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「清水さん、橘さん、小林さん、滝山さん、水沢さん、それと、宮下さん、と。他に立候補や推薦はありませんか?」
黒板に名前を書き終わり、お兄ちゃん――先生はわたしたちの方へと問いかけた。
少しだけ、クラスの中は戸惑った空気になってる……っていうのも当たり前か。
委員長に相応しいと思う人を多数決で決めるといっても、二年生とかならともかく、入学して二日目の一年生だったらお互いのことは良く知らない。
もちろん何人かは仲良くなっているだろうけど、それはほんとに少数で……だから、クラスの中で「どうする?」「誰にしようか?」なんて囁き声が洩れていた。
(――――)
当事者の一人になったわたしはドキドキとかモヤモヤとか、とにかく気持ちの整理ができないまま舞ちゃんの方へと視線を向けた。舞ちゃんは悪戯っぽく笑って、こっちに向かって手をひらひらさせる。
(もう……舞ちゃんったら)
むっとしたりもするけど怒ることもできなくて、嬉しいところもあって……それでまたモヤモヤ。
(……でも、きっと)
多数決だったら、わたしは多分……決まらないと思う。自分でいうのもなんだけど、わたしは大人しいというか地味で……こういう状況だったら、やっぱり目立つ人のほうがみんなに推されると思っていて。
実をいえば、クラス委員長は今まで何回もしたことはあった。それは、お兄ちゃんが高校生の時、クラス委員長をして生徒会もしていたことを聞いていたから、小学生だったわたしも真似して委員長に立候補したりして、一度は生徒会長にも推されたこともあった。結局、投票で負けて生徒会長にはなれなかったけれど。
でも、それは、言い方は悪いけど「誰もしたがらなかったから」わたしが委員長になることができた。生徒会長に推薦されたのも、委員長を何度もやっていたから。
だから、今回みたいに委員長になりたい人がたくせんいると……わたしはなんだか勝てる気がしないというか、わたしが委員長になってはいけない気がしている。
しかも……
(もし、先生……お兄ちゃんの妹だってわかったら)
色々言われると思う。きっと、みんないい気持ちはしない。
『――だったら、他の人が委員長になってもいいの?』
(…………)
……別のわたしが囁く。
(……そんなのわかんないよ)
わたしは自分で自分に言って……お兄ちゃんを見つめた。
(おにいちゃんは……いいの?)
そんな呟きに答えてくれることはもちろんなく……
わたしの気持ちは整理できないまま、委員長を決める多数決が始まった。




