プロローグ
してはいけない恋をして、そして、振られたらどうしたらいいんだろう――
「――その時はさ」
彼女はそう言った。悲しい笑みで自嘲して。
「他の人なんて好きになれないし、なるつもりもないし――だからさ」
すっとわたしの頬を触る。らしくない彼女の行動に、わたしはどきっとした。
それは、彼女が本気だと分かったから――だから、次の言葉も冗談には聞こえなかった。
「わたしたちで結婚しようか」
「わたしたちで?」
「うん」
彼女は微笑み、頬に触れた指を撫でるようにゆっくりおろす。
「女の子同士なら結婚できるでしょ――兄妹じゃできなくても」
「――そうだね」
わたしも笑った。うん、そうだね――それがいいかも。
「結婚できないなら。他の人と結婚しろなんていわれるくらいなら――そのほうがいい」
同じ気持ちを持った者同士――それでずっと慰め合う。慰め合える。
「どうせ世の中から見たら変なんだし。それでいい」
お兄ちゃんが好きだというより、女の子が好きといったほうが世の中は受け入れて貰える。
彼女はわたしの顎に指を触れさせて、顔を近づけた。
「キス、する?」
「最初は……お兄ちゃんがいいな」
「小さい時にしたことない?」
「したことない」
「……そういえば、わたしもないかも」
はっきり答えたわたしに、思い起こすように少し間を置いてから彼女は呟いた。
「でも、女の子同士だったらノーカンじゃない?」
「それでも、まだあきらめたくないよ」
「なんだ」
彼女は残念そうな顔をした。それはほんとうに残念そうに。
「キスから先もしたかったのに」
「エッチ」
わたしは微笑んだ。彼女の気持ちも分かったから。
「せっかく慰め合いたかったのに。兄さんたちの写真見ながら」
「……ヘンタイ」
わたしは視線を逸らして呟く。
頬が熱くなっていることを悟られないように……
……でもきっと、彼女には知られているだろうけど。




