Chapter 5-2 ~風斗様サイド~
「はあぁぁぁぁ!?」
広い部屋で叫べば、その声が反響した。
俺はたった今驚愕している。
何故かって?
んなのいつも早起きして朝飯作ってる八重の代わりに置いてあった一枚の手紙のせいに
決まってるだろ!
AM4:15。
なんだか寝付けなくて、お茶を飲みに台所に向かった。
いつもは夢も見ないくらいぐっすり寝るのに、なんだか本当に眠れなかったんだ。
…八重のあんな顔を見てしまったからだろうか。
でも、あいつが勝手に泣いたんだ!
どうせ朝起きたらまたいつも通り笑ってくれるに決まってる。
まず電気を付ける。
そして冷蔵庫からお茶を取り出し、コップに注ぎ、テーブルに置き、椅子に座っ……。
何この紙。
で、10秒後に叫んだ。
字体を見ればわかる。八重が書いたものだ。
その紙に書いてあった言葉はとても丁寧で、だけどとても簡潔に書いてあった。
『風斗様へ
さっきは逃げ出してしまい申し訳ございませんでした。
しかし、もう私は風斗様のお側にはいられません。
その為、誠に勝手ながら執事を辞めさせていただきます。
最後に、どうか私の告白は全て忘れて下さい。
これが私の願いです。
それでは、幸せになってください。
八重 雪』
所々にあった涙の跡。
その所為で微かに文字が滲んでいた。
「……」
俺はその手紙をくしゃりと握りしめると八重の部屋へと向かった。
「あいつに返したんだからあるはず…」
ぐるっと部屋を見渡す。
ものの見事にものが無くなっていた。それが嘘じゃない証明だった。
綺麗に物が無くなっている中、ごみ箱に捨てられていた本を拾い上げた。
バラバラと捲り、とある場面を急いで読む。
「…馬鹿。あいつ全然読んでねぇじゃねぇかよ…」
俺は間違ってなかった。それさえしれれば十分だ。
知りたかった事を確認すると、次にスマホを掴む。
そしてある場所に電話をかけた。
プルルル…
出ない。
プルルル…
出ねぇ。
プルルル…
「3コール以内に出ろって言ってたのはどこのクソババ
『あら、今物凄い下品な言葉が聞こえたような気がするわ』
突如受話器の向こうから女の冷たい声が聞こえる。
げっなんでこういうタイミングで出るんだ…。
「い、や…?お母様と言った…つもりなんだけどなっはは!」
はい、かけた相手は俺の実家でした。
多分八重は自分の家に戻るつもりなんじゃないかと思う。
だって、あいつの性格上俺の親に訴えたり、執事を辞めるということを直接言う度胸は無いからだ。
てなったら行く場所なんて自分の実家しかない。
…でも今更だけどあいつがどこ出身とか全然知らないことに気がついた。
だって小さい頃から側に居てくれたから…。
それで俺ん家にかければ住所位わかるんじゃないかと思ったわけだが…。
『…はは!じゃないでしょが!
あんた1人暮らし(正確には2人)してから何で一回も電話寄越さないの!?
もう私、寂しくて寂しくて…(明らか嘘泣き)』
こいつがなぁ…面倒くせぇんだよなぁ。
無駄に過保護と言うか。家出る時も足を掴んで、引きずっても泣きわめいて反対されたし。
…召使いが出てくりゃ良かったのに。
「それよりさ、八重の住んでるとこの住所すぐに教えてくんない?」
「は?今あんたと一緒にいるでしょ?」
「いや、そっちじゃなくて実家の方」
「実家?えー別に教えてもいいけど風斗は実家に帰って来ないからなぁ~」
あーこういうのめんどくさいんだよ!
第一アラ50の女がかわいこぶるな!
「今度行くから!とにかく教えろ!」
「今度っていつ?半年前もそう言って来なかったじゃない!」
「うっ…ら、来週の日曜に行くから!」
「きゃはっ!じゃあ風斗の好きなカレー作んなきゃ♪」
「………」
俺、今めちゃくちゃ胃が痛い…。
それでも胃薬を飲みながらなんとか住所を聞き出した。
だが…
「はぁ!?あいつ島に住んでたの!?」
『あら、あんた知らなかったの?』
なんとあいつは新幹線を乗り継ぎ、フェリーに乗った後バスでぶらり旅…ちがう。
とにかく超がつくくらいのど田舎に住んでる奴だった。
「あんたも一回遊びに行ったじゃないの。
まぁ八重君が夜桜家に勤めてすぐの頃だったから覚えてないのも当然だけど」
「ま、まじ?全然覚えてねー」
やべぇ…。
俺てっきり隣の県とかかと…。
「……」
ピッ
通話を切って、急いで身仕度をする。
そして外に出ると、車庫に向かった。
そこにはまだピカピカしてるブルーのかっこいいバイクが…。
八重の反対を押し切って買ったはいいが、学校がバイク禁止な為に出番がなかった俺の相棒。
「遂に乗る時が来たぜ…」
八重、まだ新幹線に乗るんじゃねぇぞ。
お前が居なくなったら俺は…。
~~~~~~~~
夜桜家。
「あら、切れちゃったぁー」
こんな朝早くかけて来ていきなり切るってどういうことよ。
でもまぁ来週帰ってくるし♪
「ねぇあなた起きて!今風斗から電話があったのよー!」
「んん…?お前、まだ4時………ってなんだってー!?
俺も、俺も風斗ちゃんの素敵な声を聞きたかったー!」
「おーほっほっ!」
という風斗が聞いたら酷い頭痛を起こしそうな会話をしてました。
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