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15 広場

 先ほど空を通り過ぎたときにも見たが、あれだけの骨人形がいたはずの中央広場が、今は静まり返っていた。

 学園内が荒らされた様子はないが、あちこちに焦げ跡が残っていた。俺が放ったファイヤーフィールドによるものだろう。


「着地してくれ。静かに頼むぞ」


 俺はそういって、ロックコンドルの足を引っ張った。

 ロックコンドルはゆっくりと広場から少し離れた場所に降下を始める。高度数十センチメートルあたりになり、俺とナビは地上へと飛び降りた。


「ありがとうな」


 俺はそう言ってロックコンドルの翼をなでた後、それをカード化した。

 次に、カードとなったロックコンドルを虚空へと収納する。

 索敵スキルを使っていても、骨人形がいる気配は感じられない。

 静寂が広場を包んでいた。

 そういえば、学園に来て、最初にミラーに花火魔法を見せられたのもここだった。

 あの時は愉快な爺さん先生だと思っていたが、まさかこんな大それたことをするとは思いもよらなかった。

 俺は再度自分のスキルを確認する。


【魔法技能37 魔法(火炎)47 魔法(雷)32 魔法(氷)27 魔法(治癒)27 魔法(光)20 魔法(特殊)23 伝説魔法1】


 魔法系のスキルは飛竜を倒したときから変えていないが、全体的にレベルはだいぶ上がっている。 

 だが、伝説魔法は相変わらず上がる気配をみせていない。

 今も使えるのはアザーセルフという分身魔法だけだ。


【全身防御20 死霊戦闘32 杖29 斧20 索敵35 魔物使い20 毒耐性12 睡眠耐性6 物質戦闘12 獣戦闘28 逃走12】


 合計19個のスキルだ。1個は緊急事態用の予備として空けている。

 あと、ナビゲーション機能をONにした。


【ナビゲーション機能がONになりました】


 ナビゲーション機能の切り替えメッセージが脳内に再生される。

 その後に、裏メニューを開き、ナビの状態を確認した。


【ナビ:MP残量97% 損傷率0%】


 朝の時点では100%だったはずだが、ファイヤーフィールドを1度使ったために消費したのだろう。自力でのMP回復方法はないうえに、同じ魔法を使っても俺の3倍はMPを消費するが、最大MPは俺よりもはるかに高い。

 最後にと、俺はカードを取り出し、具現化した。

 カードはミスリルの杖へと姿を変え、俺の手に収まった。


「便利ですね。交易に利用することをナビは推奨します」

「瞬間移動も使ってか? この学園に来るまでに真似事をしたこともあるが、確かに交易チートだったな」

「交易ギルドの人に暗殺されないように気を付けてくださいね」

「……わかった。気を付けるよ。ってこんなこと話してる場合じゃないんだけどな」


 そういって、俺は再び歩き出す。

 誰もいないが、罠があるかもしれない。

 俺はそう思い、カードを取り出した。その数26枚。

 そのカードを放り投げ、具現化させる。

 カードは針のような角の生えたネズミ、一角ネズミへと姿を変えた。

 収納していて使うこともなかったカードだ。

 

「おまえら、その辺を走り回れ」


 俺はそう命じると、一角ネズミは縦横無尽に走っていく。

 魔法を使った罠があるのならこれでひっかかるはずだ。

 だが、一角ネズミはただ走るだけで、罠のようなものにひっかかることはなかった。

 そして、一角ネズミたちは少しずつ数を減らし、町中へと散らばっていった。

 とりあえず、ここでの罠の露見はなかった。


「慎重に行くか」


 あまりのんびりしている時間はない。こうしている間にも病院にいる生徒たちのMPは吸われ続けているらしいからな。

 だからといって油断していいわけではなく、周囲への警戒を続けながら、俺とナビは広場の奥へと進んでいった。

 だが、やはり誰かがいる気配が感じられない。

 誰もいないのか?

