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アースフィア戦記  作者: 灰色人生
序章
3/11

第3話 闇の巫女

 案内されたのは応接室には、神殿長のジェンソン枢機卿と闇の巫女のミラノバが待ち構えて居た。


 最初に口を開いたのは、闇の巫女ミラノバ・シビル・メーディウムだ。


 彼女は若く16歳になったばかりだ。



「この子が使徒ね。初めて私と同じ黒髪黒眼の子を見たわ」と嬉しそうにミラノバは告げる。



 実際黒髪と黒眼単独では、そこまで珍しくはないが、二つ揃うことは滅多にない。



「ミラノバ。挨拶が先ですよ」


 そのままにしておくと、アレンの頭を撫でくりまわしそうな勢いであったので、この闇の神殿の神殿長である。


 ジェンソン・アテマ・ララノイラ枢機卿が止める。


 彼は51歳と枢機卿の中では若い方だ。


 灰色の髪を丁寧に襟元で切り揃え、翠色の瞳は優しそうな暖かみがある。



「おっと、御免なさいね。嬉しかったものだから。コホン。私は闇の巫女ミラノバ・シビル・メーディウムよ。宜しくね」


「初めまして。アルフシュタインが子、アレン・リヒト・フォン・アポストロスです。此方こそよろしくお願いします」と丁寧な挨拶をする。



 その後に父と母も軽く自己紹介をする。


 やはり母メリアーゼとミラノバは知り合いであるようだ。


 母は今年で24歳なので、少し歳の離れた姉の様に慕っている様だ。


 聖女・聖人と巫女の違いは、神託を得られるかどうかだ。


 聖女と聖人は神殿により、選ばれる基準は違うが、凡そはその人物の人柄、信仰心、魔法の力量の三点と言われて居る。



「さて、早速で悪いのだが聖痕を見せて貰っても良いだろうか?」



 ジェンソン枢機卿に言われてアレンは、着ていた服を脱ぐ。



「この左胸にあります」

 アレンが自身の左胸を指差す。


 三者ジェンソン枢機卿、巫女ミラノバ、エルマンテ総大司教の視線が左胸に集中する。



 其処には確かに、黒色の聖痕が刻まれて居た。



「確かにこれは聖痕だね」


 エルマンテ総大司教は頷くと、ジェンソン枢機卿が「ならば、後は認定の儀ですね。準備は整って居りますので、早速認定の儀を始めますか?国王陛下も焦れていらっしゃるでしょうし?」と質問する。



「では、早速と行きたいが。アレン君はまだ幼く、長旅で疲れて居るだろう。それに認定の儀が終わればしばらくは忙しい日々になるだろうから、この王都を観光する時間も無いだろうね。アレン君はまだ、この王都に来たことは無く初めて訪れるのだろう?」


 エルマンテ総大司教の問いに父が答える。


「はい。アレンはこの度初めて王都に訪れました」


「なら、認定の儀は明後日にして。明日はゆっくり王都を観光でもすると良い。護衛の手が足りなければ神殿騎士を貸し出すとしよう」



「畏まりました。そのように手配します。宿は神殿の一室を貸し出しましょう。此処なら下手な勢力も手が出せませんしね。それに神殿騎士は付けておいた方が、何かと良いでしょう。手練れの者を選りすぐんで起きます」



「では、そのようにしましょう」


 アポストロス一家を置いて、トントン拍子に話が進んで行く。




「街に観光に行くなら、私も一緒に出掛けても良いかしら?」


 其処に闇の巫女であるミラノバも自身の要望を出す。


「うむ。そうだな。巫女は気軽に外に出る事は出来ないからな。良いだろう行ってくると良い」


「本当!?ジェンソン枢機卿!後から駄目って言っても行くからね!」


 興奮気味にジェンソン枢機卿に問い掛けるミラノバ。


 完全に此方は蚊帳の外だ。



「良かったわねアレン。明日はゆっくり観光でもしましょう」と母のメリアーゼは呑気にそんな事を言って居る。


 対して父のアルフシュタインは頭を抱えてたが、エルマンテ総大司教が父の肩に手を置き「なに、国王陛下には儂が取り成して置くので気にせずとも良い」と声を掛けて居た。



「さて、既に貴殿らが王都に訪れた事は、とっくに国王陛下の耳に入っておるであろう。なので儂はこれから王城に行ってくるとするかね。その間の事はジェンソン枢機卿に一任するよ」


