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23 終戦

 闇の中、俺と神の二人だけが佇んでいた。

 他には何もない。


「貴様――そうか、邪神に、キーシステムに連れられてここに来たわけか」


 神の言葉に、俺はほくそ笑む。

 瞬間移動によりこの場所に来れることは、予想していた。

 実は、北の大陸に行った時に、こっそりと試していた。

 瞬間移動は見たことのある場所に移動できる。

 そして、僕はあの暗闇の空間で、遠くまで一通り眺めた。


 だから、その視界の中に、北の大陸と通じている地点があるのなら、そこに瞬間移動できると読み、それは大当たりだった。

 ならば、あの場所からも瞬間移動できない理由はない。戦いが始まる前にこっそり試してみたら成功していた。


「ここでなら思いっきり戦えるだろ、俺も、神様、あんたもよ」

「良いのか、タクトよ。もしも其方がここで戦えば、元の場所に戻る手段がわかるまい」

「元の場所に戻る方法は、お前を倒してからゆっくり考えるさ! お前だって、俺を放って一人で帰るのは怖いだろ? なんたって、お前を殺せるとしたら、今は俺くらいしかいないんだからな」

「戯けたことを。確かにこの身体は主のもの。だが、余には神としての力と、このオリハルコンの鎧がある。負ける道理がない」

「はん、たかがオリハルコンの鎧がどうしたって言うんだ」

「強がりを。主の火鼠の皮衣のジャージは確かに逸品。何度も主の命を救ってきただろう。だが、所詮は炎に対し強い耐性を持つ装備にすぎぬ。余が主の身体を手に入れてから鍛えた雷スキルの前では紙の盾も同じよ」

「なら撃ってみるか? 紙の盾でもお前の雷の一撃くらいは防げるかもよ」

「たわけたことを。死して己の愚かさを悔いるがよい!」


 そして、神は両手を掲げ、ほくそ笑むように魔法を唱えた。


「サンダーストーム!」


 強烈な雷が俺に収束するように襲い、俺の心臓部に降り注いだ。

 体中を雷が駆け巡る感じが伝わってくる。


「ふははははっ、避けないのか、避けられるわけもないな、雷の魔法の速度は主もよくわかって――」


 高笑いする神の声が止まった。

 なぜなら、雷を浴びた俺が――ニヤリと笑ったから。


「馬鹿な、何故生きておる!?」

「お前が捨てたものを――俺は捨てなかったからさ!」


 俺はそう言って、火鼠の皮衣のジャージを脱いだ。


「バカな、何故そこにそれがある!」

「何故? ジャージを蔑ろにするお前には一生わからないだろうが、そもそもお前のジャージは半分はミスリルでできてるって教えただろ。なら、とうぜん余るよな、オリハルコンが半分」

「だからといって、作るか、オリハルコンを……神々の金属を使って、服を二着も作るのか」

「教えてやるよ! お前が変質させたジャージは外出用のオリハルコンジャージ! そして、このジャージは本来は――室内用だ!」


 思ったよりオリハルコンのジャージの着心地がよかったから、できたその日にドワーフの長老にもう一着作るように頼んでいた。

 それをまさか、外出用として使うことになるとは、あの時は思いもしなかったが。


 それでも、大切な人を――ミーナ達を守れるのなら、このジャージも外出用扱いされて本望だろう。


「じゃあ、行くか……伝説魔法その2ってやつを……」

「伝説魔法……その2……まさか……」

「お、流石は神様、そのあたりは知っていたんだな」


 俺はほくそ笑むように言った。

 伝説魔法その2……なんてことはない。ゲームの中ではよくある魔法だ。


「バカな、そんなことをしたらお前が――」

「ははは、神のくせに焦りすぎだろ。でも、まさか料理スキルから覚えられるとは思わなかったよ……自爆魔法がよ!」


 セルフボム。


 己の身体を爆弾にして攻撃をする魔法攻撃。


「まさか、お前は――最初からそのつもりでこの場所に余を連れてきたというのか」

「自爆魔法は古今、強力すぎるって相場が決まってるからな」


 俺は笑いながら続ける。


「耐えて見ろよ、神様よ。いいか? ゲームのボスってのは自爆魔法による道連れは効かないもんなんだよ。だから、根性見せてみろよ――神様よ」


 ジャージの上着を脱ぎ、カード化して収納。

 Tシャツ姿になって俺は恐怖で顔を引きつらせる神の手を掴んだ。


「ぐっ、サンダーストー……」

「遅いよ! セルフボムっ!」


 その瞬間――俺の体から魔力が充満し――




   ※※※


「魔力震を検知――同時に神の波動が完全に消え失せました――」


 ナビちゃんの声に、私は安堵し、微笑みました。

 お姉ちゃんが笑顔で私の肩に手を置き、


「タクトがやったみたいだな」


 満面の笑みでそう言いました。

 全て終わった。

 これで、元の生活に戻ることができる。

 そう思ったのですが――


「ですが、マスターの反応もありません」


 ナビちゃんの声に、私は――その言葉が何を意味するのか、最初はわかりませんでした。


 え?


 どういうことですか?


「マスターは、伝説魔法、セルフボムを取得していました。己の中の魔力を全て放ち爆発する魔法です。それを使ったのでしょう」 

「……そんな」


 タクトさんが……死んだ?


 そんなの――


「確率的にはマスターが生きている可能性は0.01%未満です」

「そんなことないです! タクトさんは――」

「ですが、ナビはあえてマスターが生きていると信じます」


 ナビちゃんは語った。


「何故なら、ナビがこう言ったら、マスターならきっとこう言うからです。確率的に不可能なことでも――」


 突如、私とナビちゃんの間に、オリハルコンのジャージを纏った――


「あぁ、確率的に不可能と言われることでもやってやるのがチートってもんだろ!」


 ――タクトさんが、現れて、ナビちゃんの言葉を引き継いで言いました。


「ただいま、みんな」

残り2話です。


どうしてタクトは生きていられたのか?

そして、物語の結末がどうなるのか、次回は12月24日更新です。

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