 もしかしたら、俺をここに呼び寄せて、他の場所で何か悪巧みをしているのかもしれない。


 さらに歩いていくと、とうとう発表会の会場となっていた場所までやってきた。

 俺が使ったファイヤーフィールドやファイヤーウォールなどによる焦げ跡がはっきりと残っている。

 あの激戦からまだ一時間程度しか経っていないのか。


「ナビ、誰かいるか?」

「いえ、視界の範囲内には誰もいません。建物の中でしょうか?」

「ミラーは広場で待つようにしか言ってないからな」


 まさか、本当にここにはいないのだろうか。

 そう思ったとき、発表会会場の扉が大きく開け放たれた。


「遅れたか……お待たせしたようだな」


 そう言って現れたのは――二十歳代後半くらいの男だった。黒々とした髪と長い髭が生えており、俺を見て、髭をさわりながら不敵な笑みを浮かべていた。

 癖のように髭をさするしぐさもさることながら、なにより彼のその顔にはミラーの面影があった。


「まさか、お前、ミラーなのか」

「正解だ」

「マスター、あそこにいる名称:ミラーもまた人形です」


 なるほど、人形なら若さも自由ってことか。


「人形には用はない。あんたの本体はどこだ!」

「今の本体はワシじゃ……ごほん、私だよ。はははは」


 ミラーはそう言って両腕を大きく開いて叫んだ。


「人間のミラーはもういない。さっき死んだ。私が私の意志で殺した。老いた体では君と戦うことができそうにないのでね」

「はん、若いからって俺にかなうとおもってるのか?」

「やってみるかね?」


 ミラーは左腕をおろし、右腕を前に出して、くいくいっ、と人差し指で俺を呼ぶ仕草をした。


「じゃあ、やってやるよ! サンダーポイント!」


 試しにと俺は雷の下級魔法を使った。狭い範囲だが命中率の高い魔法だ。

 だが、


「ふんっ」


 ミラーが右腕を大きく払う。

 右手からさらに剣の形をした骨が生えていた。


「ソードボーンだ! ホムンクルスは何も人形だけではない。こんな使い方もできるんだよ」

 

 そう言うと、ミラーは剣を放り投げた。

 俺はその剣を楽々とかわした、はずだった。


「マスター、後ろです!」

「なにっ!」


 俺は慌てて後ろを振り返ると、地面に落ちたはずの剣が向きを変えて俺にとびかかってきた。


「くそっ」


 避けられないと悟り、杖で剣を払い飛ばす。

 激しい音をたてながら飛ばされた剣は、ゆっくりとミラーの手の中に戻った。


「生きている剣だ。どうだ? 見たことあるか? こんな技術」

「あぁ、俺の世界じゃ使い古されたネタだよ」


 ゲームやアニメといったフィクションの中限定だけどな。


「それが本当ならぜひ私も行ってみたいものだね、君の世界へ――」


 ミラーはそう言うと、再び剣を俺に放り投げてくる。


「やめておけ、俺の世界じゃ剣を持ってただけで銃刀法違反だからな」


 剣をミスリルの杖で受け止めた瞬間、俺はとっさにその剣に魔法をかけた。

 すると、生きている剣とやらは一枚のカードに姿を変えた。

 魔物や生きている生物はカードにできないが、やはりホムンクルスは道具として認められたらしい。

 落ちたカードを見ると、「動く骨剣」となっている。俺はカードを拾い、虚空へと収納した。

 

「たぶんだけど、あんたもカードにできるんじゃないか?」


 俺がニヤリと笑ってそうミラーに言うと、後ろでナビが、「ナビもカード化できますよ」と説明をしてくれた。

 教えてくれてありがとうな。カード化する予定はないけど。

 最初の一手を軽々と破られたことに、ミラーは少なからず動揺したようだ。


「くっ、流浪の民の技か……確かにやっかいだな。ならば、これはどうだ」


 ミラーは両腕を横に広げた。

 すると、その腕から骨が生えてきて、骸骨兵へと姿を変えた。そこに肉がついて髪がはえ、服が現れ、横にいるミラーと同じ姿になった。

 それが両腕から生えてきたのだから、計3人のミラーになった。そして、その3人のミラーがさらに両腕を横に広げる。

 そこから骸骨兵がさらに2体ずつ現れ、肉体を纏い、計9人のミラーが現れた。


『覚悟はいいな、小僧』


 9人同時に叫び、剣を構えてとびかかってきた。


「覚悟をするのはお前のほうだ」


 俺もまたミスリルの杖を構えた。戦いはまだ始まったばかりだというのに、テンションはクライマックスだ。

ミラーもそうとうチートですね。

人間を捨てた強さです。

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