01.ワカメ少女、召喚される
俺の名前は朽名 翼。普通の男子高校生。ド田舎に住む両親は自営業をしているが、俺は高校進学を機に東京に出てきた為、親戚が貸してくれた都内の小さな一軒家で一人暮らしをしている。
今日は日曜日。正直ずっとゴロゴロして過ごしたいが、腹が減った。料理を自分でしないといけないのも一人暮らしの面倒なところだ。俺はキッチンに立ち、取り敢えず味噌汁でも作ろうと、鍋に水を入れ火にかけた。適当に油揚げと乾燥ワカメを入れようとしたその時、ワカメがピカッと強烈な光を放った。
「うわっ!」
目を開くとそこには…………輝くようなアッシュブロンドの髪に、美しい青色の瞳。深緑のパーカーを着て、チェックのミニスカートを穿いていて……そして同じくらいの年の…………女の子!?
「ちょっ、誰だよお前!」
「私はサラ・シェイラ・ロイド。あなたが召喚したんでしょ?」
「は? 俺は味噌汁作ってただけだ」
「そんなの知らないわよ。で、私は名乗ったけど、そっちは?」
「俺は……朽名 翼だ」
流されてしまったが……俺は精霊を召喚しちゃったのか?
「召喚した以上、責任持って私を…………ってそれワカメじゃない! 何に使うの?」
「いやだから味噌汁作ってるんだって……」
すると彼女は俺の手から乾燥ワカメを奪い、
「ぜーんぶ入れちゃえ!」
袋に残ってたワカメをドバッと鍋にぶち込んだ。おいおい、それは入れすぎだろ……。
「何で全部入れるんだよ……」
「二人前ならこのくらい入れないと!」
あ、食べていくのか…………。入れてしまったものは仕方ない。これまた適当に味噌と出汁を入れて完成。
「うん、ワカメ以外は壊滅的に不味いぞ」
すると彼女はポケットからメモ帳を取り、「朝 約30グラム」と書いた。
「何メモってんだ?」
「ワカメの摂取量だけど……何か?」
「いや、ツッコミ所しか無いんだけど……」
「私、『一日にワカメを100グラム以上摂らないと死ぬ』から」
何だその謎仕様は……。
「で、翼。召喚したんだから、あなたには私の生命を維持する義務がある。そんな訳で、ここに住ませて貰うわ」
同い年くらいの女の子と一緒に住むだと!? この性格は何とも言えないが、彼女はとてもカワイイのだ。俺には断る理由など無かった。この時初めて一人暮らしの良さが分かったかもしれない。
「えーと、何て呼べば良いんだ?」
「サラでいいぞ」
下の名前で呼び合えるだと!? 俺は発狂しそうになった。
「気のせいかな……サラ、髪伸びた?」
味噌汁飲む前よりも前髪が3cmくらい伸びて目にかかっている。
「あ……私、ワカメ食べるとその分だけ髪の毛伸びるのよ。食べたワカメの重さ(g)×0.1=伸びる髪長さ(cm)ね」
更なる謎過ぎる体質に俺は唖然とした。 サラはハサミでチョキチョキと髪を切りながら、
「まあ取り敢えず、毎食ワカメで頼むわ。茹でるだけでも良いから」
「さっきのでウチのワカメ尽きたんだけど……」
「あ、そこは安心して。私の住んでた所から無料で供給されるからさ。多分そろそろ……」
すると背後からドサッという音がした。振り向くとそこには段ボール。中には……ワカメ1キロ…………。
「それ、毎週日曜日に届くはずだから、ワカメ供給は安泰ね」
そんなこんなで、俺とサラの奇妙な二人暮らしが始まったのだ。