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アースフィア戦記  作者: 灰色人生
序章
4/11

第4話 お風呂場でのひと時

 脱衣所で服を脱ぎ、タオル片手に風呂場の扉を開けると、中から湯気が出て来る。


 思って居た以上に中は広かった。


「うわぁー!広ーい!」


 アレンは年相応の子供の様にはしゃぎ回る。


「ふふ。アレン他に人が居なくてもあまり騒いでは駄目よ」



「はーい。御免なさい」


「語尾は伸ばさない」


「はい」


「うん。良ろしい」


 それにしても、母は相変わらず豊満な胸を持って居るな。


 あんなに大きいのに、垂れてなく形も整って居るのは凄いな。



 侍女の他の巨乳の人達も、形が整って垂れてないな。


 そう言えば、前世よりこの世界は美形が多いよなぁ。


 街を歩けば普通にモデル並みに、スタイル抜群の美形や美人が街を歩いてるもんな。



 まあ、中には予想通りの平凡な容姿や、醜悪な人も居るけど、全体的に見ればこちらの方が容姿は上だな。



 さて、風呂に入る前にかけ湯をして、汚れを落として置かないと駄目だな。



「アレン。一人で大丈夫?」


 何時も侍女に世話して貰って居るから、心配なのだろう。


 そう言えば、前世でも身体が弱く子供の頃は、介護して貰ってたから一人で入り始めたのは、中学に上がってからだったな。



「うん。大丈夫。ちゃんと一人で洗えるよ」


「そうなの?偉いわね。でも困ったら直ぐに言うのよ?」


「わかった」


 和気藹々としながら、身体を洗ってから湯船に浸かる。



「ふぅ〜。気持ちい〜」


「ふふ。まるで年寄り見たいねアレン」


「そうかな?みんなこうなるって」


「はいはい。そうね。気持ち良いものね」



 ゆっくりと浸かっていると、脱衣所が騒がしくなる。


「あら?どうやら他の神官の方達が来た様ね。アレンこっちに居なさい」


「うん。そうする」


 メリアーゼの横に移動した時にちょうど、脱衣所の扉が開き神官が複数入って来る。



「はぁ〜!疲れた〜」


「うん。それにしても見た?今日総大司教様が来てたわよ?」


「えっ!?本当!何しにいらしたのかしら?抜き打ち検査?」


「抜き打ち検査って?何を検査するのよ?」


「えっと、勤務態度とか?」


「いやいや、それだけの為に総大司教様が御身ずから来るかしら?逆に目立つから普通は部下の方達では?」


「それもそうね。そう言えば夕方頃に来た貴族の方々の対応かしら?」


「そうなの?」


「ええ、その後に王城に総大司教様が向かったから。何か用事があって国王陛下に呼ばれたのかしら?」


「さぁ?わからないわ。あら?誰か先に入って居るわよ?」


 此処に来て、三人の女神官は先に誰かが来て居ることに気付く。



「えっと、どうも」


 取り敢えず一人が挨拶をする。


「初めましてかしら?今回此方にお邪魔する事になりました。アルフシュタイン・ヨハネス・フォン・アポストロス男爵の妻のメリアーゼ・カメリア・フォン・アポストロスです。此方は息子のー」


「ーアレン・リヒト・フォン・アポストロスです」



「どうぞよろしくお願いしまし」


 二人揃って貴族の礼をする。


 すると神官の三人は揃って吃驚する。


 だが、気持ちを持ち直して神官の挨拶を返した。


「ふふ。そんなに固くならなくても大丈夫ですよ。それに此処はお風呂場ですから無礼講と行きませんか?こんな所でまで肩肘張って居たら、疲れますしね」と優しくメリアーゼは三人の緊張を解す。


