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記憶――エルドラド

 轟音。崩壊。

 耳の中を直接殴打されるような凄まじい音が連続して起こった。今、一つの都市が壊れ行こうとしている。その都市の名前はエルドラド。浮遊する巨大な城の形をした都市だ。

 城が、魔法が崩れ消滅していくのを私は自分のことのように感じていた。いや〝ように〟なんて言い方は間違いだろう。この城は確かに私の一部で、その消滅はそのまま自分のことそのものなのだから。だがそれでもやはり〝ように〟と言いたくなってしまう。私には感覚がないから。自分の体が消えていくという現実は理解できても、それを五感で感じることはできないのだ。

 それにそもそも消滅という言い方もおかしい。城は戻っていくのだ。私の中に。

 このあたりの情報があやふやなのは、もとより私が自分の力を曖昧にしか理解していなかったからだ。私が世界を曖昧にしか見ることのできないように、私は私自身の力についても曖昧な興味しか持ちえず、どこかふわりとした理解しかできていなかった。

 だからだろうか。いや、だからなのだろう。

 だから、こんなことになってしまったのだ。

 私は今、崩壊する都市の中を歩いている。時折天井が崩れたり、どこからか飛んできた瓦礫が私に襲い掛かるように降り注ぐが、それによって私が傷つくことはなかった。意識せずとも、この体に植え付けられた防衛機能が勝手に避けてくれた。

「こっち、かな……?」

 轟音の中、私は微かに響く誰かの呼吸の音を頼りに歩く。他にまともな感覚がないせいか、私は複数の音の中でもたった一つの目的の音を聞き分けることに長けていた。

 その先にいるのは私の契約者。私の力を預けた人。私の力を利用した人。私の力で人を殺した人。私の力で死んでしまう人。

 彼は思いのほか近くにいたようだ。積み重なった瓦礫の下。ああ、ここだ。ここにいる。この下でまだ微かな、呼吸の音が聞こえている。

 この瓦礫の下で彼は潰されている。

「…………」

 私は彼の名前を思い出そうとして、首を傾げた。咄嗟に出てこないのだ。彼とは随分長い間、それこそこの戦争の最中は殆どずっと一緒にいたはずなのに、私はそんな近しい人の名前をすぐに思い出せずにいた。なんだか頭に靄がかかったような、そんな感じ。

「アレイスター」

 まさか完全に忘れてしまったのかとも思ったが、それは杞憂だった。口から漏れたのは間違いなく目の前の瓦礫の下にいるはずの男、私の契約者の名前だ。

 私を使い、オーランドの王都に単身で特攻した男。そしてその王都を滅ぼし、国そのものを焦土に変えようとした男。そしてその半ばで、かの国の英雄に打ち倒された男。

 彼は死んだ。いや、まだ生きている。だが死ぬ。もう助からない。小さくなっていく彼の心臓の鼓動がそれを知らせてくれた。

 不思議と悲しくはなかった。涙も出ない。ただほっとするような安堵と多少の喪失感があるだけだ。

 ようやくこれで終われるのだと思った。

 私も彼も、これでようやく止まることができる。そんな風に思ったのだ。

 瓦礫を一枚どけてみようかと私は思案して、すぐに諦めた。私の筋力ではどうにもならないし、死に際の彼の姿を見ても仕方ない。例えこの瓦礫の下でぐちゃぐちゃになってしまっていても、私にはそれが普通の人間と変わらぬようにしか見えないのだから。

 呼吸が止まった。心臓が止まった。死んだのだ。私の契約者。私の、私の――――

 背後で音がした。瓦礫が砕ける音。空気を破裂させたような音と一緒に複数の破片がこちらに飛んできた。それらを防衛機能が勝手に避けている中で私は振り返る。そこにいたのはかの国の英雄。アレイスターを倒した男。私の契約者の仇。

 男の巨体がこちらに向かって歩いてくる。私の視界ではこの男の姿さえ曖昧にしか見えないけれど、それでも男が平均的な男性の体躯よりも遥かに巨大な大きさをしていることはわかった。男は私の目の前まで歩いていくると、そこで一回立ち止まり、こちらを見つめてきた。そして不思議そうな声を上げる。

「お前は戦わないのか」

 私は思わず笑ってしまう。戦うはずがない。私は人型術式だ。契約者が死んだ今、できることなど何もない。そもそもアレイスターを打ち破ったこの男を相手に勝てる者がいるなど、私には到底考えられなかった。

 自嘲気味に笑う私を見て、戦意はないと悟ったのか、それとも後ろから狙われても負けない自信があるのか、男は私を通り過ぎてアレイスターが潰されている瓦礫の前に立った。そしてその瓦礫をいとも簡単に、片手で持ち上げて放り投げる。すると潰されてぐちゃぐちゃになっているであろうアレイスターがそこにはいた。男は少しの間じっとアレイスターを見つめてから、アレイスターの胸に刺さっていた一本の短剣を無造作に引き抜いた。

