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――入学二日目。
「――――」
お兄ちゃんとは、なんだかまだ話せていない。
「じゃあ、クラス委員を決めていきます。まずは、委員長から――」
お兄ちゃん……担任の先生の顔を見ながら、わたしは胸の奥でそっと溜息をついた。
(挨拶くらい……してもいいよね」
もちろん、お兄ちゃん……先生はわたしが入学していることは知っているし、担任のクラスに居ることも当然知っているはずだった。
だから、何かを期待していた自分もいて……でも、
(期待もなにもないよね)
わたしは、もう一度胸で溜息をつく。
期待もなにもあるはずがなかった。
だって、わたしのほうがお兄ちゃんと距離をとっているのだから。
(……先生と生徒だし、妹だとか知られないほうがいいよねきっと……)
そんなことばかり考えてる。でも、考えても考え続けても、それ以上もそれ以下も進まなくて、でも、それでも、わたしは自分に言い聞かせるようにそればかり考えていた。
(……はぁ)
何度目かも分からない溜息――そんな時、
「はいっ、私、立候補しまーす」
その声にびっくりして、わたしは知らずに考え込んでいた頭を現実に戻す。
「あ、じゃあ、あたしもーっ」
三人、四人と手が上がる。あれ……? 委員長とかの話し合いって、誰もしたがらなくて推薦とかになったりして……
(こういう感じだったっけ……)
どこか他人事のようにぼんやりとそんなことを思っていた、そんな時だった。
――トントンッ
机の端を指でノックされて、わたしは隣の席を見る。
(いいの……?)
舞ちゃんは頬杖を付いたまま少しだけこちらに顔を向けて、小声でわたしにそう伝えてきた。
(いいのって……?)
――それって、どういう意味?
「えー、それって先生目的でしょー」
その一言で教室に笑いが起こり……
(ぁ……)
それで、わたしはやっと舞ちゃんの伝えてきた意味が分かった。




