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3 脱兎

 ウサギを探してみたが、意外と見つからない。

 街道沿いだからだろうか? だが、街道から外れたら道に迷いそうだしな。

 太陽も傾きだした。


「飯もあるし、そろそろ帰るか」


 そうひとりごちたとき、茂みが動いた。


――なんだ!


 すると、茂みが動きをやめ、走り去る音が。


「逃がすかっ!」


 そういい、茂みをかき分けると、そこに丸々とした白い兎(?)がいた。サッカーボールくらいの球のような兎だ。


【索敵スキルを覚えた 索敵レベルがあがった 索敵レベルがあがった】


 索敵スキルを覚えたらしい。狼に出会ったときに覚えなかったのは、狼を探していた時に出会ったからじゃないのだろう。

 フワットラビット、打ち取るぞ!

 それほど速いわけでもないので、思いっきりナイフを叩きつける。


『みゅぅぅ』


 可愛い声をあげ、兎から血が飛び出た。思いっきり返り血を浴びた。

 スキルは一切あがらなかった。

 短剣スキルは上がったばかりだから仕方ないとはいえ、獣戦闘スキルはあがってもいいんじゃないか? とも思ったが。

 まぁ、弱かったから、64羽倒したところでレベルは上がらないということか。

 あと、魔物を倒すとカードを落とすということだが、どこに落ちたんだ?

 と思ったとき、兎の姿がゆっくりと透明になっていき、同時に俺にかかった血も消えた。

 まるで魔法だ。狼の返り血も今回のように消えたのだろう。とすれば、ナイフの手入れも楽でいいな。

 残ったのは5枚のカード。

 ウサギ肉・ウサギ肉・ウサギ肉・ウサギの角・100ドルグ。

 ウサギ肉3枚にウサギの角か。100ドルグ……銀貨1枚か。


「兎に角、儲かったな……あ、ギャグじゃないぞ」


 誰もいないのに言い訳をしながら、もう少し兎を探してみることにした。

 なんとなくあっちにいる気がする、という直感があったからだ。

 すると、


(いた、今度は二羽だ)


 索敵スキルの効果だろうか?

 白いボールが二つ転がっているようにも見えるが、草を噛んでいる。


【索敵スキルがあがった】


 レベルがあがった。

 暫く様子を見ていると、兎は草を噛んでいるだけで動こうとしない。

……魔物だしな

 かわいそう、という感情が一瞬よぎったが、


「悪い」


 ナイフを振り下ろす。

 一羽が血飛沫をあげて絶命し、もう一羽が逃げ出そうとするが、ナイフを兎から引き抜き、もう一度ナイフを振り上げて振り下ろした。


【獣戦闘レベルがあがった 短剣レベルがあがった】


 今度は二つレベルがあがった。

 これで短剣レベルは8だ。

 兎の死骸が消え失せ、カードが残る。

 ウサギの肉が7枚と、200ドルグ。ウサギの角はなかった。代わりに、


「これ、さっきの兎?」


 フワットラビットと書かれたカードが落ちていた。フワットラビットの絵も描かれている。

 カードを全部ポケットに入れ、 町のほうへもどっていった。

 途中、切り株になった木を発見した。ナイフの練習をしていた木だ。倒れた木が見つからないから、誰か持って行ったのだろう。


(まぁ、木の販売の仕方なんてわからないからいいか)


 暫く歩き、町の門のところにいく。

 お姉さんがいなかった。代わりに眠そうな男が立っている。

 そのまま、歩いてカード買取窓口へ行く。

 中には二人の冒険者風の男が二人いたので、順番を待つ。

 少し話をしていたので、五分ほど待たされたが、俺の番になった。


「すみません、買い取り前に聞きたいんですが、これって」

「ほう、フワットラビットのカードですね。12000ドルグですよ」


 思わぬ高値に俺は驚きを隠せない。


「これってそんなに価値があるんですか?」

「フワットラビットはかわいいですから、帝都でペットとして人気があるんです」

「ペット、普通に捕まえるだけじゃだめなんですね?」

「カードになる前の魔物は凶暴ですからね。ペットにはできません。カード化したら、具現化した人に服従しますから」


 なるほど――つまり、カード化した魔物は飼うことができるようになるのか。

 仲間になりたそうな目でこちらを見てくるとかそういうイベントはないのか。


「めったに出ないんですが、お客様がご自身で手に入れたのですか? フワットラビットのカード化は確率でいうと1万分の1程度と言われていますが」

「え、いえ、両親から。何かあったら換金しろっていってくれたんです」


 とりあえずウソをつくことにした。レアドロップ率アップの恩恵だろうが、そこは黙っておく。


「あと、ウサギの角っていくらで売れます?」

「ウサギの角はカメの毛と合わせたら万能薬の材料になりますからね、5000ドルグで買い取らせてもらいますよ」


 またもや高値だ。

 ウサギの角とカメの毛って、どちらも存在しないもののたとえだ。あとは蛇の足などもあるのだろうか?


「ウサギの肉は?」

「10ドルグですね」


 こちらは通常運転といったところか。


「じゃあ、フワットラビットとウサギの角を買い取りお願いします」


 そう言い、17000ドルグもの大金を手に入れた。


【商売スキルがあがった 商売スキルがあがった】


 ついでに、商売スキルも2上がった。4になったようだ。

 そして、そのまま宿には戻らず、教会に行く。

 神父さんはいなかったが、武器屋のおばちゃんは応接間ではなく教会で祈りをささげていた。


「どうもぉ」

「おや、昼間の。どうだった? ウサギはとれたかい?」

「えぇ、百獣の牙の威力がすごかったのか、なかなか好調でした」


 そういって、ウサギの肉のカードを二枚渡す。


「これ、お礼です。夕食は宿で出るので、俺には宝の持ち腐れですから」

「おや、いいのかい? ありがたくもらっておくよ。神父様にも一つ分けておくね」


 神父様も肉を食べるのか。

 そういえば、日本で哺乳類の肉を食べるのが禁止になったときも、ウサギだけは食べていい時期があったっけ?

 ウサギは鳥だからとか妙な理屈をこねていた。だから、ウサギの数え方は今でも“羽”だとか。


「それで、軽い盾が欲しいんですが」

「盾だね。木の盾なら200ドルグ。他のはないんだよ、これでいいかい?」

「はい、軽くてちょうどいいです」


 100ドルグカードを2枚渡し、盾をもらう。

 値引きスキルを成長させようかとも思ったが、十分儲かったので今日はもういい。

 教会を出て、宿に戻る途中、信仰(神)レベルがあがった。

 たぶん、おばちゃんが俺からだといって神父様にウサギの肉を渡したためだろう。


(信仰か……)


 ふと、草を噛んでるフワットラビットを思い出す。俺が殺した3羽のうち、1羽はカードの中にいるという。


(幸せになれよ……)


 今はカードの中で眠っているであろうウサギに向かって、俺は胸中で祈りをささげた。

 信仰レベルはあがらなかった。

フワットラビットは、FFでいうゴブリン、ドラクエでいうスライム程度の雑魚です。また、ワンウルフにとっても獲物です。

食物連鎖でいうと、草の上にいる魔物ですね。

ただ、もちろん魔物ですので、駆除することが薦められています。

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