挿話1 アンディの姉で聖騎士のベアトリス
「くっ! 腕が……アンディの剣を受け過ぎたか」
可愛いアンディとの訓練を終え、シャワーを浴びる為に服を脱ごうとしたのだが……アンディの鋭い一撃を受け過ぎたせいで、腕が上がらない。
しかし、アンディはこれまで身体を鍛えていなかったから、あまり筋力が無いはずだ。
いや、無いはず……というより、無い。
これは、毎晩こっそりアンディの入浴シーンを覗……げふんげふん。アンディの健康管理をしているから、よく知っている。
「だが実際は、あの細い身体で、それなりに一撃が重かった」
これは、それだけアンディの身体の使い方が上手いという事なのだろう。
剣にしっかりと体重が乗っていて、かつ身体と剣のしなりが利用された一撃だった。
その上、斬撃の初速がかなり速い。
はっきり言って、並大抵の騎士ではアンディには勝てないだろう。
もしも、これからアンディが時間を掛けて身体を作っていき、あの身体のバネを活かしたまま筋力が付いたら、凄まじい剣豪になるはずだ。
「ふふっ……ふふふっ。可愛いアンディこ為なら、例えこの腕が折れようとも、お姉ちゃんは頑張っちゃうんだからっ! そして、行く行くはアンディにはお姉ちゃんと……こほん」
色々想像し過ぎて、思わず欲望が口から出てしまった。私の悪い癖だ。
だが、そんな可愛くて無限の可能性を秘めたアンディにも、課題が無い訳ではない。
一つは、あの謎の剣術だ。
あの防御を捨てたような、攻撃特化の構えと動き……あれは一体何なんだ!?
何処の誰に学んだ剣だ!?
あの剣術を使う、アンディの斬撃が凄い事はよく分かった。
だが、一撃必殺を狙い、防御する気が全くないように思える。
「アンディは命が惜しくないのか? ……もしも可愛いアンディに何かあったら、お姉ちゃんは泣いちゃうよっ!?」
……ダメだな。
アンディに対する感情が昂ると、本心が声に出てしまう。
この癖は早く治さないと。
そして二つめ。
アンディの剣の斬撃自体は速いのだが、次の攻撃へ移るまでに隙が多過ぎる。
相手が人でも魔物でも、必ずしも一撃で倒せるとは限らないので、あれでは反撃を受けてしまう。
アンディの安全の為にも、確実にトドメを刺すように身体に教え込まなければ。
最後に三つめだが、アンディに防御する気がないからか、盾の使い方が下手過ぎる。
何だ、あれは!
盾を身に付けている左腕を狙ったというのに、アンディは盾を使わず、剣を使って私の斬撃を防いだ。
あれでは自身の武器が封じられてしまうので、相手が集団だったら、その隙に斬られてしまう。
「まぁ防御については、私が得意とする所だからな。お姉ちゃんが手取り足取り、アンディに教えてあげよう……うふふ」
だが、防御が出来ていない事と、集団戦の意識が無いのは残念ではあるが、最年少で聖騎士隊に入隊した私と、アンディがこれだけ打ち合えたのは素直に褒めてあげよう。
普段はアンディに甘過ぎるかもしれないが、今日の訓練では、一切甘やかしていない。
うん。昔から、アンディはやれば出来る子だと思っていたんだ。
これから、私が非番の日はもちろん、任務が終わった後に毎日アンディを鍛えてあげよう……えへへへ。