3話 監視生活
よろしくお願いしますm(_ _)m
この世界の人々は必ず魔法を1つ持って生まれてくる。各個人が持つ魔法は全て違う魔法であり、この世にたったひとつしかないとされている。ヴィオラが住んでいるウィザリア王国では、ある規定を元に魔法を分類していた。
イーサン・ローレンという名の少年は、医療魔法に分類される魔法を持って生まれてきた。そのため、この国の重要人物である第一皇子アンドレア殿下の従者に選ばれ、常にそばにいることが義務付けられている。また特徴としては、この国では珍しい黒い髪に新緑の色の瞳を持っている。
ーー油断していた...。殿下の従者であるイーサンが殿下のそばにいることなんて分かっていたはずなのにっ!
今だって騎士や侍女に混ざって部屋の隅に立っている。じっと見ていると目が合ってしまい、軽くお辞儀をされてしまった。慌てて、こちらも礼を返すとそれに気づいたアンドレアがヴィオラに声をかける。
「思い出したか?」
「...はい、よく思い出しました。少し、混乱していたようです。」
ーー今回のループが始まってたった3日で選択を間違えてしまったからってやけになっていたのね。まさか、医療魔法が使える従者がいる殿下の前で、死のうとするなんて...。
アンドレアはヴィオラが落ち着いてきたのを確認し、話を進めようとする。
「貴女にはいろいろ聞きたいことがあるが...しかし、それは貴女の健康状態がわかってからだ。とりあえずオリバーの診察を受けてもらう。」
「分かりました。とりあえず、死にますね。」
「よし、それじゃあ早速って...は?」
その瞬間、この部屋にいる誰もが固まった。いや、この中で自分のことでいっぱいいっぱいになっている人間が1人だけ…。
自分の考えなしな行動で起きた失敗にイラついていたヴィオラは、今回の反省で頭の中をいっぱいにしていた。
そのため、つい反射的にアンドレアへ返事していたのだが、その内容が完全にアウトなことにヴィオラは気づけなかった。彼女にとって今回のループは、少しの手違いでまだ終わってはいないが、もう失敗が確定している、終わったループだ。そのこともあり、完全に気が抜けていた。
ーー校門にいる可愛い猫ちゃんについていくと中庭に出るのね〜。まぁ、殿下と出くわすことが分かって良かったってことにしましょう!失敗は成功の基!次に繰り返えさなければいいのよ!そうと決まれば、さっさと次に…
「ヴィオラ嬢?...今、自分が何を言ったのかしっかり分かっているのか?」
今まで聞いたことのない低い声がヴィオラの鼓膜を震わせ、思考を強制的に中止させる。
ゆっくりと声が聞こえた方向に顔を向けると表情が抜け落ちたとアンドレアと目があった。
ーーな、なんかすごく怒ってるんですけどぉ!?
「ヴィオラ嬢?」
「は、はいぃい?」
アンドレアはニッコリと聞こえてきそうなほど、なんとも胡散臭い笑顔を浮かべた。
「私と貴女は一刻も早く話し合うべきのようだな。
オリバー、すぐに診察をしてくれ。ヴィオラ嬢の侍女たちはヴィオラ嬢が変な動きをしないか片時も目を離すな。イーサンは魔法の準備を頼む。侍女の合図があり次第発動させてくれ。それまでは彼女から背を向けているように。」
アンドレアはそれぞれに適切な指示を出し。最後にもう一度私の顔を見て、微笑んだ。
「申し訳ないが非常事態だ。イーサンは男だが部屋に残らせてもらおう。」
そういうと、アンドレアは部屋にいたイーサンとオリバー以外の男性を連れて部屋から出て行ってしまった。しかし、この部屋の空気は息苦しさを感じるほど張り詰めている。
ーーこれは...。もしや監視されている...?
部屋にいる者達の視線はもれなくヴィオラに注がれている。ヴィオラとりあえず、今はオリバーの診察を受けることしか許されないのだと理解した。
「ひょっひょっひょっー。それでは診察を始めさせてもらいますよ〜。」
「あ、はい。よろしくお願いします。あの...テキトーでも構いませんので...。」