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アースフィア戦記  作者: 灰色人生
序章
5/11

第5話 王都観光

 -翌朝-


 カーテンの隙間から、日差しが差し込みその明るさで目が覚める。


 目の前にミラノバの顔があり、驚いて飛び起様とするが、ミラノバにガッチリとホールドされており、身動きが出来なくなって居た。



 横を見るとメリアーゼの姿もある事から、このキングサイズの特大ベッドに、昨日の夜に三人で川の字に寝た様だ。


 

「ミラ姉。離して」


「う、う〜ん。アレン君。美味しいよう」


「僕は食べ物じゃないよ」


 何とかミラノバの腕の中から、抜け出すと伸びをする。


 抱き着かれて寝て居たせいか、所々凝っている。



  十分に柔軟をしてコリをほぐしたら、洗面台に行き顔を洗う。



 洗面台で顔を洗って居ると、寝室の方から音が聞こえる。


 どうやら起きたようだ。



「あれ?アレン君?何処に居るのアレンく〜ん!」


 ミラノバの呼ぶ声が聞こえる。



「此処に居るよ!」


 返事を返すと「洗面台?私も今から行くね」

 と言い直ぐに洗面台に来た。


「ミラ姉。寝癖がついてるよ」と寝癖を指摘する。


「えっ?どこどこ?」と洗面台に取り付けてある鏡で確認をする。



「あっ!本当だ。いやぁ〜恥ずかしい姿を見せちゃったね。お嫁に行けないよ。アレン君貰ってね」と冗談めかして言うが、目が笑ってない様に感じる。


「ミラ姉。巫女は結婚とか大丈夫なの?」


「うっ!そ、それは………。で、でも前例は無いけど作るものよね!」と何やら変な方向に向かって決意を固めようとした時「駄目よミラ。例えミラでもアレンは渡さないわよ」といつの間にか起きたのか、メリアーゼがミラノバの後ろに立って居た。


「あっ!メリ姉さんおはよう」


「母上おはようございます」


「はい。二人ともおはよう」


 挨拶を交わす。


「アレンにまだまだ私の側に居てもらうわよ」


「いや、メリ姉さん。別に今すぐ結婚とか言って無いから。流石に5歳児に手を出したりしないよ?」


「そうかしら?時々貴女の目が怪しいのよね?」


「な、何のことかな?冗談はやめてよメリ姉さん」


 図星を突かれたのか、少しミラノバの挙動が怪しくなる。


 不利な状況を察したのか、ミラノバが話の切り替えに入る。



「そ、それよりも!今日は待ちに待った観光の日よ!楽しみだわね!」


 少し無理のある様に思えたが、メリアーゼはその話に乗る。


「そうね。今日は何処を回ろうかしら?久々の王都だもね。新しい物が沢山増えてるわよね」



 王都か。前世の大都会を知る僕からしたら、それほど大きな都市には見えないが、この世界には魔法があり、魔道具と呼ばれる魔法が使えない人でも擬似的に使える道具もある。

 それになりより前の世界よりも人種は豊富である。



 先ず違う世界なので比べる方が可笑しいか。



 それにこのセルベリン王国は大国の一つでもあり、内海とも面しており、東大陸との交易も盛んであり、まさにアースフィア大陸中から物が集まる。と言っても過言では無い。


 なのでそんな国の、王都となれば珍しい物や貴重な生き物が沢山集まるだろう。




 その後、着替えて朝食を取る。


 因みに着替えはメリアーゼが侍女に頼んで持って来て貰った。


 父のアルフシュタインは未だに放ったらかしだ。



「さて、そろそろ行きましょうか?」


 メリアーゼの問いかけにミラノバが頷き「そうね。馬車を用意して居るはずだから、其処に先ずは向かいましょう」


 部屋の外には我がアポストロス男爵家の騎士3名と、神殿騎士8名が待機して居た。


「奥様。閣下は既に馬車前でお待ちです」と告げて来た。


「そう。わかったわ。でも伝えといて、私とアレンは、ミラノバと一緒に神殿が用意してくれた馬車に乗るわ。貴方は一人で私達が乗って来た馬車に乗る様に伝えて」と冷たい態度で告げる。



