閑話 中華人民共和国のスパイ
真世歴3年に中国共産党は魔法についての情報を大使館員を使って日本から引き出そうとしたようだが日本では魔素生命との繋がりによって嘘をつけない事を利用して何重にもチェックが入る様になっていて以前の様には情報を引き出せない。
チェックに正直に答えないと話が進まなくなるし、正直に答えるとスパイだとばれてしまう。
魔法関係の情報は特に厳しくチェックが入り、テーマパークでも魔法を利用した遊具に関しては安全のためと称して利用前には毎回チェックが入る。
テーマパークでは最初の頃に他人の魔法を故意に邪魔をして楽しむ輩がいたので安全のため禁止するのではなく安全のためルールを決めて邪魔を互いに楽しむようにした。
その他にも安全のため色々なルールが出来て途中からは政府が介入してきて全国的に標準化されていて現在では毎回チェックすることが法的に義務付けられている。
2年前の魔素乱流期終了により魔素生命の情報が公開されて隠された様々な犯罪が明らかになった。
スパイ組織の構成員は摘発前に国外逃亡して、日本人の協力者で摘発されていないのは荒事には使えない奴ばかりでしかも日本の当局に監視されていた。
スパイ網が壊滅状態の中で少人数で出来ることは限られていた。
得意の権謀術数も直接会って話すと嘘がばれるから中々通じなくなっていた。
賄賂は受け取るような人はいなくなった、偽名を使えばばれて怪しまれる、ハニートラップとかも虚言を吐かずに続けるのはのは困難だ。
借金漬けにして何かを探ろうにも子飼いの犯罪者は国外に逃亡して嵌める為に使える手下もいない。
そもそもギャンブルに嵌めるにも魔法が使える様になって以降はイカサマに魔法を使われるからギャンブルそのものが下火だ。
身内が難病とかの人も魔法治療が普及し始めてからは減少の一途で借金の肩代わりとかも出来ない。
以前なら強引に言い張ればお人よしの日本人が折れてくれたような事でも最近では「神様情報を調べればわかる事なのに何を言ってるの?」とか「その件は魔素生命の情報を解析した結果、事実と異なることが判明しました」とか言ってくる。
そして冗談と思われている間は良いが嘘を強引に言い張っていると相手にされなくなるし、無知で信じ込んでいる場合は哀れみの目で懇切丁寧に魔素生命の情報を説明し始める。
日本人側は事実に基づいて話していて同じ魔素生命に繋がっていれば嘘を話していないことは誰にでもわかるし、本人も魔素生命の情報を調べれば分かるから自らの無知を認めるしかない。
それでも言い張るようならやはり相手にされなくなるから……人から直接情報を探るのは困難だ。
日本では未だにインターネットが解放されているので魔法について検索するとある大学の名前が近年頻繁に現れるようになっていた。
中国が内戦状態になる前即ちスパイ網が壊滅する前であればもっと早くに掴んでいたであろう情報だ。
探りを入れ始めた頃にアメリカの研究者が魔法で核爆発を起こして死亡し、次いでこの大学の学生が魔法による一時的な核物質の無害化の方法を公表した。
調査を本格化したが魔法による核爆発が起きて以降は大学の警備状況が一変していて潜入ができないため調査活動は進まない。
学生は気付いていないようだが学生に部外者が近づくと何処からともなく公安らしき人間が出てきて尋問している。
大使館の人間として正式に探りを入れようとしても大学長どまりで魔法に関する事は一言も漏らさない。
分かったのは魔法学部を設立する予定であることだけだ、そんなことはHPを見れば分かる。
何を遣っているか探りを入れても何も得るものはなかった。
今の状況では大学に直接乗り込んでも警備が厳しく得るものも少ないため、怪しまれない様に大学外で大学生に1年近く少しづつ探りを入れて、公表されている事と照らし合わせた結果、神尾 修と言う名の大学生が浮かび上がった。
彼は飛ぶ魔法を最初に実用化した研究Gの一員で個人的な実績として表面に出ているのは飛ぶ魔法に関する事だけだ。
飛ぶ魔法は日本では新しい遊びとして認知され始めてはいるが人類が飛ぶ手段を既に持っているためか魔法の発明者は世間的にはそれ程注目されてはいない、長時間は飛べないから遊具とか踊りの技術等で利用されているだけだ。
勿論、軍事的にはかなり有用なので軍関係者には注目されている。
もしこれが中国であれば飛ぶ魔法は公表されることなく、彼はどこかの施設で強制的に働く事になっていたであろう。
彼の父親は培養肉量産技術の開発に成功した企業の幹部の一人である。
そして魔法による一時的な核物質の無害化の方法を公表した小城 勇一は飛ぶ魔法を最初に実用化した研究Gの一員だ。
そして最近日本で公表された画期的な体質改善の魔法である整形質魔法にも彼は関わっているらしい。
この魔法は祖国では魔素生命の情報から解析できていない魔法の一つだ。
これらは偶然ではありえない、少なくとも彼の周りに魔法に関する重要な情報源があるはずだ。
祖国のためには神尾 修を殺してでもこの情報源を突き止めねばならない。
彼は神尾 修の拉致を実行しようとして逆に日本側に拉致されて薬で眠らされ続けた。
彼の部下である拉致の未遂犯数名も同じ様に日本側に拉致されて薬で眠らされ続けた。
殺すと魔素生命経由で情報が漏れて厄介なことになるからだ。
結局、中華人民共和国が崩壊するまでの1年以上の間、彼らが起こされることは無かった。
彼が目覚めて5年後の真世歴10年、彼の望み通り彼は部下とともにシナ大陸に放逐された。
彼には妻子が有って魔素生命では情報が得られないため彼の妻子が生きていることは確実だ。
後日、彼は旧満州地区に有る独立勢力の幹部となっている事が確認された。