「……まさかルーン結晶によって作られた剣が他にもあったとはな」

 まじまじと短剣を観察しながら男は呟く。神妙なくせに、その呟きは少しだけ的外れで、それがおかしくなってしまって私はまた笑う。噴き出したその声に反応して男がこちらを振り向いたので、種明かしをしてやった。

「違うわよ。それはルーン結晶を模して造られただけの模造品。あんたが今、その手に持っている本物とは似ても似つかない劣化版よ」

「模造品……?」

 男は手にした短剣と、もう一方の手に持った長剣を交互に眺める。

 男が持っていたのは封剣と呼ばれる剣。その身の全てをルーン結晶によって形作られたオードランの秘宝らしかった。周囲のルーンを収束させ、また刀身に触れた人間にそのルーンを流し込む性質をもった武器だ。対してアレイスターが持っていたのはその贋作。ルーン結晶の効果を真似てなんとか形にした剣でしかない。それでもその効果事態は本物のルーン結晶と殆ど遜色なかった。私という巨大な術式を起動させるために、アレイスターが作り上げたものだ。

 彼の憎しみと怒りと、狂気が作り上げた一種の芸術品と言えるだろう。禁忌へと近づく狂気の芸術。だがそれだけのことができたからこそ、彼は私の力の全てを使えたのだ。

 しかしそれでも贋作は贋作だ。本物には敵わない。

 男の手の中で、アレイスターが作り上げた芸術が音を立てて砕けた。

「……限界だったのよ。本物と違って、その偽物は磨耗して、疲労して、壊れていく」

「最初から限界が、時間制限がある力だったというとか」

「そういうこと。だからわざわざあんたが〝この城そのものを攻撃し崩壊させてアレイスターを瓦礫で押しつぶさなくても〟、そんな大規模な破壊を行わなくてもいずれ決着はついていた」

「カルナを打ち破るための方法が、それ以外に思いつかなかった。むしろ俺は何故お前が生きているのかを聞きたいな」

「…………」

 何故、私が生きているのか。崩壊し、降り注ぐいくつもの瓦礫の中で生き延びられたのか。そんなものは決まっていた。防衛機能のおかげなのだ。あの機能がまた、無理やりに私を生かしたのだ。

 雨のように落ちる瓦礫。逃げ場などない状況。防衛機能はその全ての防護魔法を駆使して、私を瓦礫から守った。結果的にそれはアレイスターの死も意味していた。降りかかる害意を払いのける絶対のカルナ。男が使った手はその性質を逆手に取った方法で、カルナは簡単に無効化されてしまったが、だがカルナがなくともこの城に内包されたいくつもの防護魔法を使えばアレイスターも生き残れるはずだったのだ。しかしそのいくつもの守りの術は全て防衛機能が私のためだけに使ってしまった。契約者の意思すら凌駕する最上位の命令。生きることの強制。アレイスターは城から見捨てられたのだ。

 ――――いや、違う。私が見捨てたんだ。私が、彼を見殺しにした。

 例え防衛機能という強制の結果だったとしても、その事実は変わらない。

 私は私の契約者を見殺しにした。アレイスターは迫りくる瓦礫を自身の防護魔法によって防ごうとしたが、しかし都市そのものの崩壊によって生まれる攻撃は個人がどう頑張ったところで、防御できるものではない。

 だからアレイスターは死んだ。彼は瓦礫に潰されて、男の思惑通りに死んだのだ。

 私は彼を見殺しにすることによって生き延びた。

 だがそのことを説明する気力は今の私には残っていなかった。自分のことを語る言葉を私はもう大部前に失くしてしまった気がする。

「こいつが――」

 男は死んだアレイスターを一瞥してから言った。

「この男がお前を守ってくれたのか」

 まるで何かの物語のような想像に、私は呆気にとられてキョトンした恥ずかしい顔を晒してしまう。いくつもの戦場を駆け、自国からは英雄と呼ばれ、他国からは狂戦士と恐れられた男の意見だと思うとなんだかとても滑稽に見えてしまう。

「あんた、意外とロマンチストなのね」

 すると、今度は男の方が呆気にとられる。

「そんなことを言われたのは初めてだな。俺がロマンチストか、考えたこともない。ああ、いやよそう。そんなことを思考しても意味がない」

「意味がないって?」

「考えてもわからないさ。俺は力は強いが頭は悪い。その点は兄貴には敵わない。勝ってはいけないことでもあるのだがな」

 はて、と私は首を傾げた。現オードラン国王。つまりリチャード・リオン・オードランに兄弟などいないはずだ。彼の父も母もすでに死に、リチャードは天涯孤独の王だったはずだ。

