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1話 死に損ねました。

よろしくお願いします。

 よくある貴族の政略結婚だ。家柄があの人にちょうど良い立場だっただけで選ばれた婚約者、それが私、ヴィオラという少女だった。それでも、私は彼を好きになった。将来この国の頂点に立ち、国を導く彼の隣に居たかった。それなのにいつのまにかあの人の隣にはいつだってあの子がいた。


 だから過ちを犯してしまった。あの子が選ばれたことが、あの子に負けたことが、腹立たしくて悔しくて惨めで……私を選んでくれなかったことが悲しかったから。




 誘拐しようとしたのは何回だったろう。強姦に合わせようとしたのは何回だったかな。殺そうとしたのは…。


 自分でもわかってた。これは人としてやっちゃいけないことだってくらい。けれどどうしようもなかったんだもの。あの子がいなきゃ全部解決するんだと本気で思ってたんだから。…だから私の罪が彼にバレた時、絶望する以上にとても安心した。これでもう終わることができるって。




 罪を犯したら裁かれるべきで、私は死刑となるのは当たり前だった。死ぬことが確定しても、怖くはなかった。やっと終われるという安堵感でいっぱいだったから。

  処刑は寂しいものだった。家柄的にも公にはできないことだったんだろう。牢屋の中で毒を渡す役であろう男の騎士と記録係の男の2人だけで処刑は行われた。初めて会った2人に監視されながら、私は毒を飲んだ。




 そうしてわたしは17歳でこの一生を終える.......







  はずだった。






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






 ヴィオラが目を覚ますと、視界に入ったのは、いつも見慣れた天井ではなかった。違和感を感じながら、ゆっくりとベットから起き上がると、部屋の片隅に立っていた私の侍女であるヘレンと目が合う。部屋の片隅には、ヘレンの他にも私の侍女達と見たことない騎士が数人立っていた。




 ーーおかしい。いつもと景色が違う。

 いつだってループの最初は入学式の朝だったはずなのに、ここは私の部屋じゃない?




 ヘレンは起き上がった私に気づくと「医者を呼んでまいります。」と言って部屋から出て行ってしまった。その瞬間、他の侍女や騎士のこちらをみる眼光が鋭くなった気がする。しかし、そんなことよりも私には気になることがあった。




 ーーまさかループの始まり方が変わった??




 今まで何十回とループしてきてこんなことは初めてだった。部屋の中を見渡すと壁には怪我防止のポスター、大きな机に整頓されて置かれている包帯と医療器具が目に入る。ここは学校の医務室のようだ。




 ーー次のループは学校生活始まってからになったの?

 でも、私が選択ミスしたのは入学してから3日目だったような…。というかあんな序盤でミスるとはうっかりしてたなぁ。あそこで殿下に会っちゃいけないってことすっかり忘れてたわ...。あそこは、殿下とあの子が初めて会う場所で、あの場面にに居合わすとその後の私の好感度がだだ下がりなのに。




 その時コンコンと扉がなった。その音でヴィオラは思考を一旦中止し、一旦入室許可を出す。するとぞろぞろと10人前後の団体が入ってきた。




 ーーえっ医者多くない?




 なんて一瞬思ってしまったが、その中に自分の婚約者である殿下がいるのを見つけると納得した。どうやら入ってきた何人かは殿下の護衛のようだ。美しい金髪をもつ殿下と医師と思わしき格好をしたおじいさんがの2人だけがこちらに近づいてくる。




「目が覚めてよかった。私の隣にいるのは、王宮に所属している医師のオリバーだ。今、あなたの専属医師を呼ぶと時間がかかってしまうため、彼に貴女を診察させたい。イーサンの医療魔法は完璧だが、念のため医師に診察させておきたい。なにか問題があれば言ってほしい。」と殿下がヴィオラに声をかける。しかし、ヴィオラは不思議に思った。入学してから3日の間に怪我をした記憶はない。一体、ループの始まりはいつになったのだろう。




「それは、構いません。...ですが一体なんのために診察を受けるのでしょうか...。」




 そうだ、そもそもどうして自分は医務室に寝ていたのか、嫌な考えがヴィオラによぎる。殿下は私の返事にかすかに目を開いた。




「覚えていないのか?貴女はつい数刻前に中庭で自分の首を切ったんだぞ?」




 その言葉を聞いてから、ヴィオラはゆっくりと目を閉じる。どうやら当たってほしくない嫌な予感は的中してしまったようだった。




 ーーしまった!!!死に損ねたっ!!



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