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れんまいっ!  作者: shio
第四話 「夕方の生徒指導室」
26/28


「わたし、妹だよ」

「分かっています。ですが」

「分かってる!」


 お兄ちゃんの言いたい事は分かってる。分かってる……けど、


「分かってるよ……『お兄ちゃん』っていっちゃいけないって……」

「…………」

「恋、とも言ってくれないんだね」

「……恋」


 お兄ちゃんは……ごめんね、そんな顔させて……困った顔をして、そして、わたしの名を呼んだ。


「ここで、僕は先生で、恋は生徒です」

「分かってるよ……でも……」

「『でも』は駄目です」


 お兄ちゃんは強く言った。その後の言葉を言わせないように。


「でも、お兄ちゃん……お兄ちゃんは、お兄ちゃんだよ」


 ……我侭だって分かってる。それでも、『誰かのもの』なんてされたくないから。


「わたしだけの、お兄ちゃんなんだよ」

「恋……」


 お兄ちゃんは怒るように、叱るように……優しい声だけど、わたしには分かる。本当に怒っている時の声。


「それでも、恋は生徒です」

「そうだけど……だけど」


 どうしたら……どうしたら伝わるんだろう。

 これ以上は言っちゃいけない。お兄ちゃんを困らせるだけ。

 でも、伝えたい……わたしの気持ち。ほんの少しでいいから、「何か」ほしい。

 先生と生徒じゃない。兄と妹っていう、ほんの少しの「何か」。


「……どうしたんですか」


 お兄ちゃんは近づいて、わたしの肩に手を置いた。

 どきっとし過ぎて、びくって身体を震わせてしまう。


「恋がそんなことをいうなんて」


 お兄ちゃんはわたしがいつもと違うことに気付いてる。

 うん、そうだよね……いつもだったら、こんなこと言ったりしない。

 お兄ちゃんを困らせるようなことしない……それでも、


「……二人だけの時だけでも駄目?」


 わたしは見上げて、お兄ちゃんを見つめた。


「駄目……かな」


 伝わって……わたしの気持ち。少しでいいから、ほんのちょっとでいいから……


「恋……」


 お兄ちゃんもわたしを見つめた。

 その瞳は先生として、兄として、言い聞かせようとする瞳だったけれど……


「お兄ちゃん……」


 わたしはお兄ちゃんの服をぎゅっと握る……お兄ちゃんを見つめたまま、瞳を逸らさずに。


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