第2話
自室に戻り、宿題を済ませて時計を見るとまだ夕飯には早いが何かするほど時間が空いている訳でもないという微妙な時間だった。
俺は暇つぶしにマインスイーパーでもやることにした。
しばらくすると急にパソコンが突然砂嵐になった。
10秒ほどで治まったが再度表示されたのは先ほどまでプレイしていたマインスイーパーでも、デスクトップの草原でもなく暗い部屋の真ん中に白衣を着た熊のぬいぐるみがイスに座っていて、そこにスポットライトが当てられている画像だった。
性質の悪いウイルスにでもかかったかと思っていると、スピーカーから無機質な声が聞こえてきた。変声機を使っているがどうやら女のようだ。
『私は……そうだな、Eとでも名乗って置こう。まずパソコンでこれを見ている者に言っておこう。これはウイルスなどではない。テレビを見てもらえば分かるだろう』
俺はリモコンを手に取り、テレビの電源をいれた。映し出されたのはパソコンとまったく同じ光景だった。
『これは世界中のパソコン、携帯電話、放送局などをクラッキングして放送している。なぜこんなことをしたかと思っている者も大勢いるだろう。私の目的は分かりやすく言えば人類を滅ぼすことだ』
人類を滅ぼす、ね。 こいつ正気か?
『目的だけ述べても疑問符が浮かぶだけだろう。動機を述べるのなら地球のため、と言う事になる』
親切なのか不親切なのか分からない説明だな。
『より詳しく言うのであれば自然を破壊し、多くの生物を絶滅へと追いやった無駄な人類を滅ぼして他の多くの生物を生かす。人類がいなくなれば生態系にも多少の乱れは生じるが、時とともにあるべき姿へ戻ることだろう。自然を破壊するものはもういないのだから』
ふむ、一理ある。だが、それは不可能だ。
人類滅亡なんて大量の核でも爆発させないかぎり出来ないが、そんなことをすれば人類どころか地球が滅ぶ。それはEの動機と矛盾している。
『具体的な方法だが……私はある寄生虫を作ったのだ。霊長類の中でもチンパンジーやオランウータンには寄生せず、人類にのみに寄生するため人類とともに滅ぶ。素晴らしい寄生虫だ』
寄生虫か、内臓を穴だらけにされたりするのか?
『この寄生虫は宿主の思考を操る。その思考だが丁度有名でそっくりなやつがいた。つまりは……ゾンビだ。ゾンビというよりリビングデッドに近いかもしれないが、ゾンビの方が分かりやすいだろう』
ゾンビだって? あんなものはフィクションだろう。
『まあ信じる者の方が少ないだろう。実験段階のものだがゾンビ……いや、寄生者の映像を流そう。それでも信じないものは好きにしたまえ。信じなければ死ぬし、死ぬのは私も本望だ』
そこからは寄生虫を体内に入れられた人の様子を収めた映像が流れたあと、またもとの画面に戻った。
『最後に、私はこの計画が失敗した場合は人類は無駄なだけではないと考えを改め、人類を含めた地球のために尽力しよう。先ほどの映像はそのヒントも兼ねていた。せいぜい頑張るといい』
画面は元に戻り、緊急ニュースがハッキングによりなんたらかんたらと言い出した。
それが俺には、なぜか酷く場違いなものに思えた。
寄生者が出てくるのはもう少し先です。