忘れ去られた者の声
忘れられることは死だと言っていた男は何処かで独りこう思う
潮満ちる海を眺めても虚ろな僕の目には何も映らなくて
心も体も機能せず 涙一滴すら流れやしない
嗚呼 無常に時間は過ぎていく
幾つもの情景が色褪せていく
満ちた器に新たな記憶の蜜注ぎ溢れて
僕が存在した思い出は零れ落ちていくんだろうな
ほんの少し ほんの一瞬 ほんのひと欠片でいいから
僕が存在した証明の記憶を忘れないで欲しいんだ
「そういえばこんなやついたよな」 それだけでいいから
僕のことを此処から消さないでおくれよ