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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 1 産廃ゴールドラッシュ  作者: 石渡正佳
ファイル1 産廃ゴールドラッシュ
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落下傘部隊

 五年前、犬咬市は隣接市町村との合併によって全国で四十六番目の中核市に昇格し、県から産廃行政を引き継ぐことになった。中核市とは地方自治法二百五十二条の二十二第一項に定める政令による指定を受けた人口二十万人以上(実際には二十五万人以上)の地方都市である。ちなみに政令市(政令指定都市)は同法二百五十二条による人口五十万人以上(実際には七十万人以上)の大都市(現在二十都市)である。

 犬咬市の東部環境事務所は定員たった十人の出先事務所だ。所長と技監兼次長、不法投棄を担当する監視班が四人、環境六法を担当する保全班が四人だ。中核市昇格と同時にこの小さな事務所が不法投棄対策の前線基地となった。中核市になるための合併協議の公約で前市長が辞任し、三月に市長選挙が行われたばかりだったので幹部人事が凍結され、監視班長は一か月間空席になっていた。新市長の承認を待った人事異動は四月下旬にずれこみ、人事異動が発表されたのはゴールデンウィークの直前だった。驚いたことに県からの出向職員が着任することになった。中核市になって俄かに増えた仕事を補うために市は県から多数のベテラン職員の出向を求めていた。県庁から各部局への出向者は落下傘部隊と呼ばれていた。

 実のところ不法投棄対策の現場は掃き溜めだった。とりわけ環境事務所の産廃担当への異動辞令は市庁内で密かに赤紙と揶揄されていた。戦死必至の前線送りという意味だ。県からの出向職員が本庁ではなくそんな危険極まりない現場事務所へ赴任するのは予想外だった。赤紙どころではなく流刑という言葉すら思い浮かんだ。県下最悪どころか全国最悪と言われた市東部の不法投棄は漁業と農業と観光の町にとって頭の痛い難題だった。これが原因で合併協議が頓挫しかけたくらいだ。解決困難な問題にあえて希少な人的資源を投入しないのは官と民とを問わない。成果も評価も上がらないとわかっている部署にエリートは行かないものだから、新班長への期待は猜疑と合い半ばしていた。

 「県庁では撤去の達人と呼ばれている人らしいよ」異動日の朝、東部環境事務所内は新班長のそんな噂でもちきりだった。国有海岸を不法占拠していた海の家200軒余に土地明渡訴訟を提起した立役者だというのだ。だけど県庁だって不法投棄問題には悩んでいるのに、生え抜きのエキスパートを派遣するだろうか。いや犬咬市の不法投棄問題が解決すれば県の不法投棄問題の半分が解決したようなものだ。だからこそ勝負をかけてすごいやつが選抜されたのかもしれない。だけどどんなエキスパートが来るにしたって夜ごと数百台も集まってくる違法ダンプをたった四人の監視班が迎え撃つなんてどっちみち無謀な話だ。対戦車ミサイルさえあれば歩兵小隊だって機甲師団を撃破できないことはないけれど、重装備の不法投棄軍団に対して監視班は丸腰も同然だった。

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