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4話 緊張感を維持したい

よろしくお願いします。

 診察を無事に終えると、侍女のヘレンがアンドレア達を部屋に呼び戻した。アンドレアは部屋に入って来ると人払いをし、部屋の中をヴィオラとアンドレアそれからアンドレアの従者のイーサンとラルクの計4人だけにした。


 流石にベットの上で殿下を対応するわけにはいかないと、ヴィオラはベットから起き上がろうとするが、「貴女はそのままで構わない。」と止められてしまう。




 イーサンはベットからそう遠くない位置にアンドレアの椅子を用意すると、アンドレアに座るように促し、椅子の後ろに並んだ。




 落ち着いて、話ができる状態まで落ち着くと、アンドレアが話し始めた。




「さて、私なりに貴女の近辺を調査してみたが、特に目立つことは起きていなかった。


 貴女の実家であるサングリア家は4代前の第三皇女が降嫁している由緒正しき家だ。王家を裏切っているとは考えづらい、いや考えたくはない。だから単刀直入に聞こう。なにを企んでいる。」




 アンドレアは嘘をつくことは許さないと強い意志を感じる目をヴィオラに向ける。ヴィオラは、これまでのループで何度もこの目を向けられたことがあったが、さすがにループが始まって3日で引き出したのは最短記録だった。




 ーーこれは…もしかして、もしかしなくても疑われている?しまった...やっぱり殿下の前で自害するなんて、あの時の私はなにを考えていたの!!そりゃ、いきなり自害しようとすれば、なにか失態を犯してしまった責任だと考えるのは当然だわ!




「誤解でございます!殿下!!サングリア家の王家への忠誠に揺らぎはありません!!」




 ヴィオラは必死に否定する。アンドレアからの視線を受け止め、決して目をそらさずにいると、ヴィオラの想いはアンドレアに伝わったようだった。




「私もそうだと信じたい。では、貴女は何故自害しようとしたのか、その理由を知りたい。」




「それは…。」




 ーーここで、嘘をついても、また疑われるだけね...。




 ヴィオラは、正直に話そうと思ったが、責められるようなアンドレアからの視線に耐えきれず、少し顔をうつむかせてしまう。そして後ろめたいことでもを話すような態度でアンドレアに話し始めた。




「殿下に愛されない人生では、生きていても意味がないからです。」




「…ん?」




「あの時点で、私が愛される未来は無くなってしまいましたので…。」














「あ、あい…?」
















「はい。愛です。」
















 数秒間の沈黙が彼らを包む。あまりに自分たちの価値観から離れた発言に、アンドレア達3人は自分が聞き間違いをしてしまったのだと思った。ひどい聞き間違いだと、心の中で少し笑いながら他の2人の様子を窺ってみると、これはおかしい。全員が同じ反応をしている。そしてようやく、自分の聞き間違いではないと、気づきたくなかった事実にたどり着いてしまった。訳がわからなくなってしまった3人は顔を近づけ、小さな声で相談をし始める。




「...ヴィオラ嬢が『俺に愛されない人生に絶望したから、死のうとした』と言ったように聞こえたんだが。」




 アンドレア殿下は眉間にシワを寄せながらまさかそんなはずがないと、従者であり、幼馴染でもある2人に訂正してくれるように助けを求める。「ありえないよな…はっはっは、疲れてるみたいだ。」と現実逃避しようとするアンドレアに残酷だが、ここで逃げてもしょうがないだろうと判断した、従者のイーサンとラルクはその道を阻む。




「はい…私にもそう聞こえました。」




「自分もそう受け取りました。」




「そんな、まさか!...ヴィオラ嬢ってそういうタイプだったか?」




「それは...分からないですね。というか、殿下の婚約者でしょう。殿下が一番詳しいはずなのでは?」




「殿下は公務だなんだと、ヴィオラ嬢のことほったらかしにしていましたから...。しかし、まさか自分の婚約者のことをほとんど分かっていないなんてそんなはず...。」




「お、俺が悪いのか?」




 いつまでも反応が返ってこないことで、不思議に思ったヴィオラが顔を上げると3人が顔を近づけてなにやら話しているようだった。これはどういう状況だと、不思議に思いながらも「あ、あのー殿下?」と声をかける。

 慌てて3人が元の位置に戻るも、話をどう続けるべきなのかもわからないまま、とりあえずなにか言わなければと、アンドレアは話し始めた。




「あ、あー...。えっと...なんだ...。どうしてそう思ったんだ?」




 しかし、ヴィオラは曖昧すぎる質問に首をひねる。




「あ、えー…だから…あ、あい、あいされない…など…と…だな。」




 しどろもどろになりながらも渋々アンドレアは自分の質問に補足した。''愛"など普段から使わない言葉であり、ましてや当事者が自分。いくら厳しく教育を受けている次代の王とはいえ、大人になりきれない少年には言い難く、声はどんどん小さく、耳はほんのり赤くなっていく。


 幸いにも、ヴィオラからは、赤くなった耳はまったく見えなかった。しかし、アンドレアの後ろに立っているイーサンからは真っ赤になった耳が丸見えだ。いつも一緒にいるときには、なかなか見られないアンドレアの反応がイーサンは面白くて仕方がない。しかし、ここで茶化せば、空気が壊れるのは目に見えている。なんとか肩は震えつつも、声を出さないように腹筋に力を入れることに集中した。



 ーーま、まずい、面白すぎるっ!しかし、笑ったら殿下に殺される!




 もはや、部屋の中は最初の緊張感など無くなってしまっていた。



皇子がどんどん残念になっている気がします。頑張ります。

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