6話 後始末が大変
アンドレア殿下→アンドレアに変更しました。今回も短いです。ごめんなさい。よろしくお願いしますm(_ _)m
ヴィオラ達が入学した国立カークリード学園は、彼女たちの国ウィザリア王国の首都である、カークリードにある。この学園は1年制であり、12歳から18歳までならばいつでも入学することができる。しかし、生徒は入学するまでに勉学やマナーを各家で履修しなければならない。なぜならば、この学園で行う授業は、講義ではなく討論を行うからだ。そうすることにより、いかに自分の能力が優れ、思考に長けているかを示すことができ、それと同時に相手の技量を測ることもできてしまう。また、自分と同じ考えを持つものを見つけることもできる。1年間という期間が設けられることに加え、本格的に親の立場を継ぐ前に周りと繋がりが持てる機会を無駄にする理由はない。したがって、多少無理をしてでも立場がある人間はこの学園にやってくる。
今年度、この学園にヴィオラとアンドレアは16歳で、アンドレアの従者であるイーサンは17歳、ラルクは15歳でそれぞれ入学した。仕方がないこととはいえ、将来の国の中枢を担う人間が今年に集中して入学してまった。そのため今年は人数制限が作られてしまい、例年よりも頭一つ抜けた能力と権力を持つ子供らが集まったと言われているのだった。
そんな重要人物が集まる学園の中で、さらにいえば、入学してから3日というまだお互いのことをよく知らない時期にヴィオラは傷害事件を起こしてしまった。とは言っても被害者はヴィオラ自身であるのだが...。
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尋問と呼んでもいいのか分からない時間を過ごしたヴィオラは次のループに行くため、そろそろ帰ろうとベットから起き上がる。
「殿下。話は済んだようなので、そろそろ失礼させていただきます。」
そう言ってさっさと部屋から出ようとするが、それは叶わなかった。ベットから立ち上がった瞬間、ヴィオラの行く手はアンドレアに妨げられてしまう。
「…ヴィオラ嬢。病み上がりのところ申し訳ないが君には王宮に出向いてもらわねばいけない。」
アンドレアは、先ほどの会話から心底疲れ切ったという表情をしながらも、通す気は全くない様子である。
ーなぜ!?
ヴィオラの意味がわからないという顔を見てアンドレアはため息をついた。
「本当にわからないのか?」
一生懸命考えているのは伝わるが、それでもヴィオラは、心の底からわからないという顔をしている。
「...はぁ。では、質問形式にしようか。ナイフで首を傷つけられ、大量出血してしまった女の子がいるとして、その女の子が貴族で、場所が学園の中だった場合、どのような事態になると思う?」
ヴィオラは、それは大変な事態だ、と純粋に思った。
「教師は大混乱でしょうね…。学園は何かしらの対応を取らねばいけなくなると思います。しかも傷つけられたのが貴族ならさらにやっかいなことになりますね。」
アンドレアは知らず知らずのうちによってしまった眉間のシワを伸ばそうと指でマッサージする。
「…あぁそうだな。しかもそれに加え、その事件が起きた場所が開放的な中庭だったとしたら?」
ヴィオラはその状況を想像する。
「えー…おそらくですが、その場には少なからず人がいたであろうと予測します。そのような現場に居合わせれば、生徒も大混乱ですね。」
先ほど見た光景をしっかり想像できているヴィオラにアンドレアは優しい微笑みを浮かべた。
「そうだな。ではさらに加えて、傷つけられた少女が第一皇子の婚約者であったらどうなると思う?」
そんな事態あり得ていいのだろうかとヴィオラは思いつつも答えた。
「王宮も巻き込んで、大混乱になりますね!!」
「〜〜っそれが今の状況だ!!何故、理解できるのに、気づかないんだっ!!!」
ヴィオラはまさに今気づいたと声に出てないのが不思議なくらい顔に出ていた。その様子にアンドレアはもう呆れるしかない。
「君のおかげで今、王宮並びに学園は大混乱だよ。」
想定外の事態にヴィオラは本気で驚いていた。今まで自殺に失敗したことなどなかったが、失敗すると大変な事態になるんだとヴィオラは、この時初めて理解した。
ーーと、とりあえず、私が死ねばまた時間が戻る。さっさと次のループへ行こう!
「わかりました!とりあえず死んで来ます!!」
「だからなんでそうなるんだ!!ばかなのか!?ばかなんだな!!このばか!!」
アンドレアはとうとうキレてしまったのだった。