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「恋ちゃん、舞ちゃん、かえろー。って、あれ、恋ちゃんは?」
「そういえば、ホームルームが終わってからすぐ出て行ってたけど、何かあった?」
「んー、何かあったというか……何もないから、何か起こそうとしているというか」
「? どういうこと、舞ちゃん?」
「どうしてもほしいものがあったらさ、気なんか使ってちゃダメだってこと」
「ああ、そういうこと」
「え、葵ちゃんわかったの!? ねぇ、どういうことぉ!!」
――――――――――
「――先生、少しいいですか?」
廊下で呼び止めると、先生は振り返って、
「どうかしましたか?」
と優しく問いかけてくれた。
「…………」
言葉が詰る。決めて、心に決意して来たはずなのに、いざ話そうとすると声がでない。
いつもと違うわたしに何かを感じたのか――当たり前だよね、家族なんだから――先生は微笑んで声をかける。
「場所を移しましょうか。職員室……ではないほうがいいですね」
先生の言葉に――それは、わたしを気遣っての言葉だったから――嬉しくて「はい」と頷く。
「じゃあ、行きましょう」
わたしは、先生の後を付いて行く。
そう……そうだった。
わたしは、いつもこうして先生――お兄ちゃんの後を付いていっていたんだよ。
誰よりも、わたしが――
「さて、どうしたんですか、宮下さん」
生徒指導室……夕陽が差し込む中、ここにはわたしとお兄ちゃんしかいない。
「…………」
どうしよう……どきどきが止まらない。
顔が赤い……きっと、そのことにも気付かれてる……
でも……でも、いわなきゃ。
言うの、わたしっ。
「……お兄ちゃん」
胸に当てた手をきゅっと握り、わたしは呼んだ。先生ではなく、お兄ちゃんって。
「…………」
お兄ちゃんは……少しだけ表情を変える。その「少しだけ」は他の人には分からなかったはず、わたしだから分かったこと。
わたしが、妹だから……だから、分かったこと。




