Chapter 5-1
~最後の願い~
『白線の内側でお待ちください…』
遠くの方で電車が発車する音が聞こえる。
まだ早朝だからか、人はちらほらとしか見えない。
(これからはもう執事でもなんでもない生活が始まるんですね…)
爽やかな朝。
なんでもない人にとっては散歩日和と思ったり、気分が良くなるような、そんな朝だった。
だけど、私はとぼとぼと少ない荷物をカバンに詰め、ホームの椅子に座ってため息を
何度もついていた。
「…はぁ………」
風斗様の側にはいられないとわかってから、私はすぐに部屋を片付けて、
風斗様が寝ている間に家を出ました。
最後に顔を見ていきたかったけど…見てしまったらきっとまた気持ちは揺らいでしまう。
風斗様も私がいないと気が付いたら驚くかもしれません。
でも一通の手紙を置いてきたからそれで状況はわかって下さるでしょう。
「はぁ…それにしても風斗様はちゃんと起きれるでしょうか…。
朝ご飯は食べるでしょうか…勉強や部活は…………っ!!」
しばらくしてそんなことを呟いていることに気付く。
幸い、誰も聞いてなかったようだったが、まだ想いを捨てきれていないのだと、
嫌でもわかってしまうのがとても辛かった。
『…………………駅に到着です。お降りの方は開く扉にご注意…』
そんなアナウンスで現実に引き戻される。
気が付いたら目の前に止まっていた新幹線。
私が乗るのを待つかのように、ただただ扉は開いていた。
これに乗ったら自分の故郷に帰れる。
ここからずっと離れた緑豊かな田舎にある私の実家。
ただ、風斗様は私の故郷を知りませんから本当にもう…。
そこまで考えて、首をふるふると振る。
もう関係ないことだ。
もう、終わるんだ。
「さようなら、風斗様…」
けじめをつけるように足を前へ踏み出す。
そして、新幹線へと乗り込んだ…。
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