「そうですね」


「わかりました」


「助かります」


 と三人は少しだけ肩の力を抜いた。


 そして、メリアーゼを見て一人の神官が気付く。


「ん?メリアーゼ?それに黒髪?………あ、あのつかぬ事をお聞きしますが、もしや聖女メリアーゼ様ですか?」


「「えっ!?」


 一人の神官の発言に、他の二人は揃って驚きの声を上げる。


 そしてメリアーゼの顔を凝視する。


「ふふふ。“元,,聖女ですよ。今はただのこの子の母親ですから」



「わかりました。ではメリアーゼ様と呼ばせて頂きます」


「わかりました。それで良いわ」


「ところで如何してメリアーゼ様が此処に?」


「あら?私が来たら駄目だったかしら?」


「い、いえ!そのようなつもりでは!」と必死に弁明し始める神官に「ふふふ。御免なさい。冗談よ」と微笑み悪戯が成功したと喜ぶ。


「じょ、冗談ですか。焦りましたよ」


 冗談と聞き安堵の息を漏らす。


「此処に来た理由かしら?それは貴族的な事だから言えないわ。御免なさいね」


「いえいえ!とんでも御座いません!お気になさらずに!」


 三人の態度からメリアーゼは随分慕われて居るようだ。いや、慕うと言うよりも憧れの方が強いか。



「さて、貴女達も何時迄も其処に居たら身体が冷えますよ。女性に冷えは天敵ですからね。身体を流したらお風呂に入りなさい」


「「「はい!」」」


 嬉しそうに三人は頷き、早速身体を流して風呂に浸かる。



「「「ふぅ〜極楽〜」」」


 三人は揃って声を出す。



 その後も、他の神官が入って来てひと騒動あったが、のんびりと風呂を満喫した後、部屋に戻る。


 部屋にはアルフシュタインの姿は無く、書き置きがしてあった。


 どうやらお風呂場に向かった様ですれ違いの様だ。




 部屋に戻って来てから15分ほどで、父アルフシュタインは戻って来た。



 メリアーゼは少し横になり眠って居るのを見て、アルフシュタインはアレンを手招きする。


「どうしたの?父上?」


 コホンと一回咳払いした後、男らしいキリッとした顔をして真剣な顔をした、アルフシュタインが父としてでは無く、男として問いかけて来た。



「時にアレンよ。お前は風呂場に行ったのだよな?」


 何を当たり前の事を?と思ったが相手は真剣な表情で問い掛けて来て居るのだ、茶化さずに真面目に答えるべきだろう。


「はい。ちゃんと入って来ましたが?」


「いやな。男湯に他の神官の姿はあったが、お前の姿が見えないのでもしや?と思ったのだが?居たか?」


 ああ!成る程。先にお風呂場に行くと言って行ったのに、来て見たら自分の姿が見えなくて、何処かに行ったのか心配しての問い掛けか。


 まだ小さい僕が何処かに勝手に行ったりして、周りに迷惑を掛けて居ないかなどが、気になったのだろう。



 そんな父親の鏡の様な父アルフシュタインに尊敬の念を抱く。



「ええ、ちゃんと母上と一緒に居ましたよ」



 それを聞き安心した様な顔をするアルフシュタイン


「そうか。ちゃんと居たのか。………ん?今母上と言わなかったか?」


「はい。言いましたよ。母上と共に女湯に入って居りました」



 すると、アルフシュタインの顔が驚愕に染まる。


「な、何だと!?女湯だと!羨まー怪しからんぞアレンよ。男なら男湯に入らねば。そんな羨ーーコホン。そんな淫らな事をするとはそれでもアポストロス男爵家の子か!」


 羨ましそうな顔をしたアルフシュタインが詰め寄る。


 先程まで抱いていた、理想の父親像が音を立てて崩れて行く。



「それで、他に神官の方は居たのかな?」


 急に小声になり問い掛けて来たので、残念な気持ちになりながら、顔には出さずに答える。


