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アースフィア戦記  作者: 灰色人生
第1章 学園編
9/11

第8話 あれから5年後

新章です

 家族と別れてから早5年が経った。


 この5年間の事を色々と振り返る。



 ライモンドの爺ちゃんは、訓練などでは厳しかったが、それ以外では優しい好々爺であった。



 この5年間で、神技もある程度使いこなした。


 ある程度魔物の討伐や野盗の討伐で少しばかり実戦も積んだ。



 神技の腕前だけでは無く、剣やその他武芸一般も会得した。


 もちろん魔法もだ。


 それにちゃんと勉強もして文武両道を目指して居る。


 使徒は軍師でもある為だ。



 それよりも一番成長したのは、侍女のマリーかも知れない。



 僕はライモンド爺ちゃんの弟子として、扱われたがマリーは雑用扱い見たいな者だった。


 だが、マリーは文句は言わずに黙々と働き、周りの使用人達や上役の人達にも認められ、確固たる地位を築き上げた。


 マリーも19歳になり大人の女性へと成長した。


 顔のそばかすも、無くなり髪型もおさげからラフカールロングに変えてより大人っぽくなった。


 更に胸も大きくなりFカップはあるだろう。


 所作も洗練されてモテて居る。



 そんな事を考えながら、自室でマリーが淹れてくれた紅茶を飲む。


「うん。相変わらずマリーの淹れてくれた紅茶は美味しいよ」とこの5年間で成長し、美少年となったアレンは爽やかな笑顔をマリーに向ける。


 初対面の女性は皆この笑顔にやられて顔を赤くするが、マリーはすっかり慣れて平然として居る。



 それにアレンからしたらマリーは家族同然だ。



「はい。ありがとうございます。アレン様」慣れた様子で頭を下げるが、その動作一つとってもとても洗練されて居る。


「いよいよ明日は、帰郷だね。本当に今までありがとうマリー」


「何を仰いますかアレン様。当然の事をしたまでですよ」と笑顔で答えてくれる。



「うん。だけどちゃんとお礼を言いたいんだよ。ありがとう」


「わかりました。素直にその気持ちを受け取ります」


 そうやって楽しい時間を過ごす。


「さてと、そろそろ最後の訓練の時間かな?」と時計を見て時刻を確認する。



 時計は高価な魔道具だが、アレンの部屋には一台設置されて居る。


 それはアレンが訓練などを受けたりするのに、遅刻などをしない為だ。



「はい。もうそろそろ時間です」と言い用意していた、運動着を手渡して来る。



 ライモンドの方針で、自分の事は自分で。と言われたので大体の事は自分で出来る様になったアレンである。




 運動着に着替え終わると、マリーを伴だって訓練場に向かう。



 訓練場には、沢山の騎士や兵士が詰め掛けていた。


 普段なら彼らも訓練をして居る所だが、今回はアレンとライモンドの最後の訓練だとしり、その様子を見ようと周りに集まって居るのだ。



 既にライモンドは訓練場の真ん中に陣取り、仁王立ちで待っていた。



 マリーは訓練場の境目で待機して、アレンだけが訓練場に入って行く。



 すると目を閉じていたライモンドは、両目を開けて「来たか。アレンよ」と声をかけて来た。



「はい。お待たせしました。最後の訓練をお願いします」


「うむ。では模擬剣を取るがいい」


 壁に立てかけられて居る、幾つ物模擬剣の中から一つを選び再び訓練場の真ん中に向かう。



 ライモンドが剣を正眼に構える。


 それに倣ってアレンも同じく正眼に構える。


 ライモンドの剣は守りの剣であり、カウンター狙いだ。


 対してアレンは守りと攻めをバランス良く、組み合わせて剣術を得意とする。



 アレンの神技は高威力の攻撃よりだが、その分消耗も激しいので、攻撃に偏り過ぎない剣術を選択した。


 この最後の訓練は純粋な剣術勝負であり、魔法、神技共に使用禁止だ。



 アレンは初めは、神技も魔法と同じで精神力を消耗するので、魔法は覚えなくても良いのでは?とライモンドに聞いた事がある。


 実際使徒は自身の神技があるので、魔法は殆ど使わない。いやそもそも習得して無かったりする。



 だが、ライモンドは違う。


 ライモンドの神技は守りと攻め両方に使えるが、彼は魔法の腕も超一流だ。


 要は使い方であり、神技よりも威力に劣る魔法でも、使い方によれば神技よりも有用だと語った。