 私が何を疑問に感じているのかがわかったのか、目の前のリチャードは存外に大きく驚いた。

「まさか、お前はまだ気づいていないのか。俺の素顔を見て、まだ何もわからないのか」

「気づくって、何がよ」

 何か素顔に秘密でもあるのだろうか。しかしそれにしても気づくとはなんなのだろう。確かに初めて彼を直接見た時は思ったよりも大きな王だと感じたものだが、だがそれだけだ。

 そしてリチャードは驚愕を声に乗せたまま、しかしどこかに何かを期待するような響きも乗せて更に問う。

「お前には俺がどう見えている?」

 その質問の意味を私はもっと考えるべきだったのだ。彼が言ったのはもっと観念的な話で、私の視界のことを聞いているのではなかったのだと、この時の私は気づかなくてはならなかった。

 私は答える。

「普通の人間に見えているわ」

 当然だ。私の目に普通に見えない人間などいない。私にとっての普通とはみな等しく曖昧で、どうしようもなく気持ち悪く、異常であることこそが通常に他ならない。

 目の前の彼もまた他の人間同様に殆ど見えていない。

 だから、普通の人間だ。

 ――――彼の顔が獣のそれであり、普通の人間ではないということを知ったのはもっとあとになってのことだった。人間の区別がつかない私には、人間と魔人の区別もつかなかったのだ。

 この時の私はもっときちんと話すべきだったのだ。自分の世界が曖昧なことを、だからこそ私は決して彼の獣の顔を差別しなかったわけでも気味悪がらなかったわけでもないことを。人間も魔人も等しく気持ちの悪い影にしか見えないだけだということを、話すべきだったのだ。

 そうすればこんな間違いは起こらなかっただろうし、あんな残酷な勘違いをさせずに済んだはずだった。私は、私はこの時選択を誤ったのだ。

「そうか……そうか…………」

 偽物のリチャードはわなわなと震えて、なんども〝そうか〟と呟いた。どうやら泣いているようだった。

 普通の人間に見えている。

 生まれることを望まれなかった男は私のそんな他愛もない一言に救われてしまったのだ。優しさなんてまるでない、そもそも相互にとって意味すら違うその一言に、生まれながらに己の存在を抹消された不遇の魔人は救われてしまった。

 リチャードは手にした封剣を皮で出来た簡素な鞘に納めてしまう。まるで戦う意志を放棄するかのような行動に私は唖然とし、聞いてしまう。

「私を殺さないの? 私は敵よ? あなたの国の王都を滅ぼした敵よ?」

「…………殺さない」

 私には見ることができないけれど、その時のリチャードの瞳には強い覚悟が現れていたことだろう。私を殺さない。そして、何かを敵に回す覚悟だ。

「そうだ。きっとこうして、兄貴も俺を救ってくれたのだ、俺の命を繋ぎ止めてくれた。なら次は俺の番だ。俺がお前を救おう」

 だがそれは叶わなかった。リチャードは私を救えなかった。それどころか、もっと深い闇の底へ私をいざなったのだ。

 深く深く、絶望の淵へ。

「俺はお前を殺さない」

 それは私の絶望の始まりを告げる言葉だった。死ねない、という暗く孤独な絶望の始まり。

 このあと、三百年にわたって、私は何度も――何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も! 考え! 叫んで! 繰り返し――――後悔し続けるのだ。

 どうしてあの時、私を殺してくれなかったの。


 これは私の記憶。人型術式アルマ=カルマ・タイプエルドラドの後悔と絶望の記憶。

 どうして、どうして…………――――――――。

 突然、私の視界は曖昧を通り越し、何一つ見えない暗闇に変わってしまう。そうして気が付くと、私はあの崩壊する都市にはいなかった。石造りの、半分が地下に造られたような部屋。私は曖昧な視界のせいか、そこが長らく慣れ親しんだ場所だとすぐには気づけなかった。

 そこは私がファウストと過ごした部屋だった。ファウストと、そして他のアルマ=カルマ達と過ごした家の一角。ファウストが寝室に使っていた場所だ。彼はこのじめじめした辛気臭い空間を好んでいたはずだ。

 あたりを見渡すと人影が三つ。そのほかに机や本棚と思しき簡単な家具類と、ファウストが使っていたベッドがある。そしてベッドには他の三つの人影とは別の四人目の誰かが横たわっていた。

 四人目の誰かからは呼吸音が、心臓の鼓動がしなかった。命の音が何一つしなかった。死んでいるのだ。既に絶命し、その生涯を終えた人間がそのベッドの上には横たわっているのだ。

