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Chapter 5-3




『まもなく出発いたします。ご利用のお客様はご乗車下さい』


もうすぐ発車する…。

再び訪れることの無いホームを意味も無くぼーっと眺めていた。


少し人が増えたかな?いや、そんなことないか…。

そんな風に行きかう人の視線を負ってはすぐに興味を失う。


実家に戻ったら両親には何と言おう。

本当は事前に言うべきなのはわかってるけど…はぁ…。



とその時


「君!そんな全速力で走ったら危ないじゃないか!」


遠くで駅員さんがそう言うのが聞こえた。


(なんだろう…)


どうやらホームを猛ダッシュする迷惑な人がいるらしい。


少し奥の方を見てみると駅員さんに追われる人影を見つける。


最初はもう出発するこの新幹線に乗る人かと思った。

でも、どんどん近づくに連れ、忘れることの出来ない顔だと気付く。


そして、


「八重ーーーーー!!」


…もう間違えようが無かった。


「か…風斗、様…?!」



それは、ここにいるはずのない、私のご主人様だった人。


窓を順番に確認していたらしく、私を目が合う。

そこで、全力の足を緩めたので、駅員さんも息切れしながら見逃してくれた。


「風斗様…」


どうしよう…。

会いに行きたい、でも…。


視界で風斗様を捕らえてもなかなか席から立てない。

だって、行ったところで…


「八重、ちょっと話があるから来い!」


でも、風斗様はそう叫んだ。

外からそうはっきりと。


「……ぅ」


また傷つくことを言われたら、なんて考えてしまう。

だけど相手は真剣な表情で何度も私の名前を呼んできた。


「……っ」


気が付いたら私は席を離れて、乗り口に立っていた。



「あ、八重!」

「風斗様…」


相手はホーム、私は新幹線の入口に立ってお互いを見た。

急いで来たから、だいぶ息が弾み、汗が額から流れていた。


少し息を整えてから、彼は言葉を続けた。


「お前、なんでこんなところまで来てるんだよ」


なんで?なぜ風斗様がそんなことを言うのだろう。

だって、


「なんで…って…か、風斗様が…私の事を嫌いだって…」


語尾がだんだん小さくなる。

またあの時の記憶が蘇って涙が出てきた。


こんな顔を最後に見せたくなくて、俯く。


そんな様子を見てはぁーっと風斗様はため息をつく。

そしてカバンをごそごそとあさったかと思えば、取り出したのは例のBL小説。

彼はそれをパラパラと捲ったかと思えば、


「こっから読め」


私に渡してきた。



「……ッ」


それは確かに私が捨てた本。

できればもう忘れたいお話。


なのに何故風斗様が?


困惑した顔で相手を見る。

でもその目は、『早くしろ!』と言っている。


だから仕方なく目を通した。




「……わかったか?」


ある程度呼んだところでそう聞かれた。

ちなみに私が読んだのは、執事が去ろうとする辺り。


でも、


「わかったって…何がでしょう…?」


困惑した表情で相手を見つめる。


本当にわからないのです。

この本と風斗様がここに来たのとなんの関係が…?


「…っはああぁぁぁあっぁあっぁ」

「!?」


突然、盛大にため息をつかれる。

と思おもったら、


「…はぁぁ。もうわかった!俺が説明してやる!!」


叫んで、バッと本を奪って説明し始めた。



「いいか!?お前、本とやってることが違うんだよ!」


最後の方のとある1ページを指差して簡潔に言うことには、


本→執事、ご主人に話して出て行こうとする。

八重→俺に話さず、手紙の上、駅まで来てるし。



「…………」

「…………」

「……な?」


な?って…言われても…


(そんなの、そんなのわかるわけないでしょ……)




つまり、風斗様があんなに冷たくされたのは、私にこの話をさせるための誘導だったということだ。

そして、昨日私が本通りじゃないといったのが気がかりで、無理くり軌道修正をしようとしたのだとも。



「ですが、風斗様が私のことを嫌いなのに、話し掛けることなんて出来なかったんです…」


どんなに物語がそういう展開でも、いつまでも従えるわけない。

風斗様が私を恋愛対象として見ていないのだから…。


「…お前さ、本気でお前の事嫌ってると思う?」

「……え?」


今度は、風斗様が困った顔をして頭をかいた。


またバラリとページを捲って指差す。

そこには、ご主人様の執事を突き放すセリフ…あれ、これ、風斗様が言ったのと全く同じ…。


「セリフまで同じにすればその後も同じ行動起こしてくれて、ハッピーエンドになると思ったんだけどなぁ…」


少し照れたように呟いた。




え。


え。


えぇっ!?


それって…!もしかして…!



(いや、まさか、りょ、両思いなんですか…!?

やばい…ッ顔がすごく熱い…!)


その事実に気が付いて顔が燃え上がるように赤くなった。

あぁ、でも聞くの恥ずかしいし…。


風斗様の顔を見ると目が合う。

でも、相手は慌ててそらす。


うー…。これはやっぱりどう判断すればいいのでしょうか…?