 普段の温厚でおっとりした母メリアーゼの態度しか、知らない目の前の騎士は若干メリアーゼの態度に怯えながら「はっ!了解しました!」と騎士の礼をして足早に去って行く。


 残った騎士2人も、普段よりも背筋を伸ばしてシャッキとしてる様に心なしかそう見える。



 メリアーゼがチラリと神殿騎士の方に一瞥をくれると「あら?もしかしてリカルド?」と神殿騎士達の先頭に立ち、他の神殿騎士よりも立派な鎧を来た隊長格に話しかける。



 リカルドと呼ばれた神殿騎士は金髪碧眼の壮年の男性で、身長も180後半ぐらいの立派な騎士だ。



「そうです。お久しぶりですねメリアーゼ様」


「ええ、久し振りね。その格好はもしかして」


「はい。一昨年から三番隊の隊長を務めさせて貰ってます」


「やっぱり!おめでとうリカルド」


 母メリアーゼはとても嬉しいそうだ。


 だが、どう言った関係なのだろうか?


「母上。リカルドさんとはどの様な関係なのですか?」


「うん?リカルドとはね。私が聖女時代の護衛の一人よ。真面目で融通は利かなかったけど、その分信頼できる人だったわ」


「お褒めに預かり光栄です。アレン様ですね。お話は神殿長からお伺いして居ます。私の事はリカルドとお呼び下さい。本日は我々三番隊があなた方の安全を確保致しますので、どうぞご安心している王都を観光して下さい」