「はい。居ましたよ」


 声には落胆を隠せてないが、興奮気味のアルフシュタインには気付かれてない様だ。



「そうか。……それでどうだった?」


「どうとは?」


「ほらあれだ。身体のラインなどだよ」


 どんどん父に対して幻滅して行く。


 だが、まあ男なら当たり前か。と達観した気持ちになり答える。


「ラインと言われましても。そうですね。母上を基準にすると、皆様控え目でしたね。ですが、中には母上に比肩する程の物をお持ちの方もいらっしゃいました」


「ほう?メリアーゼに比肩するとは、それほど豊満な胸を持つ神官が居たのかな?」


 アルフシュタインが、妄想に耽るのを尻目に少し距離を取る。


 何故なら母メリアーゼが起き上がりアルフシュタインの後ろに腕を組み陣取って居たからだ。



「アレンよ?何故距離を取る?男同士もう少し女体の神秘について語ろうではないか。メリアーゼも寝て居る事だしな。やはり若くて綺麗どころが多いのか?此処までの道中女神官の方とは出会って居ないのでな。まあ、私もまだ27歳とまだまだ、若いからな。側室の一人でもと考える時はある」と其処まで語った時に後ろから末恐ろしい声が聞こえて来る。



「ねぇ?貴女?私は中古品って事なのかしら?私もまだ24歳と若いつもりだったけど?年増だと言いたいの?」


 この世界は成人が15歳であり、結婚が早い傾向にあった。


 理由の一つとして、魔物と呼ばれる凶悪な存在が多数いるからだ。



 王都周辺は殆ど狩り尽くされているが、それでも絶対ではない。


 そしてそんな魔物を狩る職業が、存在する。


 それは冒険者と呼ばれる荒くれ者達で、何でも屋の様な存在だ。



 そしてそんな冒険者をサポートする組織が、冒険者相互扶助組織の冒険者組合と呼ばれる組織で、大陸中の至る所に存在する。


 中でも東大陸の方が活発だ。



 東大陸には荒野と呼ばれる場所が存在する。


 昔は複数の中小国家が、乱立して戦乱を繰り広げて来た土地だが、十数年前に魔物の大規模があり滅び去った。


 現在では旧国の人々を中心に、少数のレジスタンスが故郷を取り戻そうと活動して居る。


 殆どの冒険者は荒野から、魔物が出てこない様に間引きと監視に留めて下手に刺激しない様にして居る。





 ■



 アルフシュタインの顔は一気に蒼白になる。



 まるで死人の様だ。



 メリアーゼはアレンに近付いて来る。


 ヤバい!殺される!と思ったが、優しく頭に手を置き「アレン。馬鹿な話に付き合わなくて良いのよ。それと暫く部屋から出てミラの部屋に行ってなさい。ミラの部屋は此処から出て右の突き当たりの部屋よ。アルフとは少し大事なOHANASHIがあるからね。終わったら呼びに行くわ」


「はい。わかりました!」


 後ろから父のすがる様な視線が突き刺さるが、全て無視した部屋を後にした。



 10メートル離れた所で、絶叫が聞こえて来たが無視して足早にミラの部屋に向かう。






 コンコンと扉をノックする。



「はい?誰方(どなた)かしら?」



「アレンです。入っても良いですか?」



「良いわよ〜」


 来訪者がアレンとわかると、途端にミラノバの口調が崩れる。



「あら?一人なの?どうしたの?来てくれるのは勿論大歓迎でいつでも来て良いけど?」



「母上が暫く此方に居なさいって」


 それで状況をある程度把握したのか、ミラノバが成る程と頷く。


「成る程ね。メリ姉さんは普段は温厚だから怒ると凄く怖いのよね。あの怒った状況のメリ姉さんを宥められるのは総大司教様だけよ。それに総大司教様の事をお爺ちゃん。って呼べるのもメリ姉さんだけだしね」



