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9 正体

 咄嗟にファイヤーボールを避けると、次に矢の嵐が俺にせまってきた。


「ぐっ サンダーストーム!」


 ミスリルの杖を出す暇もないが、それでも俺はサンダーストームを放った。

 威力は多少落ちるが、矢が金属製だったおかげで雷が自動的にすべての矢を捉えて撃ち落とす。

 そして、俺は大きく跳躍し、


「具現化っ!」


 ロックコンドルを具現化、それの足首を掴んで空を飛ぶ。

 とりあえず、今は矢の届かない空へ行って状況を整理しないといけない。

 だが、状況を整理する時間すら俺には与えられなかった。


「ダークソード!」


 声が聞こえた。シファの魔法だ。

 まずい、今のオリハルコンのジャージで防げるのか!?

 オリハルコンのジャージは魔力が篭っている状態だとすべての魔法を防ぐが、今の状態だと半減できる程度。

 ダークソードをくらえば30分は動けなくなる。

 俺は闇の剣が飛んでくるのを見て、咄嗟に身をよじろうとするが――


 闇の剣は俺ではなくロックコンドルを狙っていたようだ。動きをとめ、そのまま落下しそうになるところでロックコンドルをカード化。俺は大地に落下するも受け身をとったため痛みはない。

 円陣から抜け出せたが、ロックコンドルは1時間は動けないだろう。

 とりあえず、彼らとは距離をとらなければと走る。


 その間も、俺はどうなっているのか考える。

 現状を考える。


 俺を殺そうとしているのは誰か。

 一番は、ナビだ。

 彼女は俺を討ち滅ぼすと明言した。

 だが、ナビがなぜ?

 彼女の様子は確かにおかしかった。

 だが、それでも俺を殺そうとするとは思えない。

 そして、何故魔族が全員俺を殺すという命令に即座に従ったのか?

 魔王というのは魔族の王ではあるが、全員を強制命令できる立場ではない。

 考えられるのは全員への強制洗脳。

 だが、洗脳でないとしたら、逆に納得できる。

 ミーナ、サーシャ、マリア、シルフィー、兄貴。

 ナビと同じく俺を裏切ることのないはずの人達がこの場にいない。

 

「覚悟ぉぉぉぉぉぉっ!」


 そういって突っ込んできたのは、先ほどまで普通に話していたはずのエゴールだ。

 だが、その目には明らかに殺意がある。


「ライト!」


 光の初級魔法、ライト。

 光の球が空に浮かぶ。

 そして、瞼を閉じた。


「サンダーポイント!」


 その光の球にサンダーポイントを放つことで、巨大な閃光となって爆発した。


「ぐあっ!” 目がぁぁぁっ!」


 よし、これで暫く時間が稼げる。

 そう思った時だった。


 銃声が鳴り響いた。

 右足に激痛が走る。

 

「ぐあっ」


 この銃声――まさか。


「ライトが上がった瞬間、目を閉じて正解だったわ」

「かつてのタクトお兄ちゃんの十八番でしたからね」 

 

 そこにあったのは悪夢だった。


 マリアとシルフィー、二人がこっちに銃と杖を向けていた。


「散々悩んだんだけどね、私達が戦わないといけないのよ」

「……シルフィーも同感です。飼い犬の不始末は飼い主がするべきです」


 刹那、大地に炎が灯った。

 この反応、まさか!


 俺はとっさに大きく飛ぶ。


 ぐあっ


 俺の全身を大きく包み込んだ。直後、すぐにファイヤーフィールドの範囲外に出る。

 逃げるのが遅かったら、オリハルコンのジャージによる魔法耐性がなければ危なかった。


「逃げられたか」

「ぐっ、兄貴……無詠唱魔法ってそんなの聞いてないぞ」

「言ってなかった。これもGMならではの秘密能力だからな」

「なんでだ、なんでみんな俺を攻撃するんだ」


 後方では魔族の視力が回復し、前方ではシルフィーとマリア、兄貴が。

 ならば――横に逃げたら――


 そう思ったら――左右の大地が膨らんだ。

 いや、大地にカモフラージュしていた布がめくれ上がったようだ。

 そして、そこから出てきたのは、今までで一番辛いものだった。


 左方からサーシャが、右方からミーナが剣を構えて俺に切りかかってきた。


「覚悟!」

「…………!」


 サーシャが叫び、ミーナが無言で俺に切りかかってきた。


「ぐっ、ダイヤモンドダスト」


 このままでは殺されると判断し、俺は威力を抑えて広範囲の氷魔法を放つ。

 その氷の刃がミーナとサーシャへと襲い掛かり、彼女達の顔に傷を作った。

 その間に俺はミーナがきた右の方向に逃げようとするも、右足に激痛が走る。

 さっきマリアに撃たれていたんだ。


 回復魔法を使い治療しようとするも、クールタイムのせいで魔法が発動しない。

 一体、なんでこうなった。


 なんでなんでなんでなんでなんでなんで――


 一体――なんで――






















 



 

 あぁ、そうか……それでか。

 俺の正体を……余の正体をこやつらは見抜いたのか。

 せっかく記憶を失い、心を複製したというのに、奴らは気付いたのか。


 つまらない結末だ。


 愚かな奴らだ。


「全く……余に任せておけば、邪神を討ち滅ぼし、世界を平和に導けたものを……下らぬ」


 余は、そう言うと――世界を変えた。

 全てを滅ぼすために。

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