 そこで私は思い出す。いや、理解した。これもまた私の記憶。ファウストが死んでしまった夜の記憶。私たちの生みの親がたった二十八年と十一ヶ月の生涯を終えた日の記憶だ。

「うっ……うう…………」

 人影の一人はベッドに身を寄せ、既に動かなくなったファウストに縋りついて泣いていた。もう一人は泣いている人影の横で、その肩を抱いてやっていた。

 不思議なことに私はその二つの人影の名前を思いだせなかった。先程アレイスターの名前が出てこなかったのと同じように、靄がかかったようになってしまうのだ。その声や仕種は確かに私が知っている、私の同類の一人であるはずなのに。

「リリ、もういいだろう。そろそろお父さんを眠らせてあげよう」

 影の一人がその腕に抱いている泣き続ける影を〝リリ〟と呼んだ。どうやら彼女はリリ、というらしい。その名前を聞いてもピンとはこなかったが、多分間違いではないだろう。

 私は靄がかかったような頭を二、三度振るが、やはり他の影の名前は思い出せそうもなかった。

「嫌よ!」

 リリが自分の肩を抱いていてくれた人物を突き飛ばした。怒りとも、悲しみとも取れない感情をあらわにして彼女は叫んだ。

「どうして、どうして死んじゃったの? こんなの悪い冗談よね? ねえ、そうよねパパ? だって来月は誕生日で、リリはそのためにいっぱいいっぱい準備してて……だから、だから」

 リリは混乱している。思考がまるで正常に働いていない。ファウストが、自分の生みの親が死んでしまった現実が受け止められないのだ。ああ、そうだ。確か彼女はアルマ=カルマの末っ子で、つまり一番最後に作られた人型術式で、他の仲間たちよりも一層ファウストに懐いていたのだ。彼女にとって、ファウストは本当に〝パパ〟だったのだろう。私とは違い彼女はファウストに対して本物の家族愛のようなものを感じていたのかもしれない。 

 私は他の仲間たちの中でも特に最初の方に作られた最古参の一人だった。私が生まれた時のファウストは殆ど子供と言ってもいい年齢だったため、彼を親のように見たことは一度もない。ただ家族とすら思っていなかったと言えば嘘になる。私と彼との関係は親子とも、兄弟とも違う不思議なものだった。

 だから私は彼が死んだことが素直に悲しかった。

 それでも、涙は出ないのだけれど。

 どうしてだろう。

「いい加減にしなよ、リリ」

 最後の人影、部屋の扉に寄りかかるようにして立っていた人影がイライラした口調でリリを叱りつける。

「泣いていたって、仕方ないだろう。もう親父は死んだんだ。お前が泣いたって戻ってこない」

「アン!」

 リリに突き飛ばされた人影が怒ったように扉に寄りかかる人影――――アンに詰め寄る。

「なんだよ。なんでイリムが怒るんだ」

「少しはリリの気持ちを考えろ!」

「……末っ子だからって甘やかし過ぎだ。私は事実を言っているだけだぜ? 親父は死んだ。誕生日を迎えられずに死んだんだ」

 イリムがアンの胸倉を掴んだ。そのまま今にも殴り飛ばそうとするイリムの動きをリリのすすり泣きが止める。

「どうして……どうしてそんな酷いこと言うの!? リリたちのパパが死んじゃったのに、なんでアンもイリムも、そんな風に泣かないでいられるの!?」

 もう随分と長いこと泣いていたのだろう。リリの声は殆ど掠れてしまっている。そんな彼女の悲痛とも言える叫びにイリムは動きを止めてしまう。その隙にアンはイリムの腕を払いのける。そしてどこか疲れたような声で言うのだ。

「泣いたさ。みんな泣いた。それで泣き止んだんだ。まだ泣いているのは、甘えているのはお前だけだ」

 みんな泣いた。泣いて、泣き止んで、だから今私は涙が出ないのだろうか。わからない。私は自分が泣いたことさえ、思い出せずにいた。

「私らが今まで平和に過ごせてきたのは全部親父がいたおかげだ。この人が私らを守ってくれていたんだ。その守りが無くなった。このまま放っておけば、私らは戦争に利用される。利用され、捨てられる。そうならないために動く必要があるんだよ」

 アンは一度、扉に視線を送る。

「あの扉の向こうではみんなが集まって、今後のことを話し合っている。私らがどうやって生きていくのかを、みんなでだ。その間、マリンなんかは一人で全員分の飯を作ってる。今日の食事当番はマリンと、お前だよリリ。お前がそうやって泣いているせいで、みんなが迷惑しているんだ! それくらいわかれ馬鹿が!」

 アンが遂に声を張り上げた。叱られた内容よりも、怒鳴られたことにショックを受けたのか、リリは泣き止めというアンの言うこととは逆にもっと声を上げて泣き出してしまう。

 その様子を見てアンはめんどくさそうに舌打ちをする。

「おい、エリー! お前からも何か言えよ!」

 エリーとは私の愛称だ。アンは私にもリリを叱ってほしいようだった。確かにいつまでも泣いてはいられない。これからのことは考えなければいけない。だけど、大事に思った人が死んでしまって、そのことを悲しんで泣いている少女に向かって泣き止めと怒鳴りつけるような真似は、私にはできそうにもなかった。