「はい。お任せ下さい。総大司教様」


「行ってらっしゃい。総大司教様」


「ありがとうございます。総大司教様」


「ありがとうお爺ちゃん」


「ありがとうございます」


 五人の言葉を受けて、エルマンテ総大司教は供回りを連れて王城に向かう。



「さて、部屋の案内はミラノバに頼むよ。私はまだ少し、しなければならない雑務が残って居るのでね。頼んだよミラノバ」


「わかりました。神殿長」


 ジェンソン枢機卿は応接室から出る前に、何事かミラノバに耳打ちしてから、雑務の処理の為に神殿長室へと向かう。



「さて、貴方方の部屋へご案内します」


「ミラ。前みたいな口調で良いわよ?」


「良かった。この口調疲れるのよね。メリ姉さんじゃあ案内するわね」


「ええ、お願いね」


 二人は先に応接室から出て行く。


「はは、何だか置いてけぼりをくらった気分だね」とアルフシュタインは少し疲れ気味の様だ。


 何時もはもっと毅然とした態度であるが、いきなり大物である総大司教や闇の巫女などと会って混乱したのだろう。



「さて、私達も行くとするか」


「はい。父上」


 二人の後を追い応接室を出る。





 二人は道中も楽しそうに、会話をしながら歩いて居た。



「メリ姉さん。新しいケーキ屋さんが、この前メリ姉さんが王都に居た時に、よく行って居た通りに出来たわよ。明日は是非行きましょう」


「そうなの?なら行くべきね。そう言えば王都は久々だから、新しいお洋服も買わなくちゃね」



 初めて母メリアーゼが、はしゃいで居るところを見たな。



 二人の楽しそうな横顔を、見ながらアレンはそう思う。



「ふぅ。明日は出費が嵩みそうだね。アレンも遠慮しないで好きな物を買って良いんだよ?」


 二人の様子を苦笑しながら、父のアルフシュタインはアレンにそう声をかける。


「うん。わかった」


「ふふ。それにしても、いつあんな言葉遣いを覚えたんだい?」


「父上達が話して居る会話でだよ?」


 流石に前世の事は、言えないので誤魔化す。


「そうなのかい?それは凄いね。流石は私の子だ」と嬉しそうに言う。



「ちょっと!其処は私“達,,でしょ?貴方?」


 どうやらメリアーゼは話を聞いて居た様だ。



「これはすまないメリアーゼ。そうだね。私達の子だね」


「それでよろしい。それで明日は好きな物を買っても良いのね?」


「うっ。そこも聞いて居たんだね。ああ、良いよ。好きな物を買いなさい」


 メリアーゼの笑顔に負けて降参するアルフシュタイン。


「ふふ。ありがとう。愛してるわ貴方」



「僕も愛してるよ。メリアーゼ」



 メリアーゼはとても上機嫌なのに対して、アルフシュタインは少し草臥れて居る。



「仲が良いんだねメリ姉さん達は」


 少し羨ましそうに告げるミラノバ。


「ええ、とっても仲良しよ」


「なら、アレン君は私と仲良くしようね」とアレンを抱き締める。


「あっ!もう、仕方ないわね。今回だけよ」


「ありがとう。メリ姉さん」


「うう。ミラノバさん苦しいよ」


「あらごめんない。それとミラノバじゃ無くて、ミラ姉で良いわよ」


「あら良いわね。そうしなさいアレン」



「うん。わかった。ミラ姉」


 そう言うとミラノバは嬉しそうにした。


「本当の弟が出来たみたい!」と言って更にきつく抱き締められた。




「ミラ!アレンの首が絞まってますよ」


 メリアーゼが、アレンが苦しんで居るのに気付き、ミラノバを叱責する。


「あっ!ごめん!大丈夫!」


 すぐ腕を話してアレンを解放する。



「ゴホ、ゴホ。うん、大丈夫だけど次からは気を付けてね」


「そうね。気をつけるわ。ごめんなさいね」

 頭を手を置き撫でながら謝罪するミラノバ。



 それにしても結構胸あるなぁ〜。とアレンは別の事を考えて居た。


「さて、部屋はもう直ぐ其処よ」


 言われた通りに1分も、しないうちに今回泊まる部屋に到着する。



 部屋の中は神殿内で、ある為に質素ではあるが、それでも気品が感じられる落ち着いた雰囲気の部屋だ。



「此処が今回みんなが泊まる部屋よ。食事は食堂で取るのだけど、今回はあまり周りに知られたくない案件だから、すまないけど部屋で取ってもらうわ」予め枢機卿にはその様に言われている。