「そうなんだ」相槌を打ちながらミラノバの部屋を見回す。


「あっ!アレン君も女の人の部屋に興味を持つ年頃なの?」


「う〜ん?特にそれ程でも無いかな。普段は巫女のミラ姉の部屋だから興味が湧いたのかな?」


「まあ!嬉しい事言ってくれるわね!大好きよアレン君!」


 そう言うつもりで言ったわけでは、無いけど良い方にミラノバの頭の中で変換された様だ。



「ううっ。苦しいよ」


「あら?御免なさい。またきつく抱き締めてしまったわ」


 そう言って解放される。


「さて、何をする?此処には特に何も置いて無いけど?」


 言われて部屋の中を見回すが、ぬいぐるみが結構多いな。


 後は書物の類が幅広いジャンル取り揃えてある。


「これで特に何も置いて無いの?」


「ええ、趣味部屋は別だけど、此処はそんなに置いて無いわ」


「その趣味部屋って?」


「う〜ん。そうねぇ。いろんな動植物を集めるのが趣味なの。後は珍しく物とかね。だから信者達が各地から持ち寄って来た物を貰って、それを部屋に飾ったりしてるの。だからそれ専用の大きな部屋を神殿内に貰ったのよ。ほら、私ってあまり神殿内から出れないから自分で現地に行く事が出来ないじゃない?だからいつの間にか外の世界に強い興味を持ってね。それから各地から色々な物を取り寄せたり、持って来て貰うのよ」


「そうなんだ。巫女って大変なんだね」


「まあね。でも楽しいわよ?それにアレン君と使徒として、世間に発表されたら自由な時間が無くなると思うわよ?だから使徒として発表されるまでの残り10年間で、各地を回って見るのも良いかも。あれ?でも国の上層部と闇の神殿の上層部はこの事を知って居るから、気軽に国外に出る事は出来ないかな?国内も怪しいかも」


 ミラノバの言葉に驚く。


「ええっ!?そうなの?僕生まれてから自分の住んで居る街から出たのも、これが初めてで、自分の領地内も全然知らないのに。それに住んで屋敷から殆ど出てないから、あまり街の方にも詳しくないのに………」


 まさか、そうだとは思わなかったが、冷静に考えて見ると、前世でも要人はそう気軽に出歩けなかった様に思える。




「そうね。でも私は時々お忍びで遊んでるわ。仲の良い神官に身代わりになって貰ってね」


「そうなの?」


「ええ、何回か見つかったりしたから、その度に試行錯誤を繰り返して脱走ーお忍びをしてるわ」


「意外だな。でも、気持ちはわかる気がする。僕も閉じ込められたりすると、気が滅入るから如何にかして外に出ようとするもん」


「ならば、私が極意を教えて差し上げましょう」少し胸を張りそう告げるミラノバに、此方も冗談めかして神妙な顔を作り頭を下げる。


「お願いします」



 師弟ごっこをしながら、極意を教わり趣味部屋も見せて貰った。


 異国の物や、この国原産の希少な物も見せて貰ったりと、充実した時間を過ごして居ると、扉がノックされて開けてみるとメリアーゼが迎えに来て居た。



「御免なさいねミラ。アレンの面倒をありがとう」


「良いのよメリ姉さん。とても楽しかったわ。それにもう直ぐ夕食の時間ね。一緒に食べない?」


「良いわね。此処で食べましょう」


 ポンと手を叩いて名案の様にメリアーゼは告げる。


「母上。父上はお呼びしないで良いのですか?」と疑問に思って居る事を伝えると「ああ……暫く一人にさせてあげましょう」と恐ろしく冷たい声で答えた。


 これ以上踏み込むのは危険!と判断する。


 ミラノバが外を通りかかった神官に、食事を此方に持ってくる様に伝える。



 その後夕食が運ばれて来て、楽しく食事をする。




 食事の後は食後の紅茶を飲んでゆっくりする。


 まだ5歳児なのでうっつら、うっつらし始める。


「ミラ。今日は此処に泊まって行っても良いかしら?」


「ええ、大丈夫よメリ姉さん」


「ありがとう。お願いするわね」


 その後の記憶はない。


 いつの間にか寝て居た様だ。



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