「……リリは末っ子よ。私たちみんなの妹。まだ生まれてから一年もたってない」

 そうだ。彼女は本当に最後の最後にファウストが作ったアルマ=カルマだ。そして来月はリリにとっては初めてのファウストの誕生日だったのだ。だから、リリはとても張り切っていた。私たちが今までファウストをお祝いしたよりも、ずっとずっと沢山祝ってあげるのだと言っていた。みんなとの遅れを取り戻すために凄い誕生会に自分がするのだと、そう言っていた。

「泣きたいなら、泣かせてあげましょう。これからのことは他の人たちで考えたっていいじゃない。食事係なら、私も手伝うから」

 そう言うと、アンは殆ど呆れたようにため息を吐いた。

「どいつもこいつも、甘ったるいったらありゃしねぇ」

 アンは扉を開けて部屋を出て行こうとする。しかしその直前に立ち止まり、こちらを振り返った。

「マリンの手伝いは私がする。エリーは話し合いの方に参加してくれ」

「いいけど、どうして?」

「適材適所だよ。不味い飯は嫌いなんだ、私は」

 遠まわしに私の造るご飯は不味いと言われてしまった。ただ、その自覚はあったので、特に怒る気にはなれなかった。私には味覚もないから、ご飯を作るのは苦手なのだ。

 アンが出て行ったあと、イリムが私に言う。

「私は薄情なんでしょうか?」

「どうしたの、そんな急に」

「こんな時なのに、リリやみんな、今後のことばかり心配している。お父さんが死んだのに、他のことばかり考えているんです」

「…………」

「私、怖いんです。なんだかこのまま、全てがバラバラなってしまうような。もうこうしてみんなが一緒にいられることもないんじゃないかって、そんな風に思うんです」

 イリムの口から発せられた不安。それはきっとここにいるみんなが持っているものだ。心のどこかにしまっていて、でも言葉にするのは怖くて、ずっとずっと隠したままにしている不安。

 私もまた同じ不安を抱えていた。

「イリムは薄情じゃないわよ」

「え……?」

「優しいから、みんなことを心配できる。リリも優しいから、ああやってずっと泣いている。アンだって優しくなければリリを怒ったりなんかしない。あの子もどっかでリリとイリムのことを心配しているのよ」

 だから、大丈夫だと。私は自らの不安を払拭するように言う。

「みんなみんな優しくて、いい子たちだもの。なんとかなるわ」

 曲がりなりにも最古参の一人である私の言葉にイリムも安心したのか、堅くなっていた語調を少しだけ柔らかくする。

「リリは、私が見ていますから」

 そう言って、また彼女の元へ行き、その肩を抱いてやっている。今度はリリもされるがまま、イリムの腕の中で泣き続けた。

 再び世界は暗転する。今度の私は戦闘の中にいた。人々の怒号と、悲鳴の聞こえる中、私は立ちすくむ。――――――私はイリムの死体の前で立ちすくむ。

 死んだ。妹が、私の仲間が死んでいる。戦闘の中で死んだ。死んでしまった。

 いや、違う。そうじゃない。私が殺したのだ。私が、私の魔法が彼女を殺してしまったのだ。「何をしている。行くぞ」

 後ろから、声をかけられる。振り返ればそこにはいつもの気味の悪い姿をした人影がいる。

「行くぞ、アルマ=カルマ。次の作戦目標だ」

 淡々とした、機械のような男の声。私はこの男を知っている。だけど、やはり名前が思い出せない。でもそれでもいいかと思った。こんな男の名前など、思い出せなくても、別にいいかと。

「どうして……?」

 私は再び私のせいで死んだイリムの死体を見つめて問う。

「仲間がいるって、妹がいるって言ったじゃない。この子は契約者に騙されて、だから私に助けを求めていて……それで――――」

「それで君は契約者だけを殺してくれと、そう私に頼んだ」

「そうよ。そのはずよ! なのに、なのに…………」

 なのに、この男は手加減をしなかった。全く見境なく、リリムもろとも契約者も何もかも私の魔法で消し飛ばしたのだ。

 そして、そしてその惨状が目の前のこれだ。

 妹の死体。

「君の妹は契約者の近くにいすぎた。あの状態では魔法に巻き込まずに契約者だけを狙い打つのは不可能だった」

「だったら、分断させるなり、もっとやり方はあったはずでしょう!?」

「その時間が惜しい。次の作戦までもう一刻の猶予もない」

「だけど……!」

 まだ子供の反論のように私は駄々をこねる。無駄だとわかっていても、言わずにはいられない。妹をこの手で殺してしまったその現実を跳ねのけようと、私のせいではないと主張するように目の前の男を責めた。男は淡々と機械のような受け答えを繰り返していたが、不意に手にした鎖を引っ張った。その鎖は私の首の首輪に繋がっていた。人型術式を縛り付けるための、文字通りの鎖。それを男は一定のリズムで何度も引っ張る。その度に私は体勢を崩され、ついには地面に倒れてしまった。

