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「――ありがとう。じゃあ、お願いします」
「はい」
わたしはにこりと微笑んで返事を返す。そんなわたしにお兄ちゃんもにこりとしてくれた。
それは先生としての微笑みなのか、兄としての微笑みなのかはわからなかったけれど……どちらにしても、わたしは嬉しくて、そして、苦しかった。
「もうちょっと話ててもよかったんじゃない?」
「うん……」
わたしと同じくクラスに配るプリントを手にして舞ちゃんが言った言葉に、わたしは曖昧に頷いた。
「遠慮しすぎ、ていうか、気を使いすぎ」
「……うん、そうかもだけど」
「せっかくの少ないチャンスなのにさ」
舞ちゃんが言う事も分かる。先生――お兄ちゃんはあまりわたしたち、クラス委員に仕事を頼んだりしない。
それはわたしたちを信用していないとか、気を使ってるとかじゃなくて、単純にお兄ちゃんの性格なのだ。自分でできることは自分でする、それは例え家族の間でもそうだった。お兄ちゃんがわたしになにかを頼むなんて些細なことでもあまりない。
今だってそうだ。職員会議があるから仕方がなくわたしたちに頼んだ。他の先生は普通に委員長に頼んだりしているのに、お兄ちゃんはほんとうに申し訳なさそうにして。
委員長を当たり前には使わない。それは良いことなのかもしれないけれど……委員長として……妹としては、もう少し……
(……妹なのに)
他人じゃないのに……そんなに気をつかわなくていいのに。
もっと、頼ってもいいのに。
「れーん」
「……ぇ?」
耳元で言われて、わたしは思わず顔を向けた。
「難しい顔してる。まあ、なにを考えてるか分かるけど」
「ぇ、え? そんな顔してた?」
「うん、してた。恋ってすぐ顔にでるよね」
わたしから顔を離して舞ちゃんは苦笑する。
「気を使いすぎなの。部活のことだって」
「部活……?」
「そ、剣道部。桜と話してた時、すぐ分かったよ」
「だから、わたし運動は……」
「そういう言い訳はわたしの前でしないで」
舞ちゃんはトンってわたしに身体をぶつけた。
「分かってるのに隠そうとされると、けっこう傷つく」
「……ごめん、そうだよね」
舞ちゃんの前では隠し事はできない……そして、それはお互い様で。
わたしも舞ちゃんの気持ちが分かるから、だから、素直に謝った。