「知られたくないって?何でなのミラ?使徒の誕生は喜ばしい事だと思うのだけど?」とメリアーゼが疑問を口にする。


 確かに現在セルベリン王国には、使徒が一人しか居ない為に、新しい使徒の誕生は吉報だろう。


 だが、アレンはまだ幼く神技(使徒が使う能力の事)はまだ発現して居ない。


 その時に他国の間者に狙われたら危険だと判断した為だ。


「それはねメリアーゼ。アレンはまだ幼い事もあるが、多分国王陛下も直ぐには発表しないだろう。まだ神技も発現して無くてどんな神技を使えるかはわからない。

 でもね、それよりも他国に対する切り札になると考えているはずだ。

 切り札は一度使えば切り札足り得ない。なので此処ぞと言うタイミングで切るはずだ。

 それにまだアレンには普通の子供としての人生を少しでも歩んで欲しいしね」最初はこの国の貴族としての見解を述べたアルフシュタインだが、最後は子を思う父親として述べた。



「そうね。その通りだわ貴方。この子には平凡でも幸せな人生を歩んだ欲しかったわ」とメリアーゼは、実感のこもった感じで告げる。



 過去メリアーゼも聖女として普通の生活とは異なる生活を送って居た。


 メリアーゼは何処かの貴族家では無く、元はただの平民の娘であったが、類稀な魔法の素質があり、王都の王立学術院に特待生で入学し、其処で魔法の才能を開花させ後に、闇の神殿の聖女に認定された。



 勿論辛い事ばかりでは無かったが、自由が少なく窮屈な生活を送って居たので不満はやはりあった。


 その為か聖女とは違い、生まれた時から巫女としての人生を義務付けされた、ミラノバには同情心もあったが、今では本当の妹の様に思っている。


 メリアーゼには兄が三人いるが、下には誰も居ない末っ子として生まれたので、嬉しかったのだ。



 現在も時々家族の元へと、里帰りするほどに家族仲は良好だ。



「さて、今日はみんな長旅で疲れたでしょう?もう直ぐ夕飯の時間だからそれまでゆっくりしといてね。じゃあね」と言い気を遣ったのかミラノバはそそくさと部屋から出て行く。



「あら?どうやら気を使わせた見たいね」とメリアーゼは別に居ても良かったのに。と思ったがまあ、良いかと判断する。



「そうだね。それに疲れたのは本当だから少し横になるよ」と本当に疲れた顔でアルフシュタインは上着を脱いでベッドに横になる。



「なら、アレン私達はお風呂に先に入ってましょうか?此処のお風呂は大きいわよ」


「うん!入る!」


 アレンは何を隠そう大の風呂好きである。




 着替えとタオルを持ち、メリアーゼと連れ立って風呂に向かう。


 元々此処で生活して居ただけに、迷いなくメリアーゼはお風呂場に到着する。



「此処が、お風呂よ」


「わぁ!大きいね」


 入口を見ただけでも、その大きさがわかるものだ。



 此処は間違いなく大きいに違いない。


 メリアーゼとアレンは揃って女湯に入る。




 中にはまだ、誰も居らずメリアーゼとアレンの貸切状態であった。



 因みにお付きの騎士や侍女達も、別の部屋に宿泊させて貰っているが、神殿内は安全なので休息命じて居る。


 その為に何時もお付きの侍女達も居ない。


 まあ、家族水入らずで久し振りにゆっくりしたかったのもある。


 元々平民出で自分の事は、自分で全てやって居たメリアーゼは慣れたとは言えど、時々窮屈に感じる時も確かにあったのは事実だ。



 なので、今日は久し振りに羽目を外せる。と内心喜んで居た。



 普段はほんわかしているが、こう見えて好奇心旺盛で、活発な性格である。




「さて、じゃあ入りましょうかアレン」


「うん!」


 早く入りたくて仕方がないアレンに、微笑みながら服を脱ぎ風呂に足を踏み入れる。




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