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10 加護

 マリアさんはミラーさんに言われたそうです。

 タクトさんの身体にはすでに神が宿っている。

《キーシステム》ではない、この世界を創造した本物の神が。

 にわかには信じられないことだったが、違和感はあった。

 タクトくんが絶対に言わないこと、しないことをする彼に。

 私達がタクトさんと距離を置いていたのも、それが原因でした。


 ナビちゃんにも同じことを言われ、それは確信となった。

 そして、マリアさんは私、お姉ちゃん、シルフィーにそのことを話した。

 私達は最初は信じられなかったけど、私を含めて全員なにか違和感があったようで受け入れていった。


 そして、神の目的。

 ナビちゃんが語ったそれを聞いて、私は怒りを覚えた。


 神の目的はただの暇つぶし。


 タクトさんの身体を使って邪神を退治するという勇者物語をしようとしている。

 ナビちゃんは教えてくれた。

 神に全てを任せておけば、邪神が滅び、平和は得られるだろう。

 ほぼ間違いなく。


 だが、それは仮初の平和にすぎない。


 平和な世界に飽きた神は世界を滅ぼそうとした。

 それを止めたのは皮肉なことに邪神キーシステムだった。

 世界を面白く作り替え、退屈しないように戦争やいざこざを起こした。


 それでも退屈になってきた神のために、異世界――つまりはタクトさんのいた世界から多くの人をこの世界に召喚した。

 だが、物語というものは、見ているだけではつまらなかったそうだ。


 そこで神は思った。一番面白そうな人間の身体を乗っ取り、そのものを演じてみようと。

 マリアさんは言った。


「神は本当の意味での役を演じる物語ロールプレイングゲームをしようとしたのよ」


 そして、邪神を滅ぼし、平和な世界になったらどうなるか?

 他のプレイヤーの身体を乗っ取るか?

 否、邪神がいなくなれば、世界のバランスは大きく崩れ、神が乗っ取るに値する受け皿が現れることはなくなる。

 そうすれば、神は間違いなく世界を滅ぼす。


 そして、もう一度作ってみる。

 実際に、そのように何度もこの世界は滅びては生まれ、生まれては滅びてきた。


 ならば、神を滅ぼすしかない。

 タクトさんの身体の中にいるうちは、神はタクトさんと同じ能力しか使えない。

 タクトさんを殺せば、邪神はタクトさんごと神を転生させてくれる。


 そう約束してくれた。本当のタクトさんの魂は邪神が保護している。

 保護しているというけれど、私は人質じゃないかと思っている。


 全てを話した後、私達はタクトさんを救うためにタクトさんの身体を殺すことにした。

 この世界の神と一緒に。


 世界を救うとか、神を殺すとか、そんなことのためじゃない。

 例え、転生された存在だとしても、タクトさんともう一度会いたい。

 本当のタクトさんともう一度。



 そして――




   ※※※



 私達が見たのは悪夢でした。

 いえ、覚悟はしていたはずですが……


 タクトさんの身体が変わっていきます。

 オリハルコンのジャージが鎧へと姿を変え、顔立ちが中性的に変わり、髪の色が金色へと変わり、そして背中から白い翼が現れました。


 神。


 そう、その姿は神の姿でした。


 真実の神。

 創造神。

 破戒神。


 そして、私の大切な人を奪った人。


「ゴッドブレス!」

「ダークソード!」

「サンダーストーム!」


 シルフィー、シファ、ナビちゃん、三人の上級魔法、そして、マリアさんの銃声が同時に鳴り響きました。

 ですが――


 その魔法が神に届くことはありませんでした。


 と同時に、身体が重くなります。


「な……何を」

「ぐっ」

「動けない……」


 全員がその場で倒れこみます。

 身体が重くなって動けない。


「辛いか? だが、それが主たちの真の姿。余はただ与えたものを返してもらっただけにすぎない」

「与えて……いたもの?」


 マリアさんが呟く。

 神は笑い、答えた。


「スキル、魔法、そしてそもそも魔物と戦うための神の加護。それらを全て奪ったにすぎない」


 神は語ります。


「主たちは気付かなかったのか? 世界で最もひ弱である人間がどうして魔物相手に対等に戦えたのか? それを主たち自身の力と勘違いしていたのか? それがそもそも勘違いだ。余が作り出した世界を破壊するための魔物、それに対抗するために与えたのが神の加護でありスキルであり、魔法なのだ。余はそれをなかったことにしただけだ」


 神の言うことが本当だとしたら、私達の現在の状態はスキルが何もない状態。

 いえ、それよりはるかに弱い状態ということです。


 これでは勝ち目なんて……

 銃声が鳴り響きます。


「異世界の武器、銃か。だが、それも加護さえなければ余の皮膚一枚傷つけることはできない」


 そして、神は降り立ち――

 カードを何枚も取り出し、武器を全て具現化した。

 その中から、スキル修得用に買っていた剣や槍をとっては捨てます。


「それにしても、タクトには困ったものだ。神といえば剣か槍だというのに、ろくなものがない」


 そういい、神は――魔法を唱えました。


「アイスニードル」


 そう言って現れた一本の氷の槍。

 それを手に、神はそれを手に私に近付いてきました。


「まずは、邪神の巫女、貴様からあの世に送ってやろう」


――タクトさん……ごめんなさい、私はもう……


 槍が私に向かって放たれようとした――その時でした。


 影が飛び出してきました。


――タクトさん!?


 いえ、違います。

 ジャージこそタクトさんのジャージですが、私を助けたのは想像すらしていなかった人物でした。


「骸骨将軍っ!?」


 骸骨将軍が氷の槍を受け止めていました。

 いつも持っている剣ではなく、先ほど神が具現化した破邪の斧で。


「なるほど、余が作った魔物なら、確かにスキル剥奪は通用しない。だが、たかが骸骨兵の分際で神を倒すなど不可能にきまっておるだろ」


 神はそういって力を込めるが――骸骨将軍の持つ破邪の斧は押されることはありません。

 むしろ、骸骨将軍のほうが力が優っているように感じます。


「神を倒すのが不可能だ?」


 その声に――骸骨将軍から発せられたその声に私の胸がドキンと跳ね上がります。

 うそ……そんな……


「不可能といわれることをやってこそのチートってもんじゃないか?」


 その言葉とともに、骸骨将軍の骨から肉が生まれ、毛が生え――そして――


「待たせたな、ミーナ!」

「タクトさん!」


 間違いありません。タクトさんです。でも、なんで骸骨将軍がタクトさんに?


「ミーナ、話は後だ! おい、糞邪神! 早くしろ!」


 突如、私の身体の身体が一気に軽くなりました。


「なぜだ、なぜ貴様がここにいるっ! スメラギ・タクトォォォっ!」


 神の怒気が溢れ、氷の槍が大きく変形してきます。


「お前を倒すために決まってるだろ! っていうか、俺のセーブデータ使って俺TUEEEしてるんじゃないよ、三流神がっ!」


 タクトさんの斧が、氷の槍を打ち砕きました。

いよいよ真主人公復活です。

骸骨将軍=タクト説が早いうちに感想欄に出ていて、やばいなーとか思っていましたが、気付いてた人多かったかな。


ちなみに、神からの加護が全くない状態でミーナ達はかなり苦しんでいましたが、同シリーズのノーチート村長の主人公はその状態がデフォです。

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