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1話

  私はもう世間で言えば、十分おばさんと言える年齢になっていた。


  今年で40歳になる。以前に夫がいたが。6年前に離縁して以降はずっと独り身だ。なもので現在は実家に出戻り状態だった。子供はいない。離縁した理由だが。夫が浮気した事が原因だ。夫は私より3歳下だった。

  だというのに8歳も下の女性と浮気した。相手はまだ22か23歳くらいの妙齢と言える年頃だった。

  そんな事を思い出しながら母の話相手をする。ソファに座りメイドが淹れた紅茶を飲んだ。母は苦笑した。


「……メルローズ。あなたも40歳になるわねえ。早いものだわ」


「お母様。確かにそうだけど。でも再婚は今しばらくはいいわ」


「まあ。メルがその気になったらでいいわよ。もうこの屋敷にはあたくしとお父様しかいないし。王都の屋敷には長男のウィラードが住んでいるからねえ」


「……そうだったわね。ウィル兄さん、元気かしら」


「ふふ。心配だったら手紙でも送ってみたら?」


「そうしてみるわ。ついでにウィル兄さんの同僚の方でも紹介してもらえないかしらね」


  冗談で言うと母は笑みを深めた。ちょっと嬉しそうだ。


「メル。でもウィラードの同僚の方だと。独り身の男性は少ないかもよ。年下の方も想定内に入れた方がいいんじゃないかしら」


「年下ねえ。こんな年増、いいっていう人がいるのかしら」


「……メルローズ。年増っていうんだったらあたくしはどうなるの。そういう言葉は人前では言わないでね」


  私は肩を竦めた。はあいと返事をする。机の上の紅茶を口にした。もう冷めてしまっている。ぬるいけど我慢して飲んだ。母も紅茶を飲みながらほうと息をつく。2人してどうしたものやらと頭を抱えたのだった。


  翌日、私はウィル兄さんこと実兄のウィラードに手紙を書いた。時候の挨拶から始まり最後に「お見合いをしたいのだが。良い相手が見つからない。兄さんは誰か良さそうな方を知らないかな?」と書いてみた。封蝋をしてから家令にウィル兄さんへ送るように言いつけた。家令は一礼すると手紙を持っていく。ドアが閉まると私はよしっと気合いを入れたのだった。


  翌日のお昼頃に兄から返事が届いた。家令が持ってきた手紙をペーパーナイフで封を切った。こう書いてある。


<メルローズへ


  元気にしているか?俺は元気にしているぞ。


  さて、早速本題に入る。お見合いをしたいとあった。けど良い相手が見つからないとか。


  俺の知っている方で良ければ、紹介はするぞ。そうだな。第二王子のリヒテン殿下はどうだろうか?


  第一王子のライル殿下はもう正妃がおられるしな。実はリヒテン殿下にも手紙を書いたんだ。


  妹が結婚相手を探しているとな。そしたら自分で良ければとお返事があった。


  よかったな。リヒテン殿下は一週間後に王都の屋敷にいらっしゃるから。


  メルローズもこちらに来てくれ。それでは。


  兄のウィラードより>


  私は第二王子殿下とあり驚いた。でも現陛下も80歳近くになっておられるし。実は私の住むイグラス王国では晩婚化が進んでいる。最近は男女共に平均の初婚年齢が20歳以降で問題になっていた。男性の結婚適齢期が昔は20歳から25歳くらいだった。今は25歳から30歳くらいに上がってきている。女性は15歳から20歳くらいだったのが19歳から25歳くらいと言った感じだ。

  現陛下も正妃である王妃様と結婚なさったのが30歳くらいの時だった。王妃様は24歳くらいであったとも聞く。

  ちなみに第一王子のライル殿下は現在で45歳で弟君で第二王子のリヒテン殿下が42歳だ。ライル殿下は正妃のルーシェリアル様との間に3人のお子様をもうけておられる。けどリヒテン殿下は未だに独り身らしい。何でもかつての婚約者の女性を病気で亡くして以来、新たな婚約者もおらず、結婚もせずに仕事一筋でいたという。

  そして現在に至るというわけだ。でも兄よ。何でよりにもよってリヒテン殿下に若い女性ではなく年増も良いところの私を紹介する気になったのか。ちょっと解せない。

  仕方なく新たな便箋と封筒を出してお返事をしたためたのだった。


  その後、慌ただしく王都の屋敷に行く準備に追われた。メイドで私付きのマリーとジェン、メイの4人でスーツケースやカバンにドレスやワンピースなどを詰め込む。


「……メルローズ様。必要なものは大体入れましたか?」


「うん。マリー達のおかげで助かったわ」


「お礼には及びません。でも王子殿下とのお見合い、うまくいくと良いですね」


  マリーの言葉に曖昧に笑う。リヒテン殿下が私を気に入るはずはないが。でもマリーがせっかく励まそうとしてくれているのだ。本音は隠して「そうね」と頷いたのだった。

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