表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
れんまいっ!  作者: shio
第四話 「夕方の生徒指導室」
27/28


「…………」


 お兄ちゃんは、一度瞳を閉じて……わたしの意志が変わらないことに気付いて、ふっと息をついた。


「……仕方がないですね」

「敬語も駄目」

「分かりました……」

「ダメ」

「分かった……これでいい?」


 お兄ちゃんは、観念したようにもう一度息をついて、そして、苦笑した。


「うん……ごめんなさい」

「謝るなら、こんなことしない」


 ぽんっと頭を叩いて、お兄ちゃんは微笑んでくれた。


「でも、ほんとうに二人だけの時だけ。それ以外は先生と生徒だし、恋を特別扱いしない」

「うん、分かってるよ、お兄ちゃん」


 いつもの――先生じゃない、いつものお兄ちゃんの感じにわたしも微笑んだ。

 嬉しくて……大好きな気持ちが溢れて。

 ……だから、これ以上は駄目。我侭いっちゃ駄目。


「二人っきりじゃない時は、ちゃんと先生って呼ぶね」

「うん、それならいい」


 わたしから離れて、お兄ちゃんはもう一度ぽんって頭を叩く。

 ……お兄ちゃんが離れたことが寂しいけれど、わたしも掴んでいた服から手を離した。


「もしかして、今の話をするために呼び止めたの?」

「うん……」


 こくりと頷くわたしに、お兄ちゃんは「まったく」ってあきれたように笑った。


「じゃあ、行こうか」

「……うん」


 もう少し一緒に……二人っきりでいたかったけど。

 わたしは素直に頷いた。きっと、兄と妹でずっと一緒に居ることは良くないことだから。

 生徒たちは知らないけど、先生たちは知っているから。きっと、これは良くないこと。

 だから、


「……ねえ、お兄ちゃん」

「ん?」

「ありがとう」


 わたしはお礼を言った。悪いことしたから、お兄ちゃんを困らせたから……


「いいよ。でも、こういうことは今回だけ。約束できる?」

「うん、約束する」


 わたしの返事に、お兄ちゃんは微笑んで頭を撫でてくれた。


 ……生徒指導室から出て、お兄ちゃんは職員室に、わたしは教室に戻る。

 もう悪いことしちゃ駄目……お兄ちゃんを困らせちゃ駄目……

 駄目、だけど……

 夕方の生徒指導室――二人っきりで、身体を触れさせて――ほんとうに近くにいた大好きな人。


(……キス、しても良かったのに)


 そう思って……わたしは顔を真っ赤にしながら少しだけ後悔した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