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「違うって、私はちゃんと真面目に考えてるんだから」
「嘘だー。じゃあ、あたしは副委員長にするー」
「なんだ、あんたも一緒じゃん」
そんなやり取りにまた笑いが起きた。
お兄ちゃんはというと、そんなクラスメイトの会話に困ったように笑っていた。
(みんな……お兄ちゃんの近くにいたいから……?)
そのことを理解するのに数秒……でも……でも、理解したくなくて数秒。
(そんなの……そんなの分かってたよ)
でも、理解したくなかった。当たり前のことを認めたくなかった。
(お兄ちゃんは、わたしだけのお兄ちゃん……先生じゃない)
そんなの分かってた……分かってた……けど…………
「――先生。立候補にしたら決まらなそうなので推薦にしたほうがいいと思います」
急に立ち上がり、舞ちゃんはその良く通る声を響かせた。
そして、
「わたしは、宮下さんがいいと思います」
「ぇっ……」
急に話を振られ、わたしはびくりと身体を震わせた。
「舞ちゃんっ、でも、えっと……っ」
舞ちゃんの気持ちは嬉しい。嬉しい……けど。
(……わたしは妹なのに、委員長とかになったら)
お兄ちゃんは、どう思うだろう?
お兄ちゃんに迷惑をかけることになるかもしれない。それが、一番怖い。
(お兄ちゃんは……お兄ちゃんは、どう思ってるの?)
わたしは、お兄ちゃん――先生を見ようとして、でも、すぐに俯いた。
お兄ちゃんの表情を見るのが怖い……きっと困っていると思うから。
「――そうですね」
(ぇ――)
「さすがに、ジャンケンというわけにはいきませんし、立候補者と推薦された生徒で多数決にしましょう」
わたしは、ぱっと顔を上げてお兄ちゃんを見た。
(お兄ちゃん……いいの?)
そんなわたしの心の声が届いたわけじゃ……ううん、もしかしたら届いたのかもしれないけれど。
一瞬だけ合った視線でお兄ちゃんは笑ってくれたような、そんな気がした。