 それに手札は多い方が選択肢の幅が広まり、柔軟な思考回路が身に着く。と言われたのでアレンも一通りの魔法は使えるまでに成長した。




 既に勝負は始まり、空気が張り詰める。




 周りで見守って居る、騎士や兵士達も固唾を飲んで見守る。



 風が吹いて、両者の間に一枚の木の葉が飛んで来る。


 丁度両者の中間地点に落ちた瞬間、アレンが攻め込む。



 体格差で圧倒的に不利なアレンは、正面からの力勝負では、結果は火を見るよりも明らかである。



 なので、スピードを生かした撹乱戦法だ。


 フェイントを加えながらライモンドに近付く。


 右左と交互に横薙ぎの一撃を加え、それをライモンドは剣を少し動かすだけで、その場から一歩も動かずに防ぎきる。


 そして左右のアレンの攻撃が緩んだ、少しの隙を見抜き上段から、神速の如き振り下ろしをして来る。



 咄嗟に後ろに飛び剣の腹を、斜めにして力を受け流すが、数メートル先に飛ばされた。


 自分から飛びダメージを、比較的軽微に抑えたが、それでも両腕が若干痺れて居る。



 軽く腕を振って痺れを取る。


 まだ軽く痺れが残って居るが、動きに支障が出るほどでは無いので、再び仕掛ける。



 今度は正面から何の策もなく、突貫する。


 これには周囲の騎士や兵士も、思わず無謀だと言葉を漏らす。


 だが、対峙しているライモンドは片時も油断せず、アレンを見据える。



 ライモンドは上段の構えを取り、迎え討つつもりだ。



 そしてライモンドの射程に入った瞬間、神速の如き速度を持って振り下ろす。



 来るとわかって居ても、避けるのは困難な速さだ。



 だが、それは普通の体格の持ち主からすれば、だ。


 アレンはまだ10歳と言うこともあり、小さい。


 なのでライモンドの神速の剣が、体に届く前にスライディングの様に体制を傾けて、ライモンドの股の下を通過する。



 今までされたことの無い回避方法に、例えライモンドと言えど、虚を突かれ一瞬動きが止まる。


 アレンはそれを見逃さずに、身体の遠心力を使い模擬剣をライモンド目掛けて、横薙ぎに振るう。



 アレンの模擬剣が、ライモンドの左腰に命中する直前、ライモンドの模擬剣がアレンの模擬剣をギリギリのところで、防ぐために間に入って来る。



 だが、アレンは体を前に倒れさせ、無理矢理模擬剣の軌道を変えて、腰より下の左脹脛に見事に、命中させる。



 初めてライモンドに攻撃をまともに当てる事が、出来た瞬間である。



 ライモンドは左足をあげて、右足の踏ん張りだけで身体の向きを整えて、アレンの首元に模擬剣を添える。



「ま、参りました」とアレンは降参の声を出す。



 すると、それまで黙って静かに見守って居た、周りの騎士や兵士が歓声を上げて「よくやったな!」「凄いぞ!将軍に剣を当てるとは!?」とアレンに賞賛の嵐だ。



 ライモンドが片手を上げると、騒ぎがピタリと止む。


「アレン。見事だった。よく己の事を理解した動きであった。流石の儂も最後のアレには肝を冷やしたぞ?長年の経験と勘で咄嗟に剣を出せたが、お主は儂の更に上を行き、見事に一太刀入れてみせた。王立学園に言っても毎日欠かさず鍛錬をちゃんとするのだぞ?」


 先程の厳しい表情から、ふっと顔の力を抜き、慈愛に満ちた表情で告げる。


 試合が終わったので、何時もの好々爺然とした自然体に戻る。



「はい!ちゃんと休まず毎日鍛錬します。ありがとうございました」


「うむ。では、汗もかいた事だし、湯船に浸かりに行こうではないかアレン」



「はい。行きましょう」


 ライモンドの影響で、すっかりアレンもお風呂好きになった。



 前世では、それ程風呂好きでは無かったが、今世では大好きになった。



「さて、お前達!何時そこで突っ立ってるつもりじゃ!そろそろ自分らの仕事に戻らぬか!」と何時迄も、持ち場に戻らずライモンドとアレンの成り行きを見ていた騎士や、兵士達をライモンドは一喝する。



 すると蜘蛛の子散らす如く、周りに居た騎士や兵士達が、其々の持ち場に駆け足で戻って行った。



「さてと。ではアレン。行くとするかの」


「はい」


 ライモンドとアレンは連れ立って、浴場がある場所へ向かう。


 その後をマリーも黙って付いて行った。



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