頭の中でぐるぐると色んなことが行き来する。


そのとき、


『まもなく発車です。閉まるドアにご注意ください』


ホームに電子音が流れ、アナウンスが流れた。



「え、え…?」


それを聞いた途端、どうすればいいのかわからなくなる。

私は降りるべきなのでしょうか…?あぁ、どうしたら…!



「聞け、八重!」



突然目の前で大声で叫ばれてはっとする。

風斗様は自分を落ち着かせるように一度深呼吸をする。


そして、静かに言った。


「八重、好きだ」

「っ!?」

「俺、お前がいねぇと何も出来ないし、甘えてばっかりだし、色々やったけど、お前がいたから毎日凄く楽しかったし…」

「…かざ…っ」



ありえないと思っていたご主人様からの告白。

その一言一言が心に染みる。


「だからッ」

「…?」

「お前はどうしたい!?伝えろ!本には無いお前の言葉、お前の願いを!」


すっと差し伸べられる手。

いつものふざけた表情が全くない顔。


嬉し涙が頬を流れていく。

今の私に、願いなんてひとつしかありません。


そんなの…



「私は…私も…っ風斗様のお側にいたいです…っ!」



その手に手を重ねて、ギュッと握った。




グイッと引っ張られ、閉まりかけた扉の隙間をギリギリで通り抜けた。

そしてそのまま風斗様の腕の中へ…。

ぎゅうっとしっかりと、強く強く抱きしめられる。



「八重、今までごめん」

「いえ…っ大丈夫です…」

「好き」

「…私もです」

「帰ったら絶対襲うから」

「え」


そんな短い投げ合いを数回する。

その度に頭1つ分背の高い相手により一層抱き締められて…。


…凄くどきどきする…。


でも…




「風斗様…ここ、人いるんですけど…」


乗客はさすがにいないけど、駅員さんがまだ数人見える。


「別にいいだろ?もう来ないんだから…」


対する風斗様はどうでもよさそうな感じで言った。

その言葉は凄く嬉しいけど…


「でも、やっぱり人前は…」


ヤバいと思います。


さっき追いかけていた駅員さんはちらちらとこちらを見て頬を赤らめていた。

まさか、走っていた目的が男だったとは思いもよらなかったのだろう。


「はぁ、わかったよ…」


なんとか気持ちが伝わったのか、ゆっくりと離れる。

そして私の手を掴んで歩きだした。





――――――――――――――――――……



「あの…」

「あ?」


駅を出て、風斗様のバイクに乗ってしばらくすると自分達の家に着いた。

ただいま、我が家。


…でもドアの前に来ると足が何故か止まってしまった。


「……ぇと…」


そわそわしてる私に気付き、鍵を探していた風斗様は顔をあげてじっと見てくる。


「………っ好きです!」


自然にそう口から出てきた。


自分でも驚いた。

同時に一気に顔が熱くなる。


な、何言ってるんでしょうか…っ私は!



相手はきょとんとした顔で見てきた。

そりゃこんなタイミングで言われても何かわかりませんよね…っ。


「…ぁ、いえ、何言ってるんでしょうねっ?

すみません、なんか私どうかしてま…」


でも次の瞬間、言葉を紡げなくなる。

それは、風斗様が唇を重ねてきたからで…。


「バカ。いくらでも言えよ。俺も同じ回数、いや、それ以上言ってやる。

…好きだ」


耳もとでそっと囁かれた。



抱き締められてもう一度キスをしてから、家の中へと入る。


そのままベッドへ直行した。

優しく押し倒してくれて、安心する。


「八重…」


もう一度下を挿し入れてのキス。

絡みついてきていやらしい気持ちになる。


「んぅ…風斗様…ってあれ?」


押し倒されてすぐにはっと気が付く。


「なんだよ」

「あの…お腹空いてませんか?」

「え?そんなの別に…」



ぎゅるるるるるっ



言葉を遮るように、大きな音が聞こえる。


これは、風斗様のおなかの音…。


「い、いや、これは、別に腹減ってるとかじゃ…」


ぎゅるるるるるっ



もう一度鳴る。

そこで堪忍したように、ご主人様はおなかを抑えた。


「はらへった…」

「そう、ですよね」


まだ時間が早いが、あんなに動けば空いてるに決まってる。


「ちょっと待っていてくださいね、すぐにサンドイッチをお持ちします」


微笑んでから、ご飯を持ってこようと体を起こす。


が、すぐにまた倒される。

風斗様はくっくっくと笑っていた。


「あ、あれ?」


何故また押し倒されているのかわからずに頭に?がたくさん浮かぶ。

そんな私に風斗様は言った。


「察しろよ。朝ご飯はお前、だろ?」

「ぇ、えぇっ?」


その後、くらりとしてる私は風斗様に愛され続けました…。

まぁ、今度は幸せだからいいんですけどね…っ!


読んでいただきありがとうございます!




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