 地に這う私を見下して、男は告げる。

「いいか、アルマ=カルマ。これは戦争だ。人の命と、国そのものを賭けた戦いだ。君一人の私情で動くわけにはいかない。もっと大きなものがこの後ろにはあるのだ。わかるな? 作戦を違えてはならない。命令は遂行されなければならない」

「何、勝手なことを言ってんのよ……」

 私は這いつくばり、土を噛みながら悔しさに拳を握った。

 私たちは戦いたくなんてなかったのに。

 私たちを無理やり戦場に引っ張り出してきたのは、あんたたち人間なのに……!

 アルマ=カルマは結局バラバラになってしまった。イリムの不安は的中した。私たちはバラバラになって、欠けてしまって、もう二度と一緒にはいられない。もう二度と、元には戻れない。

「行くぞ、アルマ=カルマ。命令は遂行されなくてはならない」

 男は決められた文句を繰り返し、鎖を引っ張る。そうして強引に立たされた私は男と共に戦場を駆ける。

 悔しい。目の前の男を殺してやりたい衝動が噴き出す。でも、大丈夫だと、その必要はないとどこかで私の中の冷静な部分がそう告げていた。

 私が手を下さずとも、目の前の男は死ぬ。このあと、物陰から現れた少年兵にナイフを突き立てられて死ぬ。私はそのことを知っている。だってこれは私の記憶だ。私自身の、記憶。思い出したくもない、くだらない過去の記憶だ。

 そして、世界は暗転する。

 契約者を少年兵に殺された私は戦闘中のごたごたに紛れて軍を抜け出した。当時私はグーリエフの軍内部の部隊に所属していた。だがもうそこに戻るつもりはなかった。私は私が殺したイリムの亡霊から逃げるように国を飛び出し、単身オードランへと渡った。そこで私は再び別の男と契約を結ぶこととなった。

 男の名前は例によって思い出すことが出来ない。彼はとても穏やかな青年だった。魔法を学んだ魔法師ではあったが、彼の研究していた魔法は戦争にはまるで役に立たないものだったので、兵として徴集されることもなく、オードランの外れの片田舎で恋人と共に比較的穏やかに過ごしていた。それでも戦時中ということもあり、食料を含めた物資は不足していた。そんな状態だったにも関わらず、彼と彼の恋人は野垂れ死にかけていた私を快く受け入れてくれた。既に天才として名を馳せていたファウストの造った人型術式であるという事実が魔法師であった男を強く惹きつけたというのが、彼らが私を受け入れてくれた大きな理由の一つではあるのだけれど。

 しかし男は契約を結ぶことによって胸に浮かび上がる術式を見て驚愕したあとは、ただ毎日私の挙動を興味深そうに見つめるばかりで、これといっておかしな実験などに私を付きあわせることも、私の魔法を行使しようとすることもなかった。彼にとっては私の魔法やその効力よりも、術式として機能しているはずの私が普通の人間のように生きていることの方が興味を惹かれたようだ。

 私の世界は普通ではなかったけれど、傍から見れば私も普通の人間のように見えるらしい。

 それから、私は少しの間だけとても穏やかな時間を過ごすことになる。

 忘れていた平和な時。私たち兄妹はもうバラバラになって、元には戻らないけれど、しかしそれとは別の平和を私は彼らと共に見つけたのだ。

 しかしその平和もまたあっけないほど簡単に壊れてしまう。

 ――――私は煤と炭と、死体だらけの場所に立っている。隣には絶望を色濃くその表情に表した男がいる。

 そこは私と男と男の恋人が平和に過ごしていた片田舎の村だった。平和な村のはずだった。、貧しいが、戦火とは無縁の天国のような場所だったはずだ。しかし今やそこは地獄と変わらない。私の曖昧な視界の中でも、ここが地獄であることは容易に理解できた。

 静けさが、それを教えてくれるのだ。

 私と男が隣町へ魔法の資料を受け取りに行っている、そのわずかな時間でこの村は壊されてしまった。村がグーリエフの軍に襲われていると聞いて急いで戻ってきたが――――その時には全てが終わっていた。全て、壊されて、嬲られたあとだった。

