03 丸くてカワイイヤツが急にきた!!
日がもう少しで昇る頃、暗い洗面所には、顔を洗っているギンの兄、キノの姿があった。
そして、乾きたてのフワフワのタオルを手に取り、ゆっくりと自分の顔を拭っていた・・・その動作は、極端に普通の人の2倍ほど、遅かった、それは、彼が朝早く起きて少し寝ぼけていたから、その行動が遅いと思いきや、1時間っ経った今でも、その動作は遅かった
台所に立ち、冷蔵庫から取ったあらゆる食材をまな板の上に、一つの狂いもなく横一列に斜度が無く並べられていた。
例えば、タマゴは縦に2列づつ合計6つ、何のづれもなく正方形に並べられている。
ベーコンは、12枚よれよれの箇所が無かったが、それでも、キノは、納得がいかないのか、ベーコンの右端と左端を両手で、持ち、引っ張ている・・・・
その光景を見て、いつもの様にあくびをしているのは、ギンとキノの父・サトシである。
「そんなに、キッチリしても、お腹の中に入れば何も変わらんぞ。」
「・・・・・・」
その声を聞いても直、キノはベーコンの歪みを矯正するのに精を出している。
「朝っぱらから、そんなに気遣わんでも・・・何でも一生懸命にする事は、大事なんだがな・・・そんなに一杯気遣ってたら・・・精神がもたないぞ・・・(武道の精神は、無い癖に)」とボソッとキノに聞こえるか聞こえないかの声で呟いた・・・
料理が終えると、キノは、ご飯を小盛に盛り、リビングルームにある、テーブルの上へと置いた。
そして、椅子に座ると、二人は、同時に手を合わせて、先にキノの父のサトシから箸をつけた。
最初にキノが開けておいた部屋の窓から風が吹きカーテンが揺れた・・・
食事を終えるとスグに器用な手でスポンジに洗剤をつけ、皿を手早く洗った・・・
そして、役1名分のおかずにラップを掛けて電子レンジの中へと入れた・・・二階の部屋のベットの上では、布団を抱きかかえながら、少々のいびきをかきながらギンが眠っている。
その気持ちの良いギンの顔をよそに、キノとサトシは家を出た、まだ、早朝の5時前の事だ・・・
――—3時間後—――
思いもよらない相手から起こされるハメになるとは、今スグに知る事になる!!
「う”げ”!!」
「な”ん”だよ”!?」
いきなりお腹の方から激痛が走った!!
見て見ると、そこには、丸い変なヤツがお腹の上に乗っかていた!!
「誰だよテメー!?」
「むきゅるる・・・」
「は・・・?」
「ぷっきゅ~~~・・・」
「・・・・・・」
「びゅきゅるる・・・」
「お前日本語喋れないのか・・・?」
「しゃべれるお~。」
「じゃあ最初から喋れや!!」
「よ!!日本人!!今からポクと冒険に行くぬらよ!!」
「は!?・・・・・・・・何が!?」
「行くぬら!!行くぬら!!ポクと冒険いくぬら~~!!」
「だから、何がだよ!!って何で俺がお前みたいな得体の知れない奴と冒険に行くんだよ!!」
「そ・れ・は・、前に何か壊したの記憶に無いぬらか!?」
「前に・・何か、壊した・・・?はっ!?何が?」
「とぼけてもむらだおー」
「とぼけるっつたって、覚えてねーもん。」
「ふにゃら、クリスタルを君は壊したんらおー!!」
「クリスタル!?」
「そうらおー、クリスタル壊したおー!!」
「ん~~覚えてねーな。」
「また、とばけてる~~」
「だから知らねーって!?いつだよソレ!?」
「10年前らおー!!」
「知らねーわ!!10年前って俺3才の頃だろ!!覚えてる訳ねーだろ!!」
「そうのらかー、それじゃあ今からポクと冒険にいくのらおー」
「は!?誰が行くか!!バカか!!お前は!!」
「でも、クリスタル壊したおー。」
「3歳の頃だろ!!」
「そうらおー!!責任取らないといけないのらおー!!」
「3歳の頃の事なんだから、それぐらい許せや!!」
「許さないおー!!自己責任のらおー」
「物心もついてねーわ!!」
「いくのらおー!!」
「行かねーわ!!」
「じゃあ、どうするのら?君がクリスタル壊したせいで、ゲーゲー達がこの街に現れたのらおー。」
「ゲーゲー?ゲーゲーって誰だよ。」
「あの毛むくじゃらで球体に足がはえてる馬鹿らおー。」
「ああ昨日会ったアイツか!!お前、『毛むくじゃらの馬鹿』って言うなや!!アイツもアイツで結構悩んでるんだぞ!!」
「馬鹿は馬鹿らおー。」
「カワイイけど、口悪いなお前。」
「だから、冒険行くぬらおー!!早くクリスタルの力で封印しないと、あのバカが増えて大変な事になるおー」
「だから馬鹿って言うなって、でも、何で今更・・・・?10年前にクリスタルが壊れたんだろ!!」
「ネモ様に日本人に伝えて来いって言われた、けど、チョット眠ろうと思って起きたら、もう10年経ってたおー」
「眠り過ぎだろ!!オメー!!」
「だから早く行くのらおー!!ポク、ネモ様に怒られるのらおー」
「知らねーわ!!お前の問題だろ!!」
「ポク怒られるおーひっくひっく(泣)」
「おいおい泣くなよ!!」
「じゃあ行くのらおー(泣)」
「分かったよ!!行くよ!!でも、10年前来てたら俺3才だったぞ」
「その時は君じゃなくてサトシに頼みにきたのらおー!!」
「サトシ?俺のオヤジの事か?」
「そうらおー、サトシは、〇世界で魔族の力をクリスタルに封印した〇戦士の一人のらおー!!」
「えっ!?〇戦士?」
「そうらおー〇戦士が〇世界を魔族から救ったのらおー!!」
「オヤジがオメーのいる世界を救った!?」
「そうらおー、サトシがだおー!!」
「じゃあ、俺のオヤジに頼めばいいんじゃねーか!?」
「でも、10年経ったから、君に責任を負わせるのらおー!!」
「マジ、理不尽極まりないな、お前・・・・・ヨシ!!さっさと、その世界に行って速攻で魔族封印してくるか!?」
「そんな上手くいかないのらおー!!甘く見るなのらおー!!」
「この俺を誰だと思ってるんだよ!!天下の喧嘩王・壱野花ギン様だぞ!!余裕!!余裕!!・・・・ってその世界にどうやって行けばいいんだよ?」
「クリスタルのある場所に異空間の狭間が出来てるから、そこからのらおー」
「そこどこだよ!!」
「君がよく知ってる所らおー!!」