオペを施されて記憶を消去されたうえで野に放たれたのではないだろうか、という仮説しか思いつかないわけだが証明のしようはない。

 学生時代からの友人であるネコマルと居酒屋に立ち寄ることになり、エピソードと仮説を熱く語ってはみたものの、サンマの目玉ほどの興味もない、という印象しか得られなかった。


「マンガ喫茶に! コタツがないとかおかしいやろがい!!」


 数少ない友人をさらに減らしたいと思わせてくれるネコマルが、お酒の力を借りて現代社会の不条理に怒りをぶちまけていたとき、それは起きた。

 ネコマルが急にへらへらと笑い出したかとおもったら、いつの間にか手のひらに小さなビンが存在していた。

 透明のビンには七味唐辛子のような粉末が入っていた。

 突如湧いて出てきたビンをまじまじと見つめていると、近くの席に座っていた酔っ払いが、

「おうおう兄さん、ちょうどええもん持っとるやないかい」

 と声をかけつつ見事な手癖でビンを奪い去っていった。辛いのが好きな人らしい。焼き鳥にかけまくって食べていた。即効性の毒物ではないらしい、得体のしれない赤い粉末は、追加注文をするぐらい美味しいようだ。


「超能力の存在は証明できるかもしれない」


 人の話を聞かないネコマルを漫画喫茶に放り込んだあと、電信柱の根元ですすり泣いている幸の薄そうな女性を発見して「うわぁ」と心が縮んだとき、また小さなビンを握っていた。

 泣き声の聞こえなくなった夜の路上で、岩塩のような白い粒の入ったビンを見つめながら仮説を立てた。


「マイナスの感情をスパイスに変換する能力を身につけたのでは?」


 仮説を証明することは容易だったが、宇宙人に「これやばいから」と暗示でも受けていたのか、能力のことは黙っていた。

 ハイパーカウンセラーとしての地位を確立したころ、「人生のスパイス」の販売をはじめた。

 病みつきになる美味しさを誇る超高級スパイスは、特別なルートでなければ手に入れることはできない。なぜか早死にする顧客は多いが、新しい顧客が増えているため、在庫はいつも空である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人生のスパイスで、何故か早死にする。 私はここに、強く魅かれてしまいました。
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