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第3話 アンディの食事

 剣の稽古を終え、シャワーを浴びて食堂へ行くと、美味しそうな料理が並んでいる。

 メイドさんに案内されて自席に着くと、暫くしてから姉がやって来た。

 姉によると、両親はいつも王族だとか、貴族だとかと会食ばかりらしい。

 なので、いつも俺と姉だけの食卓なのだとか。

 まぁ姉もアンディも子供ではないし、特に問題ないと思うのだが、


「アンディ。はい、あーん」


 広いテーブルなのに、隣に座った姉がフォークに差した小さなエビを俺の前に運んでくる。

 いやあの、三年後に亡くなるのが分かっているから、極力好きにさせてあげたいとは思うのだが、流石に姉がベタベタし過ぎではないだろうか。


「姉さん。もう子供じゃないし、そこまでしなくても大丈夫だよ?」

「えぇっ!? アンディ、何処か具合でも悪いのか!? もしかして、急に運動を始めたから!?」

「体調は問題ないけど……?」

「そんな……いつも、食事を食べないアンディが、唯一私が食べさせてあげたものだけは食べていたのに。まさか、あれだけの運動をしておいて、何も食べない気なのか!?」

「いやあの、普通に自分で食べるよ?」


 甘い香りがほのかに鼻をくすぐる美味しそうなスープに、海の幸を使ったサラダ……いや、食べないという選択肢はないんだけど。

 という訳で、サラダを一口食べ……思った通り美味しい!


「あ、アンディが自ら食事を……す、素晴らしい!」

「お坊ちゃま……凄いです! ご自身でサラダを! 次はパンをお持ち致します!」


 えぇ……サラダを一口食べただけなのに、姉だけでなくメイドさんたちまで褒め称え始めた。

 あ、そういえばアンディはあんまり食事を摂らないって話だっけ。

 俺は普通に食べたいから食べるけど、自分でご飯を食べただけで褒められるって、三歳児か? ……アンディは十七歳なんだけど。

 普通に美味しいご飯を食べていると、


「失礼しま……きゃあっ!」


 突然悲鳴が聞こえ、グラスを運んでいるメイドさんが盛大に転ぶ。

 幸いグラスは割れなかったものの、入っていた液体が思いっ切り俺の服に掛かってしまった。


「この無礼者っ! 私のアンディに何を……」

「も、申し訳ございませんっ! どうか、命だけは!」


 何故か姉が怒りだし、メイドさんが床に頭を擦り付けながら土下座する。


「いや、これは……水だな。そのうち乾くし、ミスは誰にでもある。気にしないでくれ」

「ぼ、坊ちゃま……」

「あ、よく見たら、今日来たばかりの子じゃないか。新人だったら尚更だ。そんな事より、君は大丈夫か? 怪我などしていないか?」

「あ、ありがとうございますっ! 私は全く問題有りません」


 顔を上げたメイドさんを改めて見てみると、今日俺が訳の分からぬまま、ヒャッハー野郎たちと共に連れてくる事になった少女だった。

 俺も日本では新入社員の面倒をみていたから分かるけど、新人なんてミスをするものだと考えて、フォロー出来るようにしておくものだからな。


「アンディ……剣だけだなく、日頃の言動にもオースティン家の心意気が! 私はとても嬉しいぞ、アンディ!」

「坊ちゃま。か、寛大なお心、本当にありがとうございます!」


 いやあの、転んだメイドさんの心配をしただけで、姉から抱きつかれ、メイド長から深々と頭を下げられる。

 これまでのアンディの行いが余程酷かったのだろうか。

 それとも、貴族と平民の身分差のせいなのか?

 そんな事を考えながら夕食を終えて部屋へ戻り、少しでも身体を鍛えなければと、一人で筋トレをしていたら、扉がノックされる。

 タオルで汗を拭いて扉を開けると、先程の新米メイドが飲み物やタオルを乗せたカートを押して部屋に入ってきた。


「失礼致します」

「あ、助かるよ。丁度喉が渇いて……って、な、何をしているんだ!?」


 いろんな飲み物が用意されていたので、水を貰おうと思ったら、いきなり新米メイドが服を脱ぎ始めた。


「あ、あの……新人メイドのお仕事だと聞いております。ど、どうぞお好きにしてください」


 えぇぇぇっ!?

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