 グーリエフの軍の仕業だと、この近くを通っていた行商人は言っていたが、多分正式な軍による進行ではないだろう。こんなさびれた田舎を襲ったところでオードランという大国は揺らぎもしないことを他国は重々に承知しているはずだ。だからきっとこれは正式な軍人ではなく、軍に雇われた傭兵の仕業だろう。物資欲しさに手ごろな村を襲い、皆殺しにした。そして証拠を消すために火をつけたのだ。

 あとはもう語るまでもない。

 何もかも燃え、私たちの村は滅びた。

 人の欲望と悪意によって、滅ぼされた。

「なんてことだ……」

 変わり果てた村を眺め、立ちすくんでいた男が呟く。

「なんてことだ。こんな、こんなことが…………」

 ふらふらと彼は崩れた家の隙間を縫って歩きだす。私はなんて声をかけたらいいのか、そもそもここにいていいのかもわからず、ただ黙って男の後ろをついていくほかなかった。

 しばらくそのまま壊れた村を歩くと、私は崩れた家の影に生き物の気配を感じた。静寂のなかに、私とも男のとも違う心臓音が響いている。そのことを男に伝えるべきかどうか迷っていると、その場所から大きく何かを引きずるような音がした。それに気づいた男は一転して機敏な動きで音のした場所へ走る。

「誰だっ!?」

 音の場所まで辿りついた男が叫ぶ。私も慌ててそのあとに追い付くと、そこにいたのは薄汚れた格好をした中年の男だった。中年の男は窪んだ瞳で訝しげにこちらを見つめて言う。

「俺はハイエナだよ」

 中年の男は自らをハイエナと名乗った。それが本名なのか、それとも別の呼び名なのかわからなかったが、それよりもこんなところに何故村人でもない人間がいるのかが不思議だった。男もまた私と同じことを疑問に思ったのか、ハイエナへ尋ねる。

「ここで何をしている」

「漁ってんのさ。俺はハイエナだから、死体をよぉ。政府が来る前に金目のものを盗んでトンズラこくのさ。おまいさんも、似たような目的じゃないのかい」

「死体漁り……?」

「仕事もねぇ、食い物もねぇ。となるともう死人のおこぼれにあずかるくらいしか、俺みたいなおやじには生きる術がねぇのさ」

 けへへへ、とハイエナは黄ばんだ八重歯を覗かせて笑った。

「戦場跡はいい。しばらく人がよりつかねぇから、政府が立ち入るまではやりたい放題。剣なんかも結構高く売れるんだぜ?」

 言いながらもハイエナは何かしきりに足元で手を動かしている。視線を向けると、ハイエナの足元には物言わぬ死体があった。ハイエナがその死体を弄る時に金属が擦れる音がすることから、死体は鎧を着た兵士であることがわかった。

「ほほう、こいつを見てみろ。これは面白い」

「な、なんだ……?」

「下だよ下。何も穿いてねぇだろ。丸出しだ。大方、村の女を犯しているところを反撃されたか、生き残っていた村人に殺されたんだ。馬鹿なやつだぜ。どんなにいきがっても死に様がこれじゃあかっこがつかねぇな」

「こいつは、グーリエフの?」

「ああ、多分傭兵だろうよ。おっ、こいつはペンダントか……? どれどれ…………あー、駄目だこりゃ。安物だ。名前まで掘っていやがる。〝アレイスター〟か、ご大層な名前だが死んじまったら意味がねぇよな。けへへ!」

 その後もハイエナはこちらに目もくれず、死体漁りを続けた。鎧は重くて持ち運びにくいわりにあまり高くないなどと、どうでもいいことを呟きながら崩れた家の中から一人の女の死体を引っ張り出した。服は無理やりに裂いたようになって、殆ど裸同然で家の下に埋まっていた女を見た瞬間、男の顔から表情が消えた。

 ハイエナは知らなかった。彼が下卑た手つきで物色するその女が男の恋人であったことを。

 ハイエナは知らなかった。彼が喜んで女から奪い取った指輪は男が彼女へと送ったプレゼントだったことを。

 ハイエナは知らなかった。もう用済みだとばかりに蹴り飛ばした女の腹に、小さな命が宿っていたことを。

 この時、このハイエナがもう少し賢かったなら、それでなくてもこんな小奇麗な格好をした男と娘が死体漁りなどするはずがないと思うまともな思考を持っていたならば、彼はきっと死ぬことはなかっただろうし、もしかしたらこれから訪れる破滅の未来が大きく変わっていたかもしれない。

 男は壊れてしまった。その若く純粋な心をバラバラに引き裂かれてしまった。何より悲劇だったのは、男がそこから立ち直るだけの力を持っていたこと。立ち直ってしまったが故に、一度壊れた心はおかしなところで繋がってしまった。