「これは御丁寧にありがとうございます。後で母上の聖女時代の時の話を聞かせて下さい」


「ええ、喜んで」


 握手をして約束を取り付ける。



「はぁ。それにしても懐かしいわね。さて、何時迄も此処に居ても仕方がないから、馬車に行きましょうか」


「はい」


「うん」


 騎士2人神殿騎士8人を擁して馬車が止めてある、裏門の方へ向かう。



 正門だと、参拝客と鉢合わせするからだ。




 裏門に向かうと、既に馬車二台と我が家の騎士や、神殿騎士達に侍女のみんなが待って居た。



 メリアーゼの前にアルフシュタインがやって来る。


 頰が若干赤くなって居るのは、多分昨日叩かれたからだろう。


 メリアーゼの前に跪きメリアーゼが好きな花ネモフィラの花束を差し出した。



「昨日はすまなかった。どうか許しておくれ。この通りだ」そう言って深く頭を下げる。



 それを冷たく見据えるメリアーゼ。



 場の緊張感は高まる。



 何時迄もこのままは、流石に疲れるので父に助け船を出してあげるとするか。



 メリアーゼの近くに行き声をかける「母上。父上と喧嘩をして居るの?許してあげないの?」と目をウルウルさせて言う。



「う〜ん。そうね。今回はアレンに免じて許してあげるとするわ」と言い。花束を受け取る。



 アルフシュタインはアレンに「アレン。ありがとう。助かったよ」と言い頭を撫でる。



「ですが、今日は別の馬車ですからね」とまだ完全には許してない様だ。



 頭を垂れて悲しいメロディーが流れて来そうな程、ガックリとしてアルフシュタインは別の馬車に乗って行く。



 この何とも言えない雰囲気に周りの者達は、どうして良いのか困惑して居る。



 それを見て取ったミラノバは「はい、はい。みんな。これから楽しい王都観光だよ!楽しんで行こう!」と声を出す。



 すると皆キビキビと動き出す。



 僕達も馬車に乗り、ミラノバのオススメスポットに向かう。




「まだ朝早い時間なのに、人通りは多いね」


「そうね。王都は商会がとても沢山あるからね。一人でも多くのお客を呼び込む為だったり、商品の取引だったりと忙しいからね」


「懐かしいわね。この光景」


 暫く進むと一軒の店の前に止まった。


「此処には珍しく鉱石を使ったアクセサリーが置いてあるのよ。全部一点物で同じ物が一つとして無いの」


 馬車を降りて店に並べられて居る、商品を見ると確かに同じ物が一つとして無い。


 店員達を見ると少し困惑して居る。


 貴族や神官関係者が来るのは、余程珍しい事なのだろう。


 貴族は基本的に貴金属店などに行くからな。


 それに神官もアクセサリーなどは、普段は身に付けたりしないだろうな。



 奥から店の主人が姿を見せる。


「おお!これは巫女様。お久しぶりでございます。この度の来店店を代表して御礼申し上げます」と頭を下げる。



「久し振りね。今日は私の姉同然のー」


「ーアポストロス男爵夫人のメリアーゼ・カメリア・フォン・アポストロスです。此方は私の息子のアレンです。よろしく頼みます」と紹介する。



 父のアルフシュタインも降りて来て自己紹介する。



「おお、そうですか。男爵様ご夫婦の来店ありがとうございます」と今にも手揉みをしそうな勢いで挨拶を返して来た。



 今日1日で周る場所は多いので、手短に済ませ気に入った商品を2、3点購入すると店を後にする。


 勿論アルフシュタインが代金を払う。



 其処から2、3店舗ミラノバのオススメの店を周る。



「メリ姉さん。そろそろお昼時だから昼食を食べない?」


 ミラノバの提案にメリアーゼとアレンは頷く。


「ええ、そうしましょうか。それで何を食べるの?」


「それはね。最近東大陸南方からやって来た料理でカリーって名前の料理で、ライスの上にルーと呼ばれる幾つ物スパイスを配合した物を掛けて食べるそうよ。で、このカリーがね味がとても豊富でね。少しスパイスの分量を変えるだけで、全く違う味付けになるそうなの。私もまだ行ったことが無くてとても楽しみだわ」


 カリー?もしかしてカレーかな?


 英語だとカリーだから間違いない筈だ。



「ねえミラ姉。そのカリーは誰が広めたの?」


「うん?そうねぇ〜。人伝てに聞いた話だから詳しい事はわからないけど、東大陸の南方にある国の冒険者が、広めたって事ぐらいしかわからないわ。東大陸南方は小国家群が乱立して居た筈だからどの国かはわからないわ。御免なさいね」


「ううん。ありがとう」


 やっぱり詳しい話はわからないか。


 それに此処は西大陸だから東大陸と距離的にも離れてるからな。


 一応北端は繋がって居るって、聞くけど文化も聞いた話だと全然違うらしいからね。




「じゃあ店に行きましょうか?」


「ええ、楽しみだわ」


 数分で店に着くと、行列が出来て居た。


「うわぁ〜凄い並んでるわね。暫く掛かりそうね」


「そうだね。でも待つのも楽しみの一つと思って待とうよ」


 基本的にアポストロス男爵家は、貴族の権威を無闇矢鱈に振りかざす事は無い。



 なので大人しく待ち並ぶ。


 店の店員が貴族と巫女を外で待たせるのは、外聞が悪いのでと言うので申し訳なく思いながら中に案内される。



「何だか、悪いわね」


「それは仕方がないよメリアーゼ。我々は貴族で彼らは平民だからね。私達が気にしなくても彼らは嫌でも気にするからね」


 身分社会だから仕方がない。と諦めてメニューを見る。


「それにしても沢山あるわね。同じ品でも辛さが違ったりするのね」


 それぞれ食べたいのを選ぶ。


「では、メリアーゼはチキンカリーで、ミラノバはグリーンカリーで、アレンはポークカリーで、私はシーフードカリーにしようかな」



 シーフードはセルベリン王国の王都でも入手は難しい。



 海から王都迄は一週間程掛かる為だ。



 その分他のカリーよりも割高だ。




 運ばれて来たカリーをそれぞれ食べ終わると、次の場所へと早速向かう。






 その後も色々周りちゃんと甘味物も食した。



「ふぅ〜。今日は楽しかったわ。ありがとうミラ」


「ううん、私も楽しかったよ、メリ姉さん」



 ミラノバとメリアーゼは楽しそうにキャキャ言ってる。





 日が傾いて来たので、闇の神殿に戻る。


「明日は認定の儀だから、今日はゆっくり寝て休んでねアレン君」


「うん。わかった」



 その後は夕食を取り、今日はちゃんと充てがわれた部屋で就寝した。









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