最終話
月だけが町を照らす真夜中。突如として響いた轟音、それに続くガラスの破砕音、そして左太腿に走る鋭い痛みによって俺は目覚めた。
左太腿には小さめの注射器のような物が刺さっていた。これが外から飛んできたのだろうが、寄生者に道具を扱う知能があるとは思えない。
外を見れば道向かいの家に猟銃を構えた男が下卑た笑みを浮かべていた。それだけで無く周囲の民家からゴルフクラブとバールのような物で武装した2人の男が屋根を伝って近寄ってくる。
麻由美は事態が飲み込めないといった様子できょろきょろしているが、鉄男はすでに構えを取っている。
俺も注射器を引き抜いて、鉈を手に立ち上がろうとする。しかしすぐに膝を突いてしまう。
「力が入らない。麻酔か何か打たれたみたいだ」
「俺なら素人の2人くらいどうということはない。休んでいろ」
責めて鉄男が動き易いように麻由美の方へ這っていく。
「ど、どうなってるの?」
「大人しくしてりゃ大丈夫だ。安心しろ」
男たちは窓を乗り越えて進入してくるなり鉄男に襲い掛かった。
鉄男は悠々と左手で受け流すと、右の掌底で鳩尾を強打しゴルフクラブ男を悶絶させる。
バール男は振り切った体勢のままタックルを繰り出す。鉄男は数歩下がってタックルをかわし、手刀を首に落としてバール男を気絶させた。
だが、タックルを避けるために数歩後退した鉄男は割れた窓の前に立っていた。
銃声が響き鉄男の背中にも注射器が刺さる。
他に仲間はいないらしく、猟銃男が直接来るようだ。猟銃男が来るまでに鉄男も麻酔が回って動けなくなるだろう。
「麻由美、俺達を置いて逃げろ。住宅街を抜けたら見えるやたらデカイ道場が寺瓦道場だ。」
「ただ行っても追い返されるだけだろう。俺の刀を持って行け。得物を預けられるほど信用できる人物なら受け入れてくれる」
「2人とも何言ってるの!? 置いていくなんて出来るわけ……」
「すぐに猟銃持った男がここにくる! お前だけでも生き延びろつってんだよ! 早く行け!」
少し悩んだ後、麻由美が鉄男の刀を持って窓から外に出る。屋根から塀に、塀から道路に飛び降りて逃げたようだ。銃声も聞こえないから無事に逃げられただろう。
「あるぇ~? 可愛子ちゃんが居ねぇ。逃がしたか。チッ、使えない奴らだ」
「麻由美はずっとしゃがんでいたから麻酔銃も撃てなかったろう。残念だったな」
「ああ、残念だよ。麻由美ちゃんて言うのな、あの子。俺達の物になれば気持ち良~くしてやったのになぁ」
猟銃男は口を三日月に歪めながら股間のテントを隠しもせずそう言った。
「物資が手に入っただけでも良しとするか」
猟銃男が俺の鉈を手に近づいてくる。
「じゃ、お前から死ねや」
目の前に迫る白刃が俺が最後に見た光景だった。
4作目にして初の長編完結です。
思いつきと勢いだけで書いた作品だったのであまり良い作品とは言えない物でしたが、多くの事を学べました。
冬の童話祭に参加するつもりなので、今回の経験を生かしてがんばりたいです。




