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5話 考え方の違い

すいません。少ないですが、読んでくださると大変喜びます。

 ーーどうして愛されないと思ったのか...か。




 たった今、アンドレアが自分に聞いてきた質問にヴィオラは少なくない怒りを覚え始めていた。



 ーーいつだって私を愛してくれたことなどなかったくせに...。いや、それは少し違わね。少なからず愛は受け取っていたかもしれないわ。ただそれは友愛という形であったけれど。




 少し様子が変わったヴィオラにアンドレアは不思議に思った。しかし、どうしたのかと問う前にヴィオラから強い視線をあびる。




「その質問に答える前に私から一つ殿下に確認したいことがございます。」




 ーーいつもならこんな愚かなことはしない。けれど、どうせこの後死んでやり直すのなら言いたいことを言ってやる!




「さきほど、中庭でなにをなさっていたのですか?」




 今日は入学式から3日ということもあって、午前中に各授業の説明を受けるだけで帰宅することができた。ヴィオラは帰ろうとしていた時にたまたま校門で猫を見つけていた。その猫の進むままについて行ったら、中庭に出てしまったのだった。




「私が中庭に行った時、可愛らしい女の子に随分と優しく話しかけてらっしゃったように見えたのですが。」




「なっ!違う!あれは、フィリっ…彼女が迷子になっていたようだったから、案内しようとしていただけだ!」




 あの時、中庭にはアンドレアと従者のイーサンとラルクの他にもう1人少女がいた。フィリア・ターナント。この国に一番多い、茶色い目を持ち、肩で揃えてあるベージュの髪は風が吹くたびに持ち上げられ、触れてみたいと思わせるふわふわした髪をもつ少女だ。その髪のように物腰も柔らかく、周りに好かれる才能を持っている。ヴィオラがかつて陥れようとした少女である。




「なるほど。もうお名前で呼ぶほど仲良くなられたんですね。」




 ヴィオラが思っているよりもヴィオラの声は冷たく響いた。その声にアンドレアは慌てて言い返す。




「待て!語弊がある言い方をするんじゃない!」




「人として!人が困っていたら助けるだろう!?」と弁明を繰り返すアンドレアの後ろで、荒々しい呼吸を繰り返すイーサンの腹筋はもう限界にきていた。普段の凛々しいアンドレアからは想像できないうろたえた姿が面白く仕方がない。アンドレア殿下の答え方はもう浮気を問い詰められる夫そのものだ。




 そんなイーサンの様子など気づきもしないヴィオラはアンドレアの否定する姿勢に、なにを慌てて否定しているんだろうかと思っていた。




 ーー否定しても無駄ですよ。前のループで居合わせた時も鬱陶しそうにこちらを見てきたじゃないですか。視線が邪魔だと言っていましたよ。




「まぁ、いいです。何故、愛されないと判断したのかでしたよね。殿下とその少女の記念すべき初対面の邪魔をした私は殿下に距離を置かれるからです。」




「ちょっと待て!そんなことしない!」




 アンドレアの渾身の否定も意味はなかった。なぜならヴィオラはもう経験済みである。ヴィオラは確固たる意志を持ち、反論した。




「いいえ!します!その証拠にあの時私に向ける殿下の目は不機嫌そのものでした!」




 現にあの時少し不機嫌であったアンドレアは違うと言い切れなくなってしまった。それでもなんとか「いや、あれは…そうじゃなくて…」とボソボソと声を出す。


 その様子を見たヴィオラは勝ったと言わんばかりに断言した。




「ですから!私は死ぬのです!」




 ドヤァという音が聞こえそうなほど不敵に笑ったヴィオラに一瞬納得しかけたアンドレアだが、すぐに正気を取り戻す。




「いやいやいや、それはおかしい!!」




「??何故ですか??」




 自分の理論は完璧だったはずだと、否定されたヴィオラは首をひねった。




「だからって死ぬことはないだろう!命をなんだと思ってるんだ!!」




 アンドレアの言うことは最もである。しかし、それはヴィオラには通じない。何度もループを繰り返しているヴィオラにとっては命など絶っても絶っても絶たれないものである。






「愛されないのに生きてたって時間の無駄です!」






 この言葉には流石にこの部屋にいるヴィオラ以外の全員が絶句した。なぜなら、3人は今までの人生を常に国を中心に置き、国を支える大人達に囲まれ生きてきている。自分たちの命が、いかに重要で、簡単に死んではならない人物かどうか、政治的にみてしっかり理解していたのだ。自分の命を握っているのは国。それが普通だと思っていた。だから特定の1人に愛されないからという私的な理由で死のうと考える人間に今まで関わったことがなかった。

 初めて会う人種にどう対応すればいいかなどわからず、呆然とするしかない。とはいえ、未来の王妃に死なれる訳にもいかない。愛されなければ死ぬという極端すぎる考え方にこの先どうすれば良いのかとアンドレアたち3人は頭を抱えることになった。



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