 男はその心に狂気を抱いてしまう。

 その日、初めて男は私の魔法を使った。

 その日、初めて男は人を殺した。


「僕は今日からアレイスターだ」

 ハイエナの死体を踏みつけながら、男は語る。

「僕は僕の恋人の尊厳と命を奪った下劣な男になる。昨日までの僕は死んだ。僕はアレイスターだ。僕は今、ここで生まれ変わる。下等な魂として、生まれ変わる」

 怒りと、悲しみと、狂気を孕んだ声は震えていて、今にも爆発しそうだ。男はアレイスターと彫られたペンダントをつけ、私へと振り返る。

「僕は残虐非道な傭兵だから、これからは君を道具として扱う。私利私欲のため、僕の怒りのため、僕の復讐のため、僕の自己満足ため、君の力を僕は使おう」

 そう言ってから、男はその声に前までの穏やかな優しさを見せた。

「それでも、僕についてきてくれるか? 嫌だと言うのなら、契約を解除してどこへなりとも行けばいい。僕に失望したというのなら、今この場で殺してくれて構わない」

 こんな精神状態で、狂気に支配されてなお、目の前の男は無理やりに私を引っ張っていくこをはしたくないのだ。その優しさが、矛盾が、私にはとても怖いものに感じられた。

 ああ、もう目の前の彼は完全に、完璧に、どうしようもないくらいに壊れてしまったのだ。

 もう、もう私の平和はどこにもない。欠片さえ残っていない。最後に残っていた彼もまた、今こうして死んでしまったのだ。

「いいわ、私はあんたの道具になってあげる」

 気づけば私はそう言っていた。道具になる。人を殺す兵器になる。今までずっと嫌がっていたはずのそれに身を落とすことを、私は望んだのだ。

 白状しよう。私はもう疲れてしまっていたのだ。大事なものを失くすことに、その度に悲しみを得ることに、私という存在はもう擦り切れてボロボロだった。だからこれは自暴自棄になった私の最初の自殺と言ってもいいかもしれない。

 結局、死ぬことはできないのだけれど。

「好きなように使いなさい。あんたの気が晴れるまで、付き合ってあげる。あんたは私の契約者だから。あんたを、絶対に一人にはしない」

 そんなことを私はのたまうのだ。笑ってしまう。私はいずれこの男を見捨ててしまうというのに。

「…………ありがとう、エルドラド」

 それっきり、男からは感情が消えた。壊れた心はどす黒い憤怒と狂気を表すだけで、まともな喜怒哀楽は男の中から消え去ってしまった。

「それで、どうするの? あんたは何がしたいの?」

 私の質問に男は少しだけ考えた後、答える。

「壊そう。全部。目に映る物全て、そうして世界を壊すんだ。ああきっと、そうしなければ、僕のこの怒りはなくならない」

 そうして喪失の果てに〝城主アレイスター〟は生まれる。

 その半年後、一番人が集まっていそうだからというあんまりな理由で持って、彼は自国の王都へ攻め入った。

 一体、だれが予想したことだろうか。オードランという大国の王都を滅ぼした悪夢が、他国とは一切関係のない自分達の国の民だったことなど。

 しかし結局アレイスターは世界を壊すことはできなかった。

 ルーン結晶を再現し、私という巨大な魔法を十全に扱ってなお、彼に壊すことのできたのは一国の王都だけだった。それはオードランを敗北に導いたものの、世界は依然として壊れることもなく存在し続けている。

 彼は最期、満足して死んだのだろうか。それともやはり、王都を壊しただけではあの狂気と怒りは無くなってくれなかったのだろうか。そのことを死に際の彼に尋ねればよかったと、私は時々後悔する。

 まるで走馬灯のようだと、私は時系列も滅茶苦茶に溢れ出る記憶の奔流の中で思った。砕けた記憶の欠片が列を成して私に迫る。それは不思議と思い出したくもない嫌な記憶から私の元へやってきた。

 いや、そもそも私に楽しかった記憶なんてあるのだろうか。平和な時は確かにあったが、それが楽しく幸せだったのかと問われた時、私はきっと自信をもって頷けない。まともな感覚のない世界のせいか、私は多分幸せや楽しいということをちゃんと理解できていない。それも当たり前か。痛みも苦しみも知らないのなら、その逆の幸せがわかるはずもないのだ。

 ああ、また記憶がやってくる。追いかけるように、追い詰めるように、色のない記憶が私へ迫りくる。

 私は荒野に立っている。

 私は鎖に繋がれている。

 私はベッドに横になっている。

 ファウストが私を見つめている。

 妹たちと一緒になってお風呂に入っている。

 アレイスターが突然見知らぬ老人を殴り殺した。

 リチャードが私に会いに来た。

 今日もまだ鎖に繋がれたまま。

 今日もまだ城に繋がれたまま。

 私は戦場で逃げ惑っている。

 私は瓦礫の上に立っている。

 私は――私は――――私は――――――